ラオスの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • インフレ沈静化とサービス業・発電業の好調により、GDP成長率は4.4%へ加速
  • 輸出が堅調で貿易黒字を拡大したが、高水準の公的債務と深刻な労働力流出が課題
  • 2026年のLDC卒業を控え、資源依存から脱却した自立的な経済構造への転換が急務

公開日:2026年8月5日

マクロ経済

進む経済安定化と残る構造的課題

2025年のラオス経済は、過去数年にわたる深刻な通貨危機と高インフレ局面を脱し、マクロ経済の安定化に向けて着実な進展を示した。アジア開発銀行(ADB)によれば、2025年の実質GDP成長率は4.4%となり、前年の4.0%から加速した。ただし、この成長はサービス業の回復と電力輸出の堅調さに支えられたものであり、依然として公的債務という構造的な課題が解消されておらず、外部環境の変化に影響を受けやすい「脆弱な回復」といえる。

サービス業の成長率は2025年に5.2%に拡大し、引き続き経済成長のエンジンとなった。2024年の「ラオス観光年」の成功を引き継ぎ、2025年の外国人観光客数は前年比11.2%増の458万人に達した。また、中国ラオス鉄道の利用拡大を背景に、運輸・物流サービスも10.3%成長した。同鉄道による越境貨物輸送および旅客移動の効率化は、内陸国から陸の連結国への転換を加速させ、卸売り・小売業など関連産業への波及効果をもたらしている。2025年の中国ラオス鉄道(ラオス区間)の輸送実績は旅客数402万人(前年比5.0%減)、うち越境乗客30万人(1.0%増)、輸出入貨物545万トン(14.0%増)であった。

農業はキャッサバ、ゴム、熱帯果物などといったコメ以外の換金作物に対する堅調な外需に支えられ、2025年は2.9%の成長を記録した。一方で、同部門は構造的課題に直面している。気候変動の影響や灌漑インフラの未整備に加え、近隣国との賃金格差を背景とする労働力の国外流出が、人手不足と労働コスト上昇を招き、生産性向上の制約となっている。

第2次産業では発電、鉱業、輸出向け製造業が総じて堅調に推移し、経済成長を下支えした。特に電力部門では、豊富な降雨と新規発電設備の相次ぐ稼働を背景に発電量が大幅に増加し、総発電量は5万6,000ギガワット時(前年比5.8%増)に達した。電力輸出はラオスにとって重要な外貨獲得源として機能している。2025年には、ナムサム3水力〔156メガワット(MW)〕、モンスーン風力(600MW)、ラオス北部太陽光(1,000MW)、セーバンファイ太陽光(50MW)などの発電施設が相次いで商業運転を開始した。さらにベトナム向けのサワン1風力(300MW)およびチュオンソン風力(600MW)も一部送電を開始した。また、2025年5月にはカーボンクレジットに関して包括的な政府令が発布された。国際再生可能エネルギー電力証書(I-REC)の発行とあわせて、クリーン電力の環境価値を市場化する新たな収益モデルの導入が進展している。

製造業では、電気部品、とりわけ太陽光パネル関連の輸出向け生産が好調を維持した。その背景には、米国の関税措置を見越した駆け込み需要がある。一方、鉱業では、カリウムやレアアースの生産が大幅に伸びたが、かつて主要品目であった金や銅の既存資源が枯渇に近づいている。政府は同分野におけるプロジェクトの監督強化や国内での加工義務化を進めている。

2025年の最大の成果は長期化した高インフレの沈静化である。インフレ率は2023年の41.3%から、緊縮的な財政・金融政策の実施により、2025年には7.7%まで大幅に低下した。現地通貨キープの対米ドル相場が年間0.6%上昇するなど為替レートも安定し、輸入インフレの抑制に寄与した。財政面では、付加価値税(VAT)の税率を7%から10%へ戻したことや電子徴税システム「TaxRIS」の導入による税務行政の改善など、積極的な歳入動員策が功奏した。その結果、2025年の財政収支は対GDP比2.7%、経常収支は11.9%の黒字を記録した。

