米国の貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年の実質GDP成長率は2.1%。前年から減速も、個人消費とAI関連投資は堅調。
  • 関税引き上げを見越した在庫積み増しもあり、財貿易赤字は過去最大。
  • IEEPA関税の違憲判決後も、トランプ政権は関税を中核とする通商政策を継続。
  • 対内直接投資は減少も製造業が回復、半導体・製薬・自動車分野で大型投資約束。
  • 日本からの輸入は追加関税対象の自動車・同部品で大きく減少。日本は引き続き最大の対米投資国。

公開日:2026年9月1日
(【対内・対外直接投資】と【対日関係】の一部を追記)

マクロ経済

AI関連投資と高所得者層の消費が成長を下支え

2025年の米国の実質GDP成長率は2.1%と、前年の2.8%から減速したものの、1.8%程度とされる潜在成長率をやや上回る成長を維持した(表1参照)。トランプ政権の高関税政策や厳格な移民政策などによる悪影響が懸念された中でも、高所得者層の消費や人工知能(AI)ブームに伴う投資が成長を下支えし、内需(政府支出、純輸出、在庫投資などを除いた民間国内最終需要)の伸びは、第1四半期が前期比(年率換算)1.9%、第2四半期と第3四半期が2.9%、第4四半期が1.8%と1年を通じて底堅く推移した。

需要項目別に見ると、個人消費支出は2.6%増と堅調だった。株高による資産増加の恩恵を受ける高所得者層が消費を牽引した。一方で、低・中所得者層はインフレによる購買力の低下に直面している。米国経済は「K字型」の二極化の状況にあるといわれ、この傾向は2025年に一層強まったとされる。設備投資(4.1%増)は、データセンターや電力、情報処理機器、ソフトウエアといったAI関連投資が押し上げに寄与した。一方、住宅投資は2.2%減と、住宅価格や住宅ローン金利の高止まりが重石となり低調だった。輸出入は、関税引き上げを見越した駆け込み輸入が第1四半期のマイナス成長の要因となるなど、関税措置の導入に伴い振れ幅の激しい1年となった。政府支出については、10~11月に史上最長となる43日間続いた政府閉鎖が第4四半期の成長を下押しした。

表1 米国の需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕季節調整済み、四半期の伸び率は前期比年率。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 2.9 2.8 2.1 △ 0.6 3.8 4.4 0.5
個人消費支出 2.6 2.9 2.6 0.6 2.5 3.5 1.9
1.7 2.8 3.2 0.2 2.2 3.0 0.3
耐久消費財 3.8 3.9 3.6 △ 3.4 2.3 1.6 0.1
非耐久消費財 0.6 2.3 3.0 2.2 2.2 3.9 0.4
サービス 3.0 3.0 2.3 0.8 2.6 3.6 2.7
民間投資 0.8 3.0 1.9 23.3 △ 13.8 0.0 2.3
設備投資 7.3 2.9 4.1 9.5 7.3 3.2 2.4
住宅投資 △ 7.8 3.2 △ 2.2 △ 1.0 △ 5.1 △ 7.1 △ 1.7
財・サービスの輸出 2.8 3.6 1.6 0.2 △ 1.8 9.6 △ 3.2
財・サービスの輸入 △ 0.9 5.8 2.7 38.0 △ 29.3 △ 4.4 △ 1.0
政府最終消費支出・粗投資 3.5 3.8 1.1 △ 1.0 △ 0.1 2.2 △ 5.6

〔注〕季節調整済み、四半期の伸び率は前期比年率。

〔出所〕米国商務省経済分析局

労働市場は需給両面で縮小均衡、FRBは追加利下げに慎重

2025年の労働市場は減速しつつも、極端な悪化はみられなかった。非農業部門の新規雇用者数(3カ月移動平均)は12月に前月比3万9,000人減と3カ月連続で減少した。ただし、これは政府閉鎖が主な要因で、民間部門に顕著な鈍化はみられなかった。失業率は1月の4.0%から11月の4.5%へと緩やかに上昇したが、12月は4.4%に低下した。労働需給を見ると、供給側ではトランプ政権による不法移民対策の強化が外国人労働者の減少を招いた。一方、需要側では通商政策などに起因する先行き不透明感から、企業は新規雇用に消極的になった。こうした需給の縮小均衡が、失業率の安定につながったとみられる。

インフレ率は年末に近づくにつれ、上昇基調に一服感がみられた。消費者物価指数(CPI)の上昇率(前年同月比)は2025年1月の3.0%から12月には2.7%に低下した。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数も同様に3.3%から2.6%に伸びが縮まった。4月の相互関税の導入後、玩具や家電、衣類など輸入依存度の高い品目で上昇がみられたが、物価全体への関税引き上げの影響は緩やかだった。この要因としては、企業が関税引き上げ前に在庫を積み増して価格転嫁を先送りしたり、関税コストの一部を自社で吸収したりしたことが挙げられる。また、関税の適用除外制度によって実際の関税負担が低く抑えられた可能性もある。議会予算局(CBO)の分析によると、2025年11月時点で、2024年の輸入額ベースで4割程度が第2次トランプ政権下で発動された関税措置の対象外となっていた。

連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利の誘導目標を2025年7月の連邦公開市場委員会(FOMC)まで5会合連続で4.25~4.50%で据え置いた後、9~12月に3会合連続で3.50~3.75%まで引き下げた。政策金利の引き下げは、物価上昇リスクよりも労働市場の下振れリスクを重視した決定だったが、FRBのジェローム・パウエル議長(当時)は12月の会合後、政策金利は中立金利の推計値の範囲内に収まっているとして、追加利下げには慎重な姿勢を示した。

製造業雇用は減少続くも、鉱工業生産はプラスに転じる

米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表は、通商政策の目標の1つとして「GDPに占める製造業のシェア拡大」を掲げた。しかし、2025年の同シェアは9.4%と前年の9.8%から縮小し、製造業の雇用者数も2025年は1,263万2,000人と前年比1.2%減少した。一方、トランプ政権は製造業における賃金上昇や生産性の向上などを関税政策の成果として挙げている。例えば、製造業の労働生産性(時間当たりの生産量)は、2025年に前年比1.9%上昇し、前年の伸び(0.3%)を大きく上回った。また、FRBが発表している鉱工業生産指数をみても、製造業〔北米産業分類システム(NAICS)ベース〕は2025年に1.0%上昇と、2022年以来3年ぶりのプラスを記録し、生産活動の活発化が読み取れる。

ただ、これらの短期的な経済指標から関税政策の効果を明確に評価するのは難しい。GDPに占める製造業のシェアは、サービス産業の拡大に代表される経済構造の変化により、商務省のデータを遡れる1997年以降、ほぼ一貫して低下し続けており、高関税の導入によってすぐに巻き戻せるものではない。また、AI特需や2025年7月に成立した「大きく美しい1つの法案法(OBBBA)」に基づく税制優遇措置は幅広い産業にとって追い風になっており、生産活動の向上は関税による国内生産回帰だけが理由ではない。トランプ政権が貿易相手国・地域と合意した企業投資の実現にも時間がかかるため、政策の効果を見極めるためには中長期的に製造部門の関連指標を見ていく必要がある。

通商政策

関税を中核とする通商政策

2025年1月に発足した第2次トランプ政権は、「米国第一主義」の下、関税を通商政策の中核的手段として位置付け、世界各国・地域を対象とする相互関税をはじめ、関税措置を相次いで発動した。その目的は、貿易赤字削減に加え、国家安全保障、外交交渉手段、製造業の国内回帰や国内産業の保護、歳入の確保、さらには不法移民や違法薬物の流入対策に至るまで多岐に及ぶ。

米国シンクタンクのタックス・ファウンデーションによれば、2025年2月から2026年2月までの1年間で実施された関税措置の変更回数は50回を超え、米国の貿易量加重平均関税率は2.8%から21.0%の範囲で大きく変動し、2026年4月時点では11.7%となっている。GATTおよびWTO体制の下で、米国が長年にわたり関税の引き下げを通じて自由貿易体制を主導してきたことを踏まえると、第2次トランプ政権は関税を軸に米国の外交・通商政策を再構築したと言える。第1次トランプ政権下でも、中国に対する追加関税や、鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税などは発動されてきたが、全世界・全品目を対象とする広範な関税措置が実施された例はなかった。

もっとも、米国憲法上、関税賦課の権限は連邦議会に帰属する。ドナルド・トランプ大統領は、議会が特定の状況や条件の下で政権に関税賦課の権限を移譲した法律を根拠に、関税を発動してきた。主な法的根拠は、(1)国際緊急経済権限法(IEEPA)、(2)1974年通商法122条、(3)1974年通商法301条、(4)1962年通商拡大法232条の4つだ。