もっとも、こうしたマクロ指標の改善にもかかわらず、経済の基礎には深刻な脆弱性が残る。2025年末の公的債務残高は名目GDPの拡大による分母効果により対GDP比82%まで低下したものの、引き続き債務返済に困窮している。利払いは総支出の19%を占め、財政構造を大きく圧迫している一方、教育・保健など人的資本への投資は10%にとどまる。さらに、2026年から2029年にかけて年平均約13億ドルの対外債務返済が見込まれており、今後の成長の重荷となることが懸念される。

こうした中、ラオス中央銀行(BOL)はマクロ経済の安定維持に向け、2025年もキープの利用促進と外貨の国内還流強化策を継続した。外貨収入の一定割合の国内送金義務化や強制的な両替の徹底により、企業負担は増大したものの、外貨の還流率は従来の2割前後から7割超へと大きく改善した。これにより、外貨準備高の積み増し(2025年末時点で35億ドル、輸入カバー率4.2カ月分)に寄与した。

一方、過去3年間にわたる高インフレの累積的な影響により、家計の購買力は大きく低下した。名目賃金の上昇は依然として物価上昇に追いついておらず、さらにタイなどの近隣諸国との大きな賃金格差が労働力流出の主因となっている。タイの最低賃金はラオスの約2.7倍に達しており、国外への大規模な労働移動が続いている。主要な移住先であるタイでは、2025年2月時点でラオスからの正規労働者数が32万4,000人を超え、未登録労働者を含めると40万人以上に上ると推定されている。また、韓国への出稼ぎも農業の季節労働を中心に急増し、前年から2倍以上となる約1万7,000人に達した。

貿易

鉱物・電力・工業製品が輸出を牽引

ラオス商工省によると、2025年のラオスの輸出額(通関ベース)は124億9,000万ドル(前年比25.8%増)、輸入額は99億600万ドル(18.1%増)となり、貿易黒字は25億8,400万ドルに達した。前年に引き続き輸出入ともに二桁の成長を維持しており、特に輸出の伸びが輸入を上回ったことで黒字幅が拡大した。もっとも、内陸国であるラオスは近隣諸国との間で正式な通関手続きを経ることがない小規模な国境取引も依然として活発であり、実際の貿易額、特に輸入額は統計値を上回る可能性がある。

品目別にみると、鉱物が最大の輸出品目となり、輸出額は34億5,800万ドル(前年比27.6%増)だった。このうち、金が12億2,700万ドル(65.2%増)と大幅に増加した。輸出先はオーストラリア向けが6億7,100万ドルで最大となり、スイス向けが1億8,500万ドル、タイ向けが1億5,100万ドル、中国向けが1億1,500万ドルと続いた。なお、金の輸出には、ラオス国内の金鉱山で採掘された金に加え、貴金属精錬所において輸入した未加工金を精製・再鋳造した後に再輸出したものが含まれているほか、原産地や流通経路が不透明な金取引が含まれている可能性にも留意が必要である。このほか、カリウムが9億400万ドル(9.0%増)、銅が5億7,700万ドル(21.5%増)と堅調に推移した。一方、鉄鉱石は国際市況や需要動向の変化を背景に1億5,600万ドル(6.0%減)へ減少した。

電力の輸出額は28億3,200万ドル(前年比6.7%増)であった。新規発電所の稼働や豊富な雨量により、主要輸出先であるタイ向け(23億3,900万ドル、2.7%増)、ベトナム向け(2億4,900万ドル、57.2%増)、カンボジア向け(2億2,700万ドル、8.2%増)が引き続き輸出を支えた。

工業製品の輸出額は23億4,000万ドルと、前年の10億6,200万ドルから2.2倍に拡大した。特に電気機器およびその部品は16億6,900万ドルと前年比2.9倍に急増した。これは、米国向けの太陽光パネル関連製品の生産拠点が国内で本格稼働したこと、家具製品などの製造業においてサプライチェーン移転が進展したことが背景にある。

農畜産物の輸出額は19億3,100万ドルで、前年の16億3,000万ドルから18.5%増加した。ラオス経済における主要な外貨獲得源としての地位を強化している。天然ゴムは一次産品で最大のシェアを占め、輸出額は5億ドル(前年比11.1%増)となった。輸出先は中国向けが3億900万ドル、ベトナム向けが1億8,400万ドルだった。また、キャッサバは4億3,300万ドル(15.7%増)で、主にタイ(3億8,600万ドル)での加工需要に対応して輸出された。コーヒー豆は2億1,600万ドル(52.1%増)となり、ベトナム(1億3,400万ドル)とタイ(5,400万ドル)が主要市場である。生きた牛・水牛は1億8,800万ドル(84.7%増)で、大半がベトナム向けであった。木材・木製品・パルプ・紙の輸出は7億5,700万ドル(0.4%増)とほぼ横ばいで推移した。このうち、中国向けのパルプ・紙製品が6億7,700万ドルを占め、中国向けの主要品目の1つである。加工食品の輸出額は7億5,000万ドル(1.1%増)となった。主な品目では、ベトナム向けを中心とした砂糖が2億2,900万ドル(2.0%減)、中国やベトナム向けのタピオカでん粉が2億2,500万ドル(15.5%増)となった。また、縫製・靴製品の輸出額は4億2,000万ドル(12.7%増)となり、前年の減少傾向から回復した。

輸出を国・地域別に見ると、最大の輸出先はタイで、38億7,800万ドル(前年比17.1%増)となり、全体の31.1%を占めた。主な輸出品目は電力(23億3,900万ドル、2.7%増)で、このほかキャッサバ(3億8,600万ドル、14.2%増)、電気機器およびその部品(2億4,400万ドル、63.0%増)が続いた。中国向けは2番目に多く、33億2,700万ドル(22.3%増)となった。品目別では、カリウムが8億1,700万ドル(52.1%増)と大幅に増加し、パルプ・紙製品の(6億7,700万ドル、5.2%減)を上回り最大の輸出品目となった。一方で、銅は3億4,200万ドル(16.9%減)と減少した。中国向け輸出拡大には、中国ラオス鉄道による物流網の改善も大きく寄与している。次いで、ベトナム向けは22億9,700万ドル(7.1%増)となった。品目別では、電気機器およびその部品が4億5,100万ドル(52.8%増)で最大となり、次いで電力が2億4,900万ドル(57.2%増)、砂糖が2億2,900万ドル(0.3%減)となった。ベトナム向け電気機器およびその部品の輸出増加は、ラオスで製造された太陽光パネル関連製品がベトナムの製造・輸出ネットワークに組み込まれている実態を反映している。

また、米国向け輸出が8億8,500万ドル(前年比3.1倍)と大幅に増加した。内訳では、太陽光パネル関連製品を含む電気機器およびその部品が6億9,300万ドル(10.6倍)と全体の78.3%を占めた。これに家具関連製品(5,600万ドル、31.2%減)、衣類(2,950万ドル、17.0%増)が続いた。太陽光パネル関連製品の米国向け輸出について、2025年8月から導入された相互関税を前にした駆け込み出荷が押し上げたとみられる。

輸入額は前年比18.1%増、未加工金の輸入急増が押し上げ

輸入品目別では、車両および部品は13億6,800万ドル(前年比24.8%増)と大きく増加した。特に、大規模農業投資の拡大を背景に、トラクターの輸入が1億5,600万ドル(90.2%増)に達し、農業分野における機械化の進展を示した。