(1)国際緊急経済権限法(以下、IEEPA)
IEEPAは、2025年2月以降の中国、メキシコ、カナダに対する追加関税(「フェンタニル関税」、10~35%)や、同年4月の「解放の日(Liberation Day)」以降に日本を含む世界各国・地域を対象として発動された追加関税(「相互関税」、10~41%)の法的根拠として用いられた。また、同年8月以降のブラジル(40%)やインド(25%)に対する追加関税もIEEPAに基づく。ただし、連邦最高裁判所は2026年2月に、IEEPAが大統領に関税賦課権限を付与していないとしてIEEPA関税を違法と判断した。これを受けてIEEPA関税の適用は停止され、同年4月に還付申請の受付が開始され、還付が進んでいる。
(2)1974年通商法122条(以下、122条)
IEEPA関税の停止を受け、トランプ政権は代替措置として、122条を活用した。2026年2月から、日本を含む世界各国・地域に対して一律10%の課徴金(関税)が適用されている。122条関税の適用期間は同法上150日間が上限とされており、2026年7月末に期限を迎える。
(3)1974年通商法301条(以下、301条)
301条に基づく措置では、2025年10月以降に中国製船舶の米国港湾入港時のサービス料金徴収措置および中国製港湾荷役機械に対する100%の追加関税措置が導入された。ただし、同月に韓国・釜山で開催されたトランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談での合意を受け、これらの措置は同年11月以降、2026年11月まで停止された。一方で、2026年3月には日本を含む世界60カ国・地域を対象として301条措置の要否を判断するための新たな調査が開始された。122条関税の期限後には、その代替措置として301条に基づく追加関税などの輸入制限措置が導入される可能性がある。
(4)1962年通商拡大法232条(以下、232条)
232条に基づく措置では、鉄鋼・アルミニウム(関税率15~50%)、銅(25~50%)、自動車・同部品(25%)、中・大型トラック・同部品(25%)、木材・製材(10~25%)、半導体(25%)、医薬品(100%)に対する追加関税などが発動された。また、航空機・同部品、ポリシリコン、無人航空機、風力タービン・同部品、個人用防護具(PPE)・医療消耗品・医療機器、ロボティクス・産業機械についても、232条措置の要否を判断するための調査が進められており、将来的に追加関税が導入される可能性がある。

司法判断後も維持される関税政策

2026年2月の最高裁判決は、トランプ政権の関税政策に対し一定の法的制約を課した。IEEPAは大統領に対して「輸入を規制する」権限を認めているものの、「関税を賦課する」権限は条文上明示されていない。加えて最高裁は、関税など経済的・政治的に影響力の大きい権限については、議会による明示的な権限委譲を必要とする「重大問題法理(Major Question Doctrine)」に基づき、同法を根拠とした関税賦課は認められないと結論付けた。 これを受けてトランプ大統領は判決当日にIEEPA関税の撤回を命じる大統領布告を発出し、適用を停止した。2026年4月からは、約1,660億ドルの関税の還付申請の受付も開始され、5月末時点で半分超の約850億ドルの還付が予定されている。

もっとも、法的な争点はIEEPAにとどまらない。122条関税についても、米国企業・団体や24州が政権を提訴しており、第1審の米国国際貿易裁判所(CIT)は2026年5月に一部原告に対して122条関税の停止および還付を認めた。政権は控訴しているが、今後の司法判断次第では122条関税についても、IEEPA関税と同様に全面的な停止や還付が認められる可能性もある。

トランプ政権の関税措置には経済面・政治面の双方からの逆風も強まっている。ニューヨーク連邦準備銀行(2026年2月公表)および欧州中央銀行(2026年3月公表)の分析によれば、米国の関税措置の経済的コストの約9割は米国の企業や国民が負担している。さらに、米国調査会社ピュー・リサーチ・センターの世論調査(2026年2月公表)では、6割超の回答者がトランプ政権の関税政策について否定的な評価を示した。議会においても、2026年2月に下院がカナダに対する35%のフェンタニル関税の無効を求める決議を可決した。2026年11月の中間選挙を控え、物価や生活コストへの影響が懸念されるトランプ政権の関税政策に対して、議会は従来よりも慎重な姿勢を強めつつある。

それでもなお、注目すべきはトランプ政権の関税政策そのものが後退していない点だ。IEEPA関税は撤回されたものの、政権は直ちに122条関税へ移行した。さらに301条調査も開始されており、122条措置の適用期限後を見据えた代替措置の準備が進められている。法的根拠は変化しても、関税を活用する通商政策の方針自体に変化はみられない。従って、今後も米国の関税水準は第2次トランプ政権発足以前と比較して、高い水準で維持される可能性が高い。

ディール型通商政策と2国間関係の変容

トランプ政権は関税を単なる輸入制限措置ではなく、相手から「ディール(取引)」を引き出すための外交交渉における圧力手段としても積極的に活用している。具体的には、トランプ政権はこれまでに、日本、EU、英国、韓国、台湾、東南アジア諸国、中南米諸国など19カ国・地域と「相互貿易協定(ART)」や枠組みの合意を発表している。合意の内容は、各国・地域によりさまざまだが、米国による関税率の引き下げや、相手国・地域による対米関税・非関税障壁の見直しにとどまらないものが多い(表2参照)。多くの合意では、重要鉱物など戦略分野におけるサプライチェーンの強靭(きょうじん)化、輸出管理や輸入規制などを含む経済安全保障政策における連携、労働・環境分野での取り組みなど、幅広い政策課題が盛り込まれている。すなわち、トランプ政権は関税をてこに、関税や市場アクセスのみならず、相手国・地域の産業政策や経済安全保障政策を含む広範な分野において、米国第一主義との適合を志向していると言える。

ただし、こうした合意が成立した後も、米国と各国・地域との摩擦が完全に解消されたわけではない。例えば、米国とEUは2025年7月、米国はEUに対する相互関税および自動車・同部品、医薬品、半導体、木材に対する232条関税について15%を上限とする一方、EUは米国産品に対する関税の撤廃や引き下げを進めることなどで合意した。しかし、トランプ大統領は2026年1月にグリーンランドの領有問題を巡ってデンマークを含む欧州8カ国に対して10~25%の追加関税発動を示唆したほか、EUによる関税の撤廃や引き下げ履行の遅滞を理由に、同年5月には自動車・同部品に対する232条関税を15%から25%引き上げる可能性に言及するなど、軋轢(あつれき)は継続している。また、IEEPA関税を巡る最高裁判決は、合意の法的有効性に対する懸念も生じさせた。例えば、マレーシアでは投資貿易産業相が合意について「無効」との見解を示しており(ただし、正式な破棄・終了の発表は2026年5月末時点で未確認)、米国の裁判結果が通商関係にも波及している。

表2 米国と各国・地域との主な合意項目(〇:合意あり、-:合意文書等に言及なし)〔注〕2026年3月時点
国・地域 相互関税率 232条関税の変更 非関税障壁 デジタル貿易 経済安保 国営企業関連 米国産品購入 対米投資 労働 環境
日本 15%
韓国 15%
台湾 15%
インドネシア 19%
ベトナム 20%
カンボジア 19%
マレーシア 19%
タイ 19%
インド 25%
バングラデシュ 19%
英国 10%
EU 15%
スイス 15%
リヒテンシュタイン 15%
北マケドニア 15%
アルゼンチン 10%
エクアドル 15%
エルサルバドル 10%
グアテマラ 10%

〔注〕2026年3月時点

〔出所〕米国政府発表資料、外交問題評議会(CFR)分析を基にジェトロ作成

米国とARTに合意したこれらの国・地域とは対照的に、中国は対抗措置を講じた。米国が2025年2月以降にフェンタニル関税、同年4月以降に相互関税を発動したのに対し、中国も報復関税で対抗した。これに米国がさらに報復関税を発動する応酬が繰り返され、一時は米国のフェンタニル関税と相互関税の合計が145%に達した。その後、同年5月以降に実施された2国間協議を通じて緊張は徐々に緩和され、同年10月の米中首脳会談では貿易戦争の事実上の「停戦」に合意した。フェンタニル関税と相互関税の合計は20%に引き下げられたほか、前述の301条に基づく入港料金措置や、輸出管理規則(EAR)適用対象をエンティティー・リスト(EL)などへの掲載事業体が50%以上所有する事業体に拡大する措置(「関連事業体ルール」)についても、2026年11月まで一時停止されている。もっとも、一時停止は米中対立の終結を意味するものではない。むしろ、急速なエスカレーションを回避するための管理措置と位置付ける方が適切であり、両国間の戦略的競争は継続している。

さらに、トランプ政権は新たな2国間協定の締結だけでなく、既存の自由貿易協定の見直しも進めている。その最大の焦点が、2026年7月に実施される米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の2032年以降の延長を協議する「共同見直し」のプロセスだ。米国は、貿易赤字の削減や製造業の国内回帰を重視する立場から、隣国のカナダやメキシコに対しても例外的な扱いを認めない姿勢を示している。このため、単純な協定延長で合意する可能性は低い。今後の交渉では、自動車をはじめとする原産地規則の厳格化が主要な論点になるとみられている。

日米関係は関税交渉から戦略分野での投資協力へ

日本に関しては、日米両国は2025年7月に米国の関税措置などに関する合意に達した。関税分野では、日本に対する相互関税および自動車・同部品に対する232条関税について、15%を基準に「ノー・スタッキング・ルール」が導入された。具体的には、一般関税率が15%未満の場合には一般関税率と相互関税率の合計を15%とし、一般関税率が15%以上の場合には相互関税や232条関税を追加的に課さないことが定められた。また、半導体や医薬品に対する232条関税についても、日本に対する関税率は「他国に劣後しない」待遇とすることが定められた。

また、米国の関税措置の低減と同時に、日米両国は5,500億ドルの対米投資イニシアチブの創設に合意した。半導体、医薬品、金属、重要鉱物、造船、エネルギー、人工知能(AI)・量子コンピューティングなどの戦略分野において、日本は政府系金融機関を通じて投資・融資・融資保証を提供し、米国は連邦政府所有地のリースや電気・水道などインフラ整備支援を提供することとなった。投資案件の選定は、日米両国による「協議委員会(Consultation Committee)」での協議を踏まえ、米商務長官を委員長とする「投資委員会(Investment Committee)」が推薦し、最終的に大統領が決定する仕組みとなっている。2026年5月までに6件のプロジェクトが発表されており、天然ガス火力発電施設、小型モジュール炉(SMR)、米国産原油輸出インフラ、人工ダイヤモンド製造施設などが選定されている。

また、日米両国では重要鉱物など分野別の協力も進展している。2025年10月の日米首脳会談で、先端技術協力、重要鉱物供給確保、造船協力に関する複数の覚書が発表された。さらに2026年3月の首脳会談では、重要鉱物供給確保に関する行動計画や、南鳥島周辺海域のレアアース泥を含む海洋鉱物資源開発に関する協力文書が公表されている。

2026年2月のIEEPA関税に対する最高裁判決後も、日米両政府は2025年7月の合意を引き続き履行する方針を確認している。従って、今後も、対日関税措置や対米投資協力の枠組みは維持される可能性が高い。日米関係においては、米国の関税措置に関する交渉の段階を終えて、投資イニシアチブや重要鉱物など経済安全保障分野における長期的な政策協力が主要な軸となりつつある。

重要鉱物と先端半導体を巡る競争の激化

米中対立の激化に伴い、関税以外の通商措置も重要性を増している。その代表例が重要鉱物を巡る競争だ。中国は報復措置の一環として重要鉱物・レアアースの輸出管理を強化した。これにより、米国では自動車メーカーのフォードが永久磁石の供給不足を理由としてシカゴの工場の操業を一時停止するなど、サプライチェーンへの影響が顕在化した。こうした状況を受け、米国は中国への依存度を低減するため、重要鉱物の採掘、加工、精製、回収・再利用に至るサプライチェーン全体の再構築を進めている。その特徴は、米国が単独ではなく、同盟国・同志国との連携を通じて供給網を構築しようとしている点にある。トランプ政権はこれまでに、日本のほか、EU、メキシコ、アルゼンチン、クック諸島、エクアドル、ギニア、モロッコ、パラグアイ、ペルー、フィリピン、アラブ首長国連邦(UAE)、英国、ウズベキスタン、マレーシア、タイ、オーストラリア、インド、アルメニアなどと個別に重要鉱物供給確保に向けて連携する覚書や合意を発表している。

さらに、2国間協力に加え、多国間枠組みの形成も進められている。2025年6月のG7サミットでは、「G7重要鉱物行動計画」が採択されたほか、同年7月にはクアッド(日本、米国、オーストラリア、インド)4カ国で「重要鉱物イニシアチブ」の立ち上げを発表した。また、同年12月には、半導体製造に使用されるシリカなどの供給網構築を目的とする「パックス・シリカ」が発足し、これまでに米国や日本を含めた16カ国・地域が参加している。さらに、2026年2月には、55カ国・地域が参加する重要鉱物閣僚会議を主催し、重要鉱物供給確保に関する新たな多国間協力枠組みである「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」が創設された。

対照的に、中国に対する技術的優位性を維持する観点から、米国は先端半導体分野における輸出管理を一段と強化している。2025年には、半導体大手のエヌビディア(NVIDIA)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(Advanced Micro Devices)の半導体や、半導体設計ソフト大手のケイデンス・デザイン・システムズ(Cadence Design Systems)、シノプシス(Synopsys)、シーメンス(Siemens)のソフトに対して、輸出許可(ライセンス)の取得要件が新たに設けられるなど、特定の企業や製品を対象に輸出管理を厳格化してきた。また、同年9月にELなどへの掲載事業体が50%以上所有する事業体にEARの適用を拡大する「関連事業体ルール」が導入された(2026年11月まで一時停止中)。さらに、議会でも2026年4月、米国と同盟国との半導体製造装置の輸出管理を連携させることを目的とした超党派法案(MATCH法案)が上下両院で提出された。

このように、重要鉱物分野では供給網の再構築を通じた「デリスキング」が進められる一方、先端半導体分野では輸出管理や投資規制を通じた「デカップリング」が進められている。手段や強度に違いがあるものの、中国への戦略的依存を低減するという政策目標は一貫している。

米国通商政策の新常態

関税措置については、依然として訴訟や追加措置の可能性が存在し、不確実性は高い。しかし、IEEPA関税が122条関税へ置き換えられた事例が示すように、トランプ政権は法的根拠を変更しながらも高関税政策を維持する姿勢を崩していない。また、第1次トランプ政権下で導入された301条対中関税や232条鉄鋼・アルミニウム関税が、バイデン政権下においても全面的には撤廃されなかったことを踏まえれば、高関税政策はポスト・トランプの政権でも一定程度継続する可能性が高い。総じてみれば2025年は、米国の通商政策が自由貿易体制の下で形成された関税低減や市場開放を前提とする時代から、高関税措置と重要産業分野に対する経済安全保障措置を前提とする新たな通商環境への移行が本格化した年となった。

貿易

輸出入ともに増加、貿易赤字はやや増加

米国商務省が2026年3月に発表した、2025年の貿易統計(国際収支ベース)によると、米国の財貿易は輸出入ともに増加した。輸出は前年比5.7%増の2兆1,975億ドル、輸入は4.3%増の3兆4,384億ドル、貿易赤字額は2.1%増の1兆2,409億ドルとなった。

通関ベースで2025年の財輸出を見ると、前年比5.7%増の2兆1,785億ドルとなった。財別では宝石・貴金属(構成比6.9%)が倍増し、未加工の金(HSコード7108項)が前年の2.7倍、金属製のその他の製品(7115項)が18.7倍に増加した。その他、一般機械(13.0%)が11.5%と高い伸びを示し、コンピュータおよびアクセサリー(8471項)、機械部品・附属品(8473項)がともに約5割増加した。航空機・同部品(7.5%)も21.8%増と好調だった。一方、自動車・同部品(6.0%)は10.3%減少し、中でも乗用車(8703項、11.5%減)や貨物自動車(8704項、20.3%減)の減少が目立った。

表3 米国の主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値、-は該当なし)〔注〕季節調整済み、伸び率は前年比。
品目 HSコード 輸出(FAS:船側渡し価格) 輸入(Customs Value:課税価格)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
食肉 02 22,640 21,308 1.0 △ 5.9 15,008 17,790 0.5 18.5
穀物 10 24,089 27,806 1.3 15.4 3,118 2,984 0.1 △ 4.3
鉱物性燃料 27 319,476 308,911 14.2 △ 3.3 241,038 206,337 6.0 △ 14.4
原油 2709 118,923 100,346 4.6 △ 15.6 167,705 140,265 4.1 △ 16.4
燃料油 2710 117,007 108,104 5.0 △ 7.6 56,997 47,188 1.4 △ 17.2
天然ガス 2711 62,262 80,943 3.7 30.0 8,874 11,748 0.3 32.4
プラスチック製品 39 80,366 77,665 3.6 △ 3.4 73,522 69,326 2.0 △ 5.7
医薬用品 30 94,468 97,825 4.5 3.6 211,798 213,075 6.2 0.6
一般機械 84 254,296 283,610 13.0 11.5 521,219 653,965 19.2 25.5
民間航空機エンジン 8407 8,013 9,217 0.4 15.0 11,760 12,108 0.4 3.0
コンピュータおよびアクセサリー 8471 40,201 61,178 2.8 52.2 140,257 251,026 7.3 79.0
機械部品・附属品 8473 24,022 35,756 1.6 48.9 54,387 88,910 2.6 63.5
機械類及び電気機器 85 215,111 226,089 10.4 5.1 477,238 504,962 14.8 5.8
スマートフォン 8517 39,113 47,148 2.2 20.5 113,657 142,141 4.2 25.1
通信機器 8525~8527 7,117 6,978 0.3 △ 2.0 19,669 18,199 0.5 △ 7.5
半導体 8541 6,914 6,935 0.3 0.3 22,581 14,710 0.4 △ 34.9
電気機器 8543 5,972 6,427 0.3 7.6 16,698 17,492 0.5 4.8
自動車・同部品等 87 146,601 131,445 6.0 △ 10.3 385,647 332,024 9.7 △ 13.9
乗用車 8703 60,450 53,495 2.5 △ 11.5 217,047 181,111 5.5 △ 16.6
貨物自動車 8704 21,906 17,465 0.8 △ 20.3 47,503 41,501 1.3 △ 12.6
航空機・同部品 88 134,973 164,326 7.5 21.8 35,127 33,401 1.0 △ 4.9
光学機器・医療機器 90 106,656 106,326 4.9 △ 0.3 122,784 124,048 3.6 1.0
医療機器 9018 36,924 36,969 1.7 0.1 40,851 44,006 1.3 7.7
繊維衣料品・日用品 61~64 10,120 9,607 0.4 △ 5.1 124,524 119,909 3.5 △ 3.7
宝石・貴金属 71 74,062 149,334 6.9 101.6 89,070 153,805 4.5 72.7
未加工の金 7108 29,661 80,583 3.7 171.7 15,944 30,182 0.9 89.3
金属製のその他の製品 7115 1,153 21,501 1.0 1,765.1 21,225 77,629 2.3 265.8
家具・家庭用品等 94 9,871 9,406 0.4 △ 4.7 66,978 61,164 1.8 △ 8.7
玩具・ゲーム・スポーツ用品 95 7,103 6,710 0.3 △ 5.5 40,979 35,083 1.0 △ 14.4
その他 561,859 558,121 25.6 △ 0.7 858,360 887,874 26.0 3.4
合計 2,061,691 2,178,489 100.0 5.7 3,266,410 3,415,747 100.0 4.6