化石燃料の輸入額は13億6,100万ドル(前年比5.4%減)となった。ラオス政府が2022年の燃料不足問題以降に推進してきた電気自動車(EV)普及政策に加え、国際原油価格の軟化が輸入額の減少に寄与したとみられる。電気機器およびその部品は13億1,100万ドル(3.2%増)と小幅な増加にとどまった。これは、ラオス国内で本格稼働した太陽光パネル製造事業などを背景に、生産設備や関連部材の輸入需要の高まりによるものとみられる。

2025年に最も大きく増加した輸入品目は未加工金で、輸入額は8億2,000万ドル(前年比4.0倍)に達した。このうち89.2%にあたる7億3,300万ドル(5.9倍)をタイから輸入した。背景には、ラオス国際貴金属精錬所が国際基準(LBMA)に準拠した精製能力を確立したことで、輸入した粗金などを精製・再輸出する貴金属加工拠点としての機能を強化したことがある。また、キープ安を背景とした国内の資産保全需要や宝飾加工向け需要の拡大も輸入増加の一因と考えられる。一方、未加工金取引を巡っては原産地や流通経路の不透明性が国際的に指摘されており、輸入急増の背景には精製・加工需要以外の要因も含まれている可能性がある。一方、電力の輸入額は1億700万ドル(39.7%減)と大幅に減少した。安定した降雨により、国内水力発電量が回復したことが主な要因である。

輸入を国・地域別に見ると、最大の輸入先であるタイからの輸入額は45億8,000万ドル(前年比28.0%増)となり、全体の46.2%を占めた。ただし、この増加は主に未加工金の輸入拡大によるところが大きい。2番目に多い中国からの輸入額は32億8,100万ドル(10.1%増)で、全体の33.1%を占めた。中国ラオス鉄道による物流効率の向上を背景に、中国は引き続き重要な物資供給国としての地位を強化している。品目別では、電子機器および部品が4億3,400万ドル(55.5%増)、EVを中心とする車両が4億3,000万ドル(0.1%減)となった。地理的近接性を生かした生産ネットワークの構築が進展し、両国間のサプライチェーンの統合が進みつつある。次いで、ベトナムからの輸入額は8億9,900万ドル(25.7%増)となった。特に、工業用原材料である化学製品の輸入額が3億4,100万ドルと前年比2.2倍に増加した。

表1-1 ラオスの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物 2,709 3,458 27.7 27.6
カリウム 830 904 7.2 9.0
743 1,227 9.8 65.2
475 577 4.6 21.5
鉄鉱石 166 156 1.3 △ 6.0
電力 2,655 2,832 22.7 6.7
工業製品 1,062 2,340 18.7 120.2
電気機器およびその部品 566 1,669 13.4 194.8
農畜産物 1,630 1,931 15.5 18.5
天然ゴム 450 500 4.0 11.1
キャッサバ 374 433 3.5 15.7
木材・木製品・パルプ・紙 755 757 6.1 0.4
加工食品 741 750 6.0 1.1
縫製・靴製品 373 420 3.4 12.7
合計(その他含む) 9,926 12,490 100.0 25.8

[出所]ラオス商工省輸出入統計

表1-2 ラオスの主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
車両および部品 1,096 1,368 13.8 24.8
車両(二輪・トラクター除く) 804 939 9.5 16.8
トラクター 82 156 1.6 90.2
化石燃料 1,439 1,361 13.7 △ 5.4
ディーゼル 1,061 1,040 10.5 △ 1.9
電機機器および部品 1,271 1,311 13.2 3.2
農畜産物・加工食品 857 950 9.6 10.8
飲料 237 224 2.3 △ 5.4
未加工金 205 820 8.3 299.7
鉄および鉄製品 519 581 5.9 11.9
木材・木製品・パルプ・紙 467 456 4.6 △ 2.5
繊維製品および原料 254 334 3.4 31.3
プラスチックおよびその製品 280 299 3.0 6.6
電力 178 107 1.1 △ 39.7
合計(その他含む) 8,388 9,906 100.0 18.1

[出所]ラオス商工省輸出入統計

表2 ラオスの主要国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 9,156 11,073 88.7 20.9 7,813 9,347 94.4 19.6
日本 105 118 0.9 12.3 151 166 1.7 10.1
中国 2,720 3,327 26.6 22.3 2,981 3,281 33.1 10.1
韓国 26 21 0.2 △ 19.5 83 98 1.0 18.4
香港 82 117 0.9 41.6 18 34 0.3 86.6
台湾 12 6 0.0 △ 50.8 15 20 0.2 35.8
ASEAN 5,730 6,623 53.0 15.6 4,481 5,672 57.3 26.6
タイ 3,312 3,878 31.1 17.1 3,578 4,580 46.2 28.0
ベトナム 2,145 2,297 18.4 7.1 716 899 9.1 25.7
カンボジア 219 261 2.1 19.1 13 14 0.1 6.6
シンガポール 8 91 0.7 974.2 87 99 1.0 14.2
マレーシア 8 31 0.2 288.9 36 35 0.4 △ 0.2
インドネシア 11 25 0.2 121.3 39 29 0.3 △ 25.8
インド 51 179 1.4 250.5 32 29 0.3 △ 9.4
オーストラリア 429 682 5.5 59.0 51 45 0.5 △ 11.7
ロシア 0 1 0.0 330.7 6 5 0.0 △ 20.1
EU27 258 273 2.2 5.8 175 148 1.5 △ 15.6
ドイツ 118 128 1.0 8.8 34 39 0.4 13.9
英国 18 22 0.2 21.3 20 11 0.1 △ 44.7
スイス 166 185 1.5 11.4 74 71 0.7 △ 4.4
米国 284 885 7.1 211.8 242 245 2.5 1.6
合計(その他含む) 9,926 12,490 100.0 25.8 8,388 9,906 100.0 18.1

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。

[出所]ラオス商工省輸出入統計

対内直接投資

対内直接投資額は246億ドル超、鉱業投資が急増

2025年の対内直接投資額(新規登録ベース、グロス、自国投資を含む)は246億7,800万ドル(前年比17.7%増)だった(業種別集計ベースでは255億3,500万ドル)。2025年の特徴は、ラオス資本による国内投資が大幅に拡大したことである。ラオス資本による投資額は216億5,300万ドル(99.1%増)となり、投資総額に占める割合は87.7%に達した。もっとも、これらの数値は認可・登録ベースの投資計画を反映したものであり、今後、全ての案件が実行されるとは限らない点に留意が必要である。

一方、主要な外国資本による投資は総じて減少した。最大の投資国である中国からの投資額は21億2,700万ドル(前年比51.8%減)で、タイからの投資額は7,300万ドル(98.1%減)、ベトナムからの投資額も5億8,300万ドル(54.0%減)と、それぞれ減少した。2024年に大型案件が相次いだ反動やマクロ経済環境を巡る不確実性などが影響した可能性がある。

業種別に見ると、2024年に最大の投資先であった建設業は20億400万ドルとなり、前年比78.2%減少した。一方、鉱業は71億2,100万ドル(前年比6.5倍)に増加し、最大の投資分野となった。

そのほかの主要業種では、卸・小売業・自動車修理業が50億500万ドル(2.9%増)となったほか、科学技術は19億5,700万ドルと前年比5.4倍に増加した。農林水産業も17億1,300万ドル(61.4%増)と堅調に推移した。なお、製造業への投資額は15億7,000万ドルとなり、前年比55.8%増加した。