〔注〕季節調整済み、伸び率は前年比。

〔出所〕米国商務省統計から作成

中国向け輸出が大幅に減少

財輸出を国・地域別で見ると、1位のメキシコ(構成比15.5%、3,380億ドル)は前年比1.2%増と微増だった。2位のカナダ(15.1%、3,298億ドル)は5.8%減、3位の中国(4.9%、1,063億ドル)が25.8%減と大きく落ち込み、全体を押し下げた。1位のメキシコはコンピュータおよびアクセサリー(2.8倍)、機械部品・附属品(56.2%増)が増加した一方、乗用車(14.0%減)、貨物自動車(29.4%減)は不振だった。2位のカナダは乗用車(24.5%減)、貨物自動車(23.1%減)の減少が下押しした。3位の中国は、航空機・エンジン・部品(37.3%増)は伸びたが、乗用車(53.9%減)、銅くず(7404項、76.8%減)がともに大幅減となった。4位の英国(4.5%、970億ドル)は22.0%増加した。未加工の金が倍近く、金属製その他の製品が70倍以上に伸び、全体を押し上げた。5位のオランダ(4.4%、956億ドル)は8.4%増だった。国・地域別でもっとも伸長したのは8位のスイス(3.3%、717億ドル)で前年の2.9倍だった。未加工の金が前年の5倍近く伸びたことが要因だ。日本(3.8%、821億ドル)は7位で3.9%増だった。

EU(構成比19.0%、4,144億ドル)は前年比12.1%増で、イタリア(35.0%増)、オランダ(8.4%増)、ドイツ(9.7%増)が全体を押し上げた。品目別では、航空機・エンジン・部品(27.4%増)、ホルモンおよびその誘導体(2937項、96.8%増)、血液・ワクチン(3002項、15.7%増)、包装済み医薬品(3004項、30.7%増)が好調だった。

中国からのIT関連品の輸入減をメキシコ、ベトナムなどが代替

2025年の財輸入(通関ベース)は、前年比4.6%増の3兆4,157億ドルとなった。財別では、一般機械(構成比19.2%)が25.5%増と全体を押し上げ、中でもコンピュータおよびアクセサリーが79.0%増だった。宝石・貴金属(4.5%、72.7%増)も増加要因となり、未加工の金が89.3%増、金属製のその他の製品が3.7倍に伸びた。他方で、鉱物性燃料(6.0%、14.4%減)と自動車・同部品(9.7%、13.9%減)はともに落ち込み、原油(2709項)が16.4%、乗用車が16.6%、それぞれ減少した。

財輸入を国・地域別で見ると、1位のメキシコ(構成比15.7%、5,349億ドル)は前年比5.8%増、2位のカナダ(11.2%、3,830億ドル)は7.0%減だった。3位の中国(9.0%、3,084億ドル)が29.7%減と大きく落ち込んだ。1位のメキシコはコンピュータおよびアクセサリー(2.1倍)が伸びたが、乗用車(10.7%減)、貨物自動車(8.1%減)が減少した。2位のカナダも乗用車(11.1%減)、貨物自動車(21.5%減)の減少が響いた。3位の中国はコンピュータおよびアクセサリーが前年比で7割減、スマートフォン(8517項)が4割減と大きく落ち込んだ。4位の台湾(5.9%、2,014億ドル)は73.3%増で輸入全体の最大の押し上げ要因となった。5位のベトナム(5.7%、1,938億ドル)も42.0%増と大きく伸び、全体を押し上げた。台湾は、コンピュータおよびアクセサリーが3倍以上、ベトナムは、コンピュータおよびアクセサリー、機械部品・附属品、スマートフォンが全て倍以上伸びた。対中関税の影響で減少した中国からのコンピュータおよびアクセサリーの輸入を主にメキシコや台湾からの輸入で代替し、スマートフォンの輸入の減少をベトナムやインドが代替したとみられる。インドからのスマートフォンの輸入は2.8倍となった。

8位のアイルランド(構成比3.9%、1,335億ドル)は前年比29.3%増で、ホルモンおよびその誘導体が3.7倍と全体を押し上げた。10位のスイス(3.1%、1,060億ドル)も67.4%増と高い伸びを示した。未加工の金、金属製のその他の製品がともに4倍以上伸びた。日本(4.3%、1,460億ドル)は7位で1.6%減だった。

EU(18.5%、6,332億ドル)は、アイルランドの伸びが貢献し4.5%増だった。品目別では、ホルモンおよびその誘導体が3.6倍で、最大の押し上げ要因となった。

表4 米国の国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FAS:船側渡し価格) 輸入(Customs Value:課税価格)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
北米
USMCA 683,988 667,770 30.7 △ 2.4 917,446 917,864 26.9 0.1
カナダ 349,908 329,801 15.1 △ 5.8 411,887 382,960 11.2 △ 7.0
メキシコ 334,032 337,960 15.5 1.2 505,523 534,874 15.7 5.8
欧州
EU 369,789 414,428 19.0 12.1 605,663 633,179 18.5 4.5
オランダ 88,223 95,643 4.4 8.4 34,055 34,945 1.0 2.6
ドイツ 75,724 83,062 3.8 9.7 160,380 156,108 4.6 △ 2.7
フランス 43,548 50,028 2.3 14.9 59,783 68,149 2.0 14.0
イタリア 32,357 43,668 2.0 35.0 76,344 74,421 2.2 △ 2.5
ベルギー 34,201 36,405 1.7 6.5 27,787 27,257 0.8 △ 1.9
アイルランド 16,760 19,336 0.9 15.4 103,281 133,537 3.9 29.3
英国 79,532 97,009 4.5 22.0 68,168 64,789 1.9 △ 5.0
スイス 25,043 71,694 3.3 186.3 63,326 105,998 3.1 67.4
アジア
中国 143,227 106,308 4.9 △ 25.8 438,742 308,380 9.0 △ 29.7
日本 78,978 82,067 3.8 3.9 148,371 145,950 4.3 △ 1.6
韓国 65,586 68,806 3.2 4.9 131,553 125,222 3.7 △ 4.8
台湾 42,537 54,666 2.5 28.5 116,255 201,423 5.9 73.3
インド 41,537 45,608 2.1 9.8 87,338 103,824 3.0 18.9
シンガポール 45,039 41,655 1.9 △ 7.5 43,184 38,102 1.1 △ 11.8
香港 27,884 33,673 1.6 20.8 5,948 5,131 0.2 △ 13.7
マレーシア 27,635 28,867 1.3 4.5 52,488 59,657 1.7 13.7
タイ 17,858 19,484 0.9 9.1 63,350 91,340 2.7 44.2
ベトナム 13,044 15,657 0.7 20.0 136,501 193,840 5.7 42.0
インドネシア 10,159 11,026 0.5 8.5 28,052 34,742 1.0 23.9
フィリピン 9,245 9,147 0.4 △ 1.1 14,162 17,766 0.5 25.5
オーストラリア 34,583 33,697 1.6 △ 2.6 16,669 29,117 0.9 74.7
中南米
ブラジル 49,136 54,384 2.5 10.7 42,348 39,938 1.2 △ 5.7
コロンビア 18,695 19,394 0.9 3.7 17,865 17,814 0.5 △ 0.3
チリ 18,232 19,121 0.9 4.9 16,423 18,957 0.6 15.4
中東
トルコ 15,376 20,399 0.9 32.7 16,750 16,412 0.5 △ 2.0
アラブ首長国連邦(UAE) 27,028 31,415 1.4 16.2 7,411 7,606 0.2 2.6
アフリカ 32,375 40,419 1.9 24.9 39,582 43,017 1.3 8.7
合計(その他含む) 2,061,691 2,178,489 100.0 5.7 3,266,410 3,415,747 100.0 4.6

〔出所〕米国商務省統計から作成

対内・対外直接投資

対内直接投資は前年比減も、製造業向けは旺盛

米国商務省経済分析局(BEA)が発表した2025年の米国の対内直接投資統計(簿価ベース、ネット、フロー。対外投資も同様)は、前年比8.2%減の2,478億ドルだった。国・地域別に見ると、最大の投資国は日本で3.4%増の438億ドル、次いでドイツが40.1%増の311億ドル、オランダが11.7%減の309億ドルと続いた。地域区分で最大の欧州は1.4%減の1,602億ドルとなり、全体の約64.6%を占めた。また、2025年末の対米直接投資残高は4.8%増の5兆8,644億ドルとなった。国・地域別の直接投資残高(UBOベース、表5〔注1〕参照)でも日本が最大で1.6%増の8,271億ドル(構成比14.1%)だった。日本は2019年から7年連続で国・地域別首位を維持した。地域区分では、欧州が最大で56.1%を占めた。また、国連貿易開発会議(UNCTAD)の“World Investment Report 2026”によれば、米国は2025年も技術集約型セクターや大規模プロジェクトを強みに引き続き世界最大の投資受け入れ国の地位を維持した。

表5 米国の国・地域別対内直接投資〔簿価ベース、ネット、フロー、残高〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注1〕UBOベースは、投資主体を最終的に所有またはコントロールしている事業体「最終的な実質所有者(UBO:Ultimate Beneficial Owner)」が所在する国を基準とした集計値。 〔注2〕英領カリブ海諸島は、英領バージン諸島、ケイマン諸島、モントセラトおよびタークス・カイコス諸島の合計値。 〔注3〕米国企業の外国子会社による対米投資
国名 2024年 2025年 2025年末 2025年末
(UBOベース)
フロー フロー 伸び率 残高 構成比 伸び率 残高 構成比 伸び率
欧州 162,496 160,150 △ 1.4 3,729,117 63.6 5.1 3,291,247 56.1 5.9
ドイツ 22,224 31,139 40.1 537,007 9.2 10.0 706,179 12.0 6.6
英国 12,296 16,054 30.6 738,328 12.6 2.8 674,475 11.5 5.4
フランス 12,018 17,170 42.9 278,908 4.8 8.1 408,572 7.0 7.5
アイルランド 7,142 17,902 150.7 271,600 4.6 3.8 391,745 6.7 7.6
スイス 15,017 15,523 3.4 379,251 6.5 6.2 296,796 5.1 9.5
オランダ 34,981 30,875 △ 11.7 751,789 12.8 3.5 248,388 4.2 1.1
スウェーデン 10,783 805 △ 92.5 115,911 2.0 2.7 117,907 2.0 4.6
スペイン 5,945 7,768 30.7 95,461 1.6 10.0 106,030 1.8 8.7
ベルギー △ 516 571 72,334 1.2 1.5 68,178 1.2 △ 0.5
デンマーク 8,436 5,760 △ 31.7 56,247 1.0 9.6 57,256 1.0 9.8
ルクセンブルク 23,991 11,717 △ 51.2 284,654 4.9 5.2 32,942 0.6 △ 2.8
アジア大洋州 66,249 61,239 △ 7.6 1,108,447 18.9 3.3 1,211,503 20.7 1.6
日本 42,360 43,784 3.4 776,330 13.2 3.6 827,116 14.1 1.6
オーストラリア 2,885 4,579 58.7 109,381 1.9 5.3 115,648 2.0 6.5
韓国 13,078 3,493 △ 73.3 95,204 1.6 5.3 96,375 1.6 5.3
シンガポール 2,037 3,874 90.2 52,461 0.9 7.8 52,457 0.9 △ 26.6
中国 3,125 △ 89 19,009 0.3 △ 41.2 40,325 0.7 9.4
カナダ 30,423 19,343 △ 36.4 747,348 12.7 5.5 819,762 14.0 5.4
中南米 6,856 4,709 △ 31.3 223,828 3.8 1.4 277,840 4.7 7.3
メキシコ 4,760 7,062 48.4 48,749 0.8 16.2 67,744 1.2 11.4
英領バミューダ諸島 9,026 △ 4,310 57,606 1.0 △ 3.8 46,365 0.8 △ 0.6
英領カリブ海諸島 △ 9,196 117 85,312 1.5 △ 3.6 40,270 0.7 8.0
中東 4,474 2,251 △ 49.7 45,509 0.8 14.3 83,755 1.4 △ 1.2
アフリカ △ 494 116 10,187 0.2 3.3 7,726 0.1 7.7
米国(注3) 172,601 2.9 1.8
合計(その他含む) 270,004 247,807 △ 8.2 5,864,435 100.0 4.8 5,864,435 100.0 4.8

〔注1〕UBOベースは、投資主体を最終的に所有またはコントロールしている事業体「最終的な実質所有者(UBO:Ultimate Beneficial Owner)」が所在する国を基準とした集計値。
〔注2〕英領カリブ海諸島は、英領バージン諸島、ケイマン諸島、モントセラトおよびタークス・カイコス諸島の合計値。
〔注3〕米国企業の外国子会社による対米投資

〔出所〕米国商務省経済分析局(BEA)「Direct Investment by Country and Industry」から作成。

業種別では2025年、製造業が前年比3.3%増の1,135億ドルと好調で、全体の4割強を占めた。2024年に製造業の中では首位だった輸送機械は引き揚げ超過に転じたが、化学が前年から倍増の366億ドル、電気機器・電化製品・部品が2.1倍の206億ドルと大幅に増加したほか、コンピュータ・電子機器、金属原料・加工品、その他の製造業などが軒並み大幅増となった。一方、非製造業では、情報処理業が2024年に引き続き15.4%増の115億ドルと拡大したほか、不動産および賃貸・リース業(37.2%増、38億ドル)が好調だった。もっとも、それ以外の業種は軒並み減少し、預金取扱機関を除く金融・保険業は48.2%減と縮小した。

表6 米国の業種別対内直接投資〔簿価ベース、ネット、フロー、残高〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種名 2024年 2025年 2025年末
フロー フロー 伸び率 残高 構成比 伸び率
製造業 109,903 113,549 3.3 2,512,271 42.8 4.2
化学 18,326 36,645 100.0 835,930 14.3 0.9
輸送機械 22,891 △ 13,932 244,177 4.2 △ 7.2
コンピュータ・電子機器 7,783 14,479 86.0 222,512 3.8 8.0
電気機器・電化製品・部品 9,923 20,637 108.0 153,905 2.6 29.3
一般機械 5,568 8,508 52.8 153,133 2.6 3.9
食品 21,233 △ 1,336 135,706 2.3 0.7
金属原料・加工品 4,781 17,038 256.4 129,519 2.2 19.7
その他の製造業 19,396 31,509 62.5 637,389 10.9 5.6
預金取扱機関を除く金融・保険業 22,372 11,596 △ 48.2 629,729 10.7 5.7
卸売業 39,799 38,308 △ 3.7 533,981 9.1 8.9
専門・科学・技術サービス業 14,471 13,915 △ 3.8 281,206 4.8 5.3
情報処理業 9,983 11,521 15.4 255,597 4.4 6.0
預金取扱機関 14,601 2,009 △ 86.2 247,994 4.2 7.4
小売業 14,458 9,188 △ 36.5 223,644 3.8 3.6
不動産および賃貸・リース業 2,751 3,775 37.2 187,575 3.2 3.0
合計(その他含む) 270,004 247,807 △ 8.2 5,864,435 100.0 4.8

〔出所〕米国商務省経済分析局(BEA)「Direct Investment by Country and Industry」より作成。

第2次トランプ政権が引き出した対内投資公約

2025年以降、米国では、米国の関税措置を巡る各国・地域との協議や、個別企業との調整と並行して、大型の対米投資コミットメントが相次いで公表された。ホワイトハウスは、こうした案件の総額が10兆7,000億ドルに達すると説明している。ただし、その中には外国政府・企業のみならず、米国企業による大型投資計画も多数含まれる。

各国・地域との協議では、米国政府は日本政府との間で2025年9月、5,500億ドルの対米投資の覚書(MOU)を締結したほか、韓国とも11月に3,500億ドルの同種MOUを締結した。EUとは7月に既に6,000億ドルの対米投資で合意している。これらを含め、米国は2026年7月末時点で20カ国・地域との合意の成立を発表している。各国・地域政府によるこれらの対米投資額は民間企業の投資意向を前提とする。一方、民間企業の投資計画の大部分は5~10年の期間を前提とした中・長期の構想である。英国通信社のロイターはホワイトハウスが発表した民間および外国企業による投資計画のリストの約半分が、バイデン前政権期に発表されていた案件や既存の設備の運用・維持のための恒常的投資を再包装したものだったと報じている。