表3 ラオスの国・地域別対内直接投資〔新規登録ベース、グロス〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注1〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に台湾を加えた合計値。 〔注2〕ラオス企業による対内投資を含む。 〔注3〕2024年は1ドル=2万201キープ、2025年は1ドル=2万1,000キープで算出。
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 20,873 24,632 99.8 18.0
日本 59 1 0.0 △ 98.3
中国 4,412 2,127 8.6 △ 51.8
韓国 148 58 0.2 △ 60.9
ASEAN 16,221 22,430 90.9 38.3
ラオス 10,875 21,653 87.7 99.1
ベトナム 1,267 583 2.4 △ 54.0
タイ 3,907 73 0.3 △ 98.1
カンボジア 89 8 0.0 △ 91.3
マレーシア 60 7 0.0 △ 88.0
インド 12 8 0.0 △ 33.9
オーストラリア 17 3 0.0 △ 79.9
欧州 48 9 0.0 △ 81.7
EU27 44 4 0.0 △ 91.1
フランス 30 3 0.0 △ 90.8
英国 2 2 0.0 △ 4.1
北米 16 8 0.0 △ 51.2
米国 9 7 0.0 △ 21.4
ロシア 4 2 0.0 △ 62.8
合計(その他含む) 20,968 24,678 100.0 17.7

〔注1〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に台湾を加えた合計値。
〔注2〕ラオス企業による対内投資を含む。
〔注3〕2024年は1ドル=2万201キープ、2025年は1ドル=2万1,000キープで算出。

〔出所〕ラオス商工省企業登録管理局

表4 ラオスの業種別対内直接投資〔新規登録ベース、グロス〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注1〕ラオス企業による対内投資を含む。 〔注2〕2024年は1ドル=2万201キープ、2025年は1ドル=2万1,000キープで算出。
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱業 1,096 7,121 27.9 549.5
卸・小売・自動車修理 4,864 5,005 19.6 2.9
建設 9,187 2,004 7.8 △ 78.2
科学技術 361 1,957 7.7 442.6
農林水産業 1,061 1,713 6.7 61.4
製造 1,008 1,570 6.1 55.8
不動産 235 1,384 5.4 488.8
運輸・倉庫 244 832 3.3 241.5
ホテル・レストラン 337 723 2.8 114.6
電気・ガス 678 689 2.7 1.7
金融・保険 789 455 1.8 △ 42.3
情報通信 42 365 1.4 763.5
エンターテイメント 109 227 0.9 107.7
健康医療 55 139 0.5 154.5
教育 562 91 0.4 △ 83.8
上下水道、廃棄物処理 11 12 0.0 9.3
その他 329 1,245 4.9 278.8
合計 20,968 25,535 100.0 21.8

〔注1〕ラオス企業による対内投資を含む。
〔注2〕2024年は1ドル=2万201キープ、2025年は1ドル=2万1,000キープで算出。

〔出所〕ラオス商工省企業登録管理局

大型インフラ・資源開発案件が進展、主要国の対ラオス投資動向

2025年のラオス企業による主な投資案件を見ると、物流、エネルギー、金融、資源加工などの戦略分野における大型プロジェクトへの投資規模が拡大している。

物流インフラ分野では、PTLホールディングス(PTL Holdings)が主導する建設費66億ドルの「ラオス・ベトナム鉄道」が進展した。2025年末までにラオス区間の資金調達、技術調査、環境影響評価の90%が完了し、2026年3月のコンセッション契約が締結された。また、ビエンチャン・ハノイ高速道路計画では、第2区間(203.8キロ)について、ナムター建設コンソーシアムが19億ドルの投資を決定し、2025年10月に着工した。さらに、ポンサワン・グループ(Phongsavanh Group)は、首都ビエンチャンとベトナム国境にあるフアパン県を結ぶ総延長450キロの高速道路計画について、調査・設計に着手した。これらの事業は、中国ラオス鉄道に加え、ベトナムとの物流インフラの整備を地場資本主導で進めるものとして注目される。

エネルギー分野では、ポーンサック・グループ(Phonesack Group)がセコン県で40億ドルを投じ、発電容量1,800MWの石炭火力発電所建設を着工した。電力輸出先をカンボジアへ多角化する狙いがある。また、PTLホールディングスは年間処理能力150トン規模の金精錬所を建設した。金融分野では、金を裏付け資産とするラオス・ブリオン銀行(Lao Bullion Bank)が本格的に事業を開始した。スタートアップ分野では、配車サービス大手ロカ(LOCA)が、民間インフラ開発グループ(PIDG)から250万ドルの出資を受け、EV充電ネットワークの構築を加速させた。グリーン・インフラへの新たな民間資金流入の先例となった。

中国企業による対ラオス投資は、「一帯一路」構想の進展を背景に、インフラ開発、発電、資源開発、不動産開発から、高度な産業集積とクリーンエネルギー、そしてデジタル化を伴う投資へ変化している。エネルギー分野では、中国広核能源国際(CGN Energy International)が1,000MW規模の山岳太陽光発電所を建設しているほか、ラオス国家送電網(EDL-T)は中国との送電連係強化に向けた越境送電線整備を進めている。鉱業・資源加工分野では、ラオ開元鉱業(Lao Khaiyuan Mining)が2025年8月、カムアン県で総額4億ドル規模の「循環型産業パーク」の建設に向けた覚書をラオス工業商業省と締結した。年間100万トンのカリウム生産に加え、太陽光発電設備や臭素、硫酸カリウムなどの化学製品製造施設の整備が計画されている。また、アジア・ポタッシュ(Asia-Potash)は100万トン級のカリウム生産ラインを稼働させるとともに、複数企業との間で総額10億8,800万ドルに上る16件の関連プロジェクトに調印した。臭素化学品や塩素アルカリ関連製品を製造する工業団地を整備し、採掘から化学製品製造までを一体化した産業集積の形成を目指している。

物流分野では、ラオス北部ルアンパバーン県シェングン郡において、ラオス政府とLCロジスティックス(LC Logistics)などが総額3億ドル規模の「ルアンパバーン・ドライポート」開発に向けた実現可能性調査を2025年2月から開始した。

観光分野では、中国のホテルチェーンによる進出も相次いでいる。華住集団(H World Group)は2025年5月にラオス企業3社と提携し、「JIホテル」「インターシティホテル(Intercity Hotel)」「オレンジホテル(Orange Hotel)」の各ブランドをビエンチャンおよびルアンパバーンで展開することで合意した。また、錦江国際集団(Jin Jiang International)もルアンパバーンでホテル開発を進めている。農業分野では、アジアタバコ産業グループ(Asian Tobacco Industry Group)が2025年1月、南部のチャンパサック県および北部のウドムサイ県の26万7,000ヘクタールでタバコ、サトウキビ、バナナなどの栽培・加工する統合農業プロジェクトの協力協定を中国企業2社との間で締結した。

タイ企業は引き続き、電力分野において大きな存在感を示している。ラチャグループ(Ratch Group)などが出資するセコン4A・4B水力(総発電容量355MW)や、ガルフ・デベロップメント(Gulf Development)が参画するパクライ水力(770MW)の建設が進展した。また、2025年2月にPSG コーポレーション(PSGC)とラオス電力公社(EDL)は、既存の水力発電設備に太陽光発電や風力発電を組み合わせ、揚水発電を含むエネルギー貯蔵システムを導入する可能性について共同で調査を行うことで合意した。製造業では、食品大手企業ベタグロ(Betagro)が約6億5,000万バーツ(約31億8,500万円、1バーツ=約4.9円)を投じて飼料工場の拡張を進めた。小売り分野では、CPオール(CP ALL)が展開するコンビニエンスストア「セブン‐イレブン」の店舗網を拡大した。2023年9月の1号店開業以降、ビエンチャン、パクセー、ルアンパバーンなど主要都市を中心に出店を進め、2025年末時点で26店舗となった。