2025年の主な対内グリーンフィールド投資案件を見ると、金額で最大の案件は半導体ファウンドリー(受託製造)世界最大手の台湾の台湾積体電路製造(TSMC)が3月に発表した、アリゾナ州における先端半導体製造事業に対して1,000億ドルの追加投資を行うとした事例である。同社は2024年に650億ドル相当の投資を発表しており、2026年7月にさらに1,000億ドルの追加投資を発表している。これに次ぐのが、トランプ政権が高関税を課す医薬品、自動車大手企業を中心に今後数年間にわたる生産、研究開発、サプライチェーン強化への投資を含む大型投資コミットメントであり、100億ドル以上の案件だけで10件以上にのぼる(表7-1参照)。「大型コミットメント」以外で最大だったのは、韓国の高麗亜鉛(コリア・ジンク、Korea Zinc)がテネシー州に亜鉛、銅、アンチモン、インジウム、ガリウム、ゲルマニウムなど13種類の非鉄金属・重要鉱物を生産する精錬所を開設すると発表した案件(12月、74億ドル)である。トランプ政権は米国が重要鉱物の供給を過度に外国に依存しており、国家安全保障上の懸念となっているとして、重要鉱物の国内サプライチェーンの強化を目指している。こうした背景から、高麗亜鉛は、米国政府と個別に投資協定を締結し、米国政府〔戦争省(国防総省)と商務省〕も出資・補助金を通じて同社の投資を支援する計画だ。

2025年のクロスボーダーM&A投資案件では、日本のソフトバンクが未公開の米国AI開発企業オープンAI(OpenAI)の非公開優先株11%相当分を米国機関投資家と400億ドル(うち同社出資は300億ドル)で取得した案件が最大である。2位も日本企業によるもので、日本製鉄によるUSスチール(United States Steel)買収だ。一時、バイデン前大統領により買収計画に禁止命令が出されたが、日本製鉄が米国政府との間で国家安全保障協定を結び、最終的に買収が成立した(約142億ドル、6月完了)。このほか、ソフトバンクは2025年1月、オープンAI、米国IT大手オラクル(Oracle)などと共同で総額5,000億ドル(約78兆円)規模の超巨大AIインフラストラクチャー構築プロジェクト「スターゲート」計画にも参画すると発表した。

表7-1 米国の主な対内直接投資案件(2025年)〔グリーンフィールド投資〕
業種 国・地域 企業名 時期 投資額 概要
半導体 台湾 台湾積体電路製造(TSMC) 3月 1,000億ドル以上 新たに3つの工場、2つのパッケージング施設、研究開発(R&D)施設を建設。
医薬品 スイス ロッシュ(Roche) 4月 500億ドル 今後5年間にインディアナ、ペンシルベニア、マサチューセッツ、カリフォルニア、ノースカロライナ各州で、製造施設の新設・拡張、最先端のR&D拠点の新設などにより1万2,000人以上の新規雇用を創出。
医薬品 英国 アストラゼネカ(AstraZeneca) 7月 500億ドル 2030年までに500億ドルを投じ、バージニア州、メリーランド州などの製造拠点やR&D拠点の拡張などを実施。
医薬品 日本 武田薬品工業 5月 300億ドル 今後5年間で米国に約300億ドルを投資し、製造拠点の拡充や研究開発費増額を図る。
医薬品 スイス ノバルティス(Novartis) 4月 230億ドル 今後5年間に米国内の10カ所の研究開発・医薬品製造基盤を強化(7カ所の施設新設を含む)。約1,000人を新規に直接雇用。
自動車 韓国 現代自動車(Hyundai) 3月 210億ドル 2028年までに210億ドルを投資して、自動車生産能力の拡大、EV関連部品の現地調達強化、製鉄・エネルギーインフラ整備などを進める。
海運・物流 フランス CMA CGM 3月 200億ドル 港湾物流、倉庫、航空貨物、海運インフラなどに投資し、1万人の新規雇用を見込む。
医薬品 フランス サノフィ(Sanofi) 2月 200億ドル 2030年までに200億ドル以上の対米投資を実施、米国内の製造・R&D拠点を拡充。
データセンター アラブ首長国連邦 DAMAC 1月 200億ドル 2025年からの4年間で、テキサス、アリゾナ、オクラホマ、ルイジアナ、オハイオ、イリノイ、ミシガン、インディアナの各州に合計で2GW相当のデータセンターを建設する。
自動車 オランダ ステランティス(Stellantis) 10月 130億ドル イリノイ、オハイオ、ミシガン、インディアナ各州で2029年までに5つの新型車を投入し、19製品で改良モデル投入とパワートレイン更新を計画、米国での生産能力を50%拡大。
自動車 日本 トヨタ自動車 11月 100億ドル 今後5年間で現地生産拡充とサプライチェーン強化を実施。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

表7-2 米国の主な対内直接投資案件(2025年)〔クロスボーダーM&A〕
業種 国・地域 投資企業名 被投資企業名 時期 投資額 概要
ソフトウエア 日本 ソフトバンク オープンAI グローバル(Open AI Global) 12月 300億ドル 米大手機関投資家と共同で、総額400億ドルで非公開優先株を取得。2026年も300億ドルの追加投資を実施し、13.1%の株式を取得する計画。
金属、採鉱 日本 日本製鉄 USスチール(United States Steel) 6月 142億ドル 日本の鉄鋼大手が米国の同業を買収。米国市場でのシェア拡大と成長力の取り込みを狙う。
ITコンサルティング ドイツ シーメンスインダストリーソフトウエア(Siemens Industry Software) アルテア・エンジニアリング(Altair Engineering) 3月 106億ドル 産業用シミュレーションおよび解析ソフトウエア開発大手を買収、包括的なAI搭載産業用ソフトウエアポートフォリオの構築を目指す。
医薬品 フランス サノフィ(Sanofi) ブループリント・メディシンズ(Blueprint Medicines) 7月 95億ドル 希少免疫疾患などの治療薬開発バイオ医薬品会社を買収。
パイプライン カナダ ブルックフィールド・インフラストラクチャー(Brookfield Infrastructure Partners) コロニアル・エンタープライゼズ(Colonial Enterprises) 7月 90億ドル 精製石油製品のパイプライン輸送サービス企業の買収。ヒューストン・ニューヨーク間(全長約8,800キロメートル)の米国最大の精製石油製品パイプライン網獲得。
包装材 スイス アムコール(Amcor ) ベリー・グローバル(Berry Global) 4月 84億ドル 同業(プラスチック包装材大手)同士の合併。得意分野が異なり補完効果を狙う。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

対外直接投資は36.8%増、欧州向けが3.9倍と拡大

米国の2025年の対外直接投資(ネット、フロー)は、前年比36.8%増の3,359億ドルだった。地域区分で見ると、欧州が全体の8割を占めており、3.9倍の2,684 億ドルだった。国・地域別では、英国(818億ドル、4.6倍)が最大で、オランダ(713億ドル、79.9%増)、ルクセンブルク(500億ドル、3.3倍)などが大幅な伸びを示し、全体を押し上げた。アジア大洋州は66.4%減と2024年に引き続き縮小し、構成比も前年の47.0%から11.5%に縮小した。シンガポール(21億ドル)が97.3%減、香港(13億ドル)が77.6%減と落ち込んだ影響が大きい。インド、韓国も減少したが、日本は前年比65.4%増の90億ドルと拡大した。2025年末の米国の対外直接投資残高は前年同期比6.5%増の7兆1,358億ドルとなった。地域区分では欧州が最も多く全体の6割を占め8.9%増と拡大した。国・地域別では英国が10.9%増の1兆1,147億ドルで首位となり、2位はオランダ(5.0%増、1兆440億ドル)で、この2カ国が1兆ドルを超える。以下、ルクセンブルク(14.6%増、6,453億ドル)、アイルランド(3.9%増、5,119億ドル)が続く。米国と国境を接するカナダは8.3%増の4,881億ドル、メキシコも8.3%増の1,688億ドルだった。UNCTADの“World Investment Report 2026”によれば、米国は大規模な海外関連企業ネットワークや国外での内部留保を背景に、2025年も最大の対外投資主体としての地位を維持した。

表8 米国の国・地域別対外直接投資〔簿価ベース、ネット、フロー、残高〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕英領カリブ海諸島は、英領バージン諸島、ケイマン諸島、モントセラトおよびタークス・カイコス諸島の合計値。
国名 2024年 2025年 2025年末
フロー フロー 伸び率 残高 構成比 伸び率
欧州 69,572 268,355 285.7 4,300,157 60.3 8.9
英国 17,856 81,770 357.9 1,114,698 15.6 10.9
オランダ 39,645 71,321 79.9 1,044,001 14.6 5.0
ルクセンブルク 15,029 49,985 232.6 645,305 9.0 14.6
アイルランド △ 47,315 6,488 511,905 7.2 3.9
ドイツ 10,917 10,990 0.7 239,292 3.4 10.7
スイス 20,911 17,915 △ 14.3 235,198 3.3 10.3
フランス 6,213 20,279 226.4 124,836 1.7 21.1
スウェーデン △ 226 △ 2,636 72,460 1.0 △ 0.4
ベルギー △ 2,427 1,828 55,040 0.8 4.1
イタリア 3,498 1,664 △ 52.4 41,637 0.6 30.9
アジア大洋州 115,327 38,709 △ 66.4 1,188,336 16.7 3.2
シンガポール 79,677 2,116 △ 97.3 484,167 6.8 △ 1.7
オーストラリア 2,601 5,191 99.6 190,410 2.7 3.8
中国 4,826 6,775 40.4 120,547 1.7 7.6
香港 5,655 1,264 △ 77.6 103,737 1.5 4.0
日本 5,411 8,952 65.4 74,275 1.0 16.3
インド 6,874 6,153 △ 10.5 68,651 1.0 7.9
韓国 2,775 1,410 △ 49.2 37,438 0.5 6.9
カナダ 41,087 30,108 △ 26.7 488,080 6.8 8.3
中南米 9,519 △ 14,081 1,022,006 14.3 0.3
英領カリブ海諸島 △ 9,550 △ 5,305 350,999 4.9 6.5
英領バミューダ諸島 △ 3,719 △ 30,444 196,789 2.8 △ 18.6
メキシコ 16,343 9,847 △ 39.7 168,849 2.4 8.3
ブラジル 5,216 3,191 △ 38.8 90,223 1.3 5.9
中東 9,795 14,708 50.2 99,324 1.4 16.9
アフリカ 137 △ 1,929 37,905 0.5 △ 8.4
合計(その他含む) 245,437 335,871 36.8 7,135,807 100.0 6.5

〔注〕英領カリブ海諸島は、英領バージン諸島、ケイマン諸島、モントセラトおよびタークス・カイコス諸島の合計値。

〔出所〕米国商務省経済分析局(BEA)「Direct Investment by Country and Industry」から作成。

業種別に2025年の動向を見ると、製造業が前年比21.7%増の1,097億ドルとなり全体の32.6%を占めた。最大業種の化学が2.8倍の438億ドルとなった影響が大きい。非製造業では、情報処理業が7.0倍の609億ドル、卸売業が4.2倍の249億ドルと拡大した一方で、持株会社(638億ドル)が2.7%減、預金取扱機関を除く金融・保険業と預金取扱機関もともに減少した。UNCTADは2025年の米国投資について、デジタルサービス、先端製造業、エネルギー、ヘルスケア、金融サービスといった分野への大規模な投資が行われ、時には米国国際開発金融公社などの公的支援の下、戦略的な意図に基づいて、エネルギー転換、インフラ、サプライチェーンを重点に対外直接投資が実行されたと分析している。

表9 米国の業種別対外直接投資〔簿価ベース、ネット、フロー、残高〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種名 2024年 2025年 2025年末
フロー フロー 伸び率 残高 構成比 伸び率
鉱業 1,830 13,720 649.7 161,093 2.3 11.0
製造業 90,076 109,657 21.7 1,136,713 15.9 10.0
化学 15,635 43,779 180.0 302,070 4.2 15.5
コンピュータ・電子機器 21,119 8,798 △ 58.3 207,215 2.9 △ 0.9
輸送機械 14,586 10,104 △ 30.7 111,714 1.6 12.1
一般機械 5,922 6,596 11.4 67,055 0.9 10.8
食品 4,786 4,220 △ 11.8 75,234 1.1 1.1
金属原料・加工品 6,910 2,048 △ 70.4 60,757 0.9 5.5
電気機器・電化製品・部品 8,617 15,280 77.3 53,113 0.7 40.4
その他の製造業 12,501 18,832 △ 70.4 259,555 3.6 11.7
持株会社 65,525 63,751 △ 2.7 3,265,295 45.8 2.3
預金取扱機関を除く金融・保険業 35,853 8,420 △ 76.5 961,564 13.5 4.6
情報処理業 8,705 60,905 599.7 474,284 6.6 23.7
卸売業 5,937 24,858 318.7 268,720 3.8 11.8
専門・科学・技術サービス業 24,431 15,875 △ 35.0 212,779 3.0 5.7
預金取扱機関 △ 5,335 △ 5,640 180,560 2.5 10.7
合計(その他含む) 245,437 335,871 36.8 7,135,807 100.0 6.5

〔出所〕米国商務省経済分析局(BEA)「Direct Investment by Country and Industry」から作成。

2025年の対外直接投資案件を見ると、グリーンフィールド投資では、生成AIの急速な進歩に伴う需要増を受けてAIやクラウドサービスに対応した大規模なデータセンター建設や半導体関連投資が上位を占めた。最大の案件は、2月の投資会社ストックファームロード(Stock Farm Road、SFR)傘下のベンチャーキャピタル(VC)、ファーヒルズ(Fir Hills)による韓国・全羅南道でのデータセンタープロジェクトである。100億ドルを初期投資額とし、2028年の完成を目指して最大3GWという世界最大規模のデータセンターを建設する計画だ。データセンター関連では、物流大手プロロジス(Prologis)がフランスのイル・ド・フランス地域に4つのデータセンターを建設する案件(2月、72億5,000万ドル)のほか、アマゾンウェブサービス(AWS)による韓国・蔚山(ウルサン)広域市にAI対応のデータセンターを開設する案件(58億8,000万ドル、1月)、グーグル(Google)がベルギーに2026~2027年に50億ユーロを投資してデータセンターを設立する案件(10月)などが並ぶ。このほか、マイクロソフトは11月、アラブ首長国連邦に2023年から2029年までの間に、総額152億ドルをかけてAIおよびクラウドインフラ投資を行う計画を進めると発表した。その一環としてアブダビ政府系AI企業であるG42への出資や、米エヌビディア(NVIDIA)製画像処理装置(GPU)の導入を行う予定であり、2026~2029年に79億ドルの投資を行うとしている。また、マイクロンテクノロジー(Micron Technology)はAI向け次世代半導体の需要拡大を受け、1月にシンガポールで次世代AIアクセラレータ向け高帯域幅メモリ(HBM)の先進パッケージング施設を開設(70億ドル)すると発表、11月には広島工場にも約96億ドルを投資して次世代AIアクセラレータ向けHBMの製造・研究開発棟を新設すると発表した。クロスボーダーM&A案件では、投資ファンドのクレイトン・デュビリエ&ライス(CD&R)が仏医薬品大手サノフィ(Sanofi)のコンシューマー・ヘルスケア事業(一般用医薬品部門)「オペラ(Opera)」の株式の50%を100億ユーロ(約114億ドル)で取得した案件(4月)が最大だった。

表10-1 米国の主な対外直接投資案件(2025年)〔グリーンフィールド投資〕
業種 投資国・地域 企業名 時期 投資額 概要
データセンター 韓国 ファーヒルズ(Fir Hills) 2月 100億ドル 投資会社ストックファームロード(Stock Farm Road、SFR)の傘下のVCが全羅南道で、初期投資100億ドル、最大350億ドルを投資し、2028年の完成を目指して、最大3GWという世界最大規模のデータセンターを設立。
半導体 日本 マイクロンテクノロジー(Micron Technology) 11月 約96億ドル(1兆5,000億円) AI向け次世代半導体の需要拡大を受け、広島工場に次世代AIアクセラレータ向けHBM(高帯域幅メモリ)の製造・研究開発棟を新設、経済産業省が最大5,360億円を補助。
IT アラブ首長国連邦 マイクロソフト(Microsoft) 11月 79億ドル AIおよびクラウドインフラ関連設備整備の長期計画(2023~29年)への追加投資。
データセンター フランス プロロジス(Prologis) 2月 約72億5,000万ドル(64億ユーロ) イル・ド・フランス地域での、4つのデータセンター建設を含む大規模なインフラ投資。
半導体 シンガポール マイクロンテクノロジー(Micron Technology) 1月 70億ドル 次世代AIアクセラレータ向けHBMの先進パッケージング施設を開設。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

表10-2 米国の主な対外直接投資案件(2025年)〔クロスボーダーM&A〕
業種 投資国・地域 買収企業名 被買収企業名 時期 投資額 概要
医薬品 フランス クレイトン・デュブリエ&ライス(Clayton, Dublier &Rice、CD&R) オペラ(Opera) 4月 100億ユーロ 米投資ファンドのクレイトン・デュビリエ&ライス(CD&R)が仏医薬品大手サノフィ(Sanofi)のコンシューマー・ヘルスケア事業(一般用医薬品部門)「オペラ」の株式の50%を取得。
石油、ガス カナダ スノコ(Sunoco) パークランド・コーポレーション(Parkland Corpolation) 10月 91億ドル 燃料流通大手がカナダの同業を買収し、南北米最大級の独立系燃料販売業者に。
穀物商社 オランダ ブンゲグローバル(Bunge Global) バイテラ(Viterra) 7月 82億ドル 米穀物商社が、カナダで設立された同国最大手の穀物商社で、オランダに本社を置く同業バイテラをスイスの資源大手グレンコア(Glencore)から買収。
包装材 英国 インターナショナル・ペーパー(International Paper) DSスミス(DS Smith) 1月 約72億ドル(58億ポンド) 製紙、包装材大手による欧州同業の買収。持続可能な包装ソリューションと段ボールの世界的リーダーを目指す。
その他金融 英国 ウェルタワー(Welltower) バーチェスター・ヘルスケア(Barchester Healthcare) 10月 69億2,000万ドル(52億ポンド) ヘルスケア専門不動産投資信託(REIT)が、英国2位の高齢者介護施設運営会社の不動産事業(介護施設647カ所を含む)を取得。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

対日関係

輸入がわずかに減少し、貿易赤字が縮小

2025年の対日貿易は、輸出が前年比3.9 %増の821億ドル、輸入が1.6%減の1,460億ドルだった。この結果、対日貿易赤字は7.9%減の639億ドルと縮小した。

輸出では、医薬品(構成比8.7%、71億ドル)が血液・ワクチン(HSコード3002項)を中心に減少したが、航空機・同部品(7.9%、65億ドル)や電気機器(6.0%、49億ドル)、穀物(5.3%、44億ドル)が好調で、全体の押し上げ要因となった。電気機器ではテレビなどの部品(8529項)やスマートフォン(8517項)、穀物はとうもろこし(1005項)が増加した。

輸入は、電気機器(構成比15.3%、224億ドル)の増加が全体を押し上げたが、自動車・同部品(30.9%、451億ドル)や一般機械(22.4%、326億ドル)は減少した。電気機器では、コンデンサー(8532項)、変圧器(8504項)が増加し、自動車・同部品では乗用車(8703項)、一般機械では建設機械(8429項)が不振だった。

表11 米国の対日主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 HSコード 輸出(FAS:船側渡し価格) 輸入(Custom value:課税価格)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
食肉 02 3,128 2,877 3.5 △ 8.0 75 100 0.1 32.4
穀物 10 3,614 4,366 5.3 20.8 16 20 0.0 27.0
鉱物性燃料 27 11,914 12,524 15.3 5.1 498 480 0.3 △ 3.7
有機化学品 29 2,825 2,394 2.9 △ 15.3 1,464 1,386 0.9 △ 5.3
医薬品 30 8,409 7,117 8.7 △ 15.4 7,476 7,201 4.9 △ 3.7
各種の化学工業製品 38 2,067 2,384 2.9 15.3 3,205 3,133 2.1 △ 2.3
プラスチック製品 39 1,857 1,869 2.3 0.7 2,565 2,671 1.8 4.1
ゴム・その製品 40 200 258 0.3 29.1 2,364 2,459 1.7 4.0
宝石・貴金属 71 1,653 1,777 2.2 7.5 293 1,758 1.2 501.0
鉄鋼製品 73 441 456 0.6 3.4 1,724 1,471 1.0 △ 14.7
一般機械 84 7,946 8,212 10.0 3.4 35,219 32,646 22.4 △ 7.3
電気機器 85 4,488 4,897 6.0 9.1 18,832 22,370 15.3 18.8
自動車・同部品等 87 1,394 1,626 2.0 16.7 50,340 45,088 30.9 △ 10.4
航空機・同部品 88 6,097 6,478 7.9 6.2 1,602 1,928 1.3 20.3
光学機器・医療機器 90 7,064 7,155 8.7 1.3 7,068 6,979 4.8 △ 1.2
合計(その他含む) 78,978 82,067 100.0 3.9 148,371 145,950 100.0 △ 1.6

〔出所〕米国商務省統計から作成

日米の直接投資交流はさらなる拡大へ

米国商務省経済分析局(BEA)が発表した対内直接投資統計(簿価ベース、ネット、フロー)によれば、2025年の日本から米国への直接投資額は前年比3.4%増の438億ドルだった。日本はフロー、残高(UBOベース、表5〔注1〕参照)ともに最大の対米投資国であり、残高では2019年から7年連続で国・地域別首位を維持した。業種別に見ると、製造業への投資が前年比2.4倍の227億ドルで、全体の51.8%を占めた。金属原料・加工品(140億ドル、25倍)、コンピュータ・電子機器(77億ドル,857倍)、化学(43億ドル、7.8倍)などが拡大した。製造業以外では、小売業(22億ドル、1.2%増)を除き、軒並み縮小した。

日本企業による対米直接投資案件としては、グリーンフィールド投資で、トヨタ自動車が2025年11月に今後5年間で最大100億ドルの追加投資を行うと発表した事例がある。同社は同月、その一環として、ハイブリッド車需要増に対応するため、米国内ウェストバージニア州、ケンタッキー州、ミシシッピ州、テネシー州、ミズーリ州にある5工場に総額9億1,200万ドルの投資と252人の新規雇用を行うと発表した。M&A案件では日本製鉄によるUSスチール買収やソフトバンクによるオープンAIの非公開優先株取得などが挙げられる。ソフトバンクはオープンAI、オラクルなどとともに総額5,000億ドルを投じ、米国を中心に世界各地で先進的なAIモデルの学習および運用に特化したデータセンター群を構築する「スターゲート」計画に参画している。同社はオープンAIとともにリードパートナーとして財務管理を担う。

このほか、大和ハウス工業は傘下のスタンリー・マーチン・ホームズ(Stanley Martin Homes)を通じて米国南東部で住宅事業を拡大しており、2025年9月にはノースカロライナ州の住宅会社ウィンザー・ホームズ(Windsor Homes)を買収し、約2,100区画の宅地を取得した。積水ハウスも傘下のリッチモンド・アメリカン・ホームズ(Richmond American Homes)を通じ、人口流入増が続き新築住宅需要が強いアリゾナ州やフロリダ州など米国南部・西部各州で、住宅用地を取得・開発した(9月、金額非公表)。これらの米国住宅事業の拡大の背景には、人口流入が続く米国南部・西部を中心とした住宅供給不足と堅調な住宅需要への期待がある。

ジェトロが在米日系企業を対象に2025年9月に実施したアンケート調査(回答企業数:652社)では、中国(23件)や日本(45件)から「調達先を米国に切り替えることを予定している」との回答が目立った。また、「生産地を米国に移管することを検討している」との回答も2024年の11件から34件に急増し、そのうち、日本からの移管件数は18件と、調達先・生産地の変更に関する調査を開始した2019年以降で最多となった。関税によるコスト増や景気の先行きの不透明さを指摘する回答が多かった一方で、「米国市場における現地市場ニーズの拡大」を理由に、半導体やデータセンターといった産業・領域での成長期待から、「今後1~2年に事業を拡大する」と回答した企業の割合は48.3%と、前年(48.6%)とほぼ同水準となった。

米国の2025年の対日直接投資額は前年比65.4%増の90億ドルだった。業種別に見ると、製造業への投資が4.2倍の37億ドルで全体の41.2%を占めた。コンピュータ・電子機器(28億ドル)が前年の9.9倍と大きく拡大し、化学(45億ドル、36.3%増)、輸送機械(13億ドル、12.0%増)が伸びた。製造業以外では、卸売業(11億ドル)が2.2倍に拡大した。

案件別に見ると、グリーンフィールド案件では、2025年11月に発表された、マイクロンテクノロジー(Micron Technology)による広島工場への次世代AIアクセラレータ向け高帯域幅メモリ(HBM)の製造・研究開発棟を新設する案件(1兆5,000億円、約96億ドル)が最大である。同案件には、経済産業省が最大5,360億円を補助する。また、アマゾンは7月に新たに全国6カ所の配送拠点「デリバリーステーション(DS)」新設に加え、商品の保管・梱包を担う物流拠点の「フルフィルメントセンター(FC)」の一部機能とDSの機能を担い当日配送を提供するための拠点を16カ所新設すると発表した(金額非公表)。物流大手プロロジスも茨城県古河市(2月)、愛知県東海市(5月)、岡崎市(10月)などに大規模物流拠点を設置すると発表した。M&A案件では、デジタルインフラ投資会社デジタルブリッジ(Digital Bridge)傘下のDBピラミッドホールディングス(DB Pyramid Holdings)が携帯電話基地局のインフラシェアリング事業を手掛けるJタワー(JTOWER)の株式75.62%を10月に701億円(6億3,100万ドル)で取得した案件が最大だ。同社はその後、非公開化された(総買収額は非公表)。Jタワーは5G、ビヨンド 5G/6G時代を見据えた通信インフラ整備に多額の先行投資が必要となる中、デジタルブリッジの資本支援を受けることで、長期的な事業拡大と経営基盤の強化を図るとしている。これに次ぐのが工業用プロセス流体(油剤など)大手クエーカー・ホートン(⁠Quaker Houghton)による金属表面処理剤製造ディップソール買収〔4月、約230億円(約1億5,300万ドル)〕である。自動車向けの防錆技術などで国内トップクラスのシェアを持つ同社の買収で、クエーカー・ホートンはポートフォリオを拡大することになった。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ) 2025年の1人当たりGDP、貿易収支、経常収支、外貨準備高、対外債務残高は推定値。 失業率:連邦政府閉鎖に伴い、2025年10月のデータは欠損。
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 2.9 2.8 2.1
1人当たりGDP (米ドル) 82,536 86,173 89,991
消費者物価上昇率 (%) 3.4 2.9 2.7
失業率 (%) 3.6 4.0 4.3
貿易収支 (100万米ドル) △ 1,057,495 △ 1,215,403 △ 1,240,816
経常収支 (100万米ドル) △ 928,002 △ 1,185,301 △ 1,116,010
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 234,111 227,760 243,272
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 54,438,934 62,258,823 70,494,244
為替レート (1米ドルにつき、円、期中平均) 140.49 151.37 149.66

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
2025年の1人当たりGDP、貿易収支、経常収支、外貨準備高、対外債務残高は推定値。
失業率:連邦政府閉鎖に伴い、2025年10月のデータは欠損。

〔出所〕
実質GDP成長率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):米国商務省
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
消費者物価上昇率、失業率:米国労働省