ベトナム企業による投資は再生可能エネルギー、物流、鉱業分野を中心に拡大している。再生可能エネルギー分野では、T&Tグループによるサワン1風力発電所(300MW、投資額7億6,800万ドル)およびベトナム・ラオスエネルギー投資電力(Viet Lao Energy Investment and Power)によるチュオンソン風力発電所(600MW、投資額10億ドル)が一部の商業運転を開始した。物流分野では、通信大手企業ユニテル(Unitel)が資本金6億ドルでユニテル・ロジスティックス(Unitel Logistics)を設立した。国内3カ所の物流ハブと6カ所の国境保税倉庫を整備し、デジタル技術を活用したサプライチェーン管理体制の構築を進める。鉱業分野では、ベトフオン・グループ(Viet Phuong Group)によるセコン県でのボーキサイト採掘・アルミナ精錬事業(総額10億ドル)やベトナム化学グループ(Vinachem)によるカムアン県のカリウム鉱山開発(総額5億ドル)の再開が決定された。

対日関係

対日輸出は前年比12.3%増、コーヒーや電気機器が伸長

2025年の日ラオス間の貿易は、ラオスの貿易総額全体が拡大する中で堅調に推移した。日本向け輸出額は1億1,815万ドル(前年比12.3%増)、日本からの輸入額は1億6,567万ドル(10.1%増)となった。一方、日本向け輸出は輸出総額の0.9%、日本からの輸入は輸入総額の1.7%にとどまり、日本市場の位置付けは依然として限定的である。

対日輸出を品目別に見ると、農産物および食品が1,880万ドル(前年比38.7%増)と大きく伸びた。このうちコーヒー豆は、2024年の111万ドルから2025年には262万ドルへ増加し、前年比2.4倍となった。医薬用植物を含む香辛料の輸出も1,113万ドル(91.5%増)と大幅に拡大した。最大の輸出品目である縫製・靴製品は4,4,687万ドル(12.2%増)となり、対日輸出全体の39.7%を占めた。また、ケーブルハーネスなどの電気製品および部品も1,625万ドル(38.0%増)となり、ラオス国内で組み立て・加工された製品の対日輸出が堅調に推移した。

日本からの輸入では、車両および部品が1億1,704万ドル(前年比4.9%増)となり、輸入総額の70.6%を占めた。このうち自動車は1億1,263万ドル(6.5%増)で、ラオス市場における日本車への根強い需要を反映し、引き続き対日輸入の中心品目となっている。このほか、木材パルプ・古紙は498万ドル(86.2%増)、プラスチック製品は384万ドル(37.4%増)と、それぞれ大幅に増加した。

表5-1 ラオスの対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:万ドル, %)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
縫製・靴製品 4,177 4,687 39.7 12.2
2,578 2,871 24.3 11.4
衣類 1,599 1,816 15.4 13.6
化学品 1,930 1,477 12.5 △ 23.5
農産物および食品 1,355 1,880 15.9 38.7
コーヒー豆 111 262 2.2 136.8
バナナ 928 1,113 9.4 19.9
香辛料 132 253 2.1 91.5
電気機器および部品 1,177 1,625 13.8 38.0
化粧品・香水 957 914 7.7 △ 4.5
木製品 215 192 1.6 △ 10.4
合計(その他含む) 10,525 11,815 100.0 12.3

[出所]ラオス商工省輸出入統計

表5-2 ラオスの対日主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:万ドル, %)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
車両および部品 11,159 11,704 70.6 4.9
自動車 10,576 11,263 68.0 6.5
トラクター 276 129 0.8 △ 53.2
電気機器およびその部品 1,125 1,170 7.1 4.0
電気製品および部品 622 756 4.6 21.4
ケーブル 200 186 1.1 △ 6.9
縫製・製靴原料 1,288 1,388 8.4 7.8
木材パルプ・古紙 267 498 3.0 86.2
プラスチック製品 280 384 2.3 37.4
合計(その他含む) 15,051 16,567 100.0 10.1

[出所]ラオス商工省輸出入統計

一方、貿易額が堅調に拡大したのとは対照的に、日本からの対内直接投資は大きく減少した。投資額は2024年の5,870万ドルから2025年には100万ドルへと縮小し、前年比98.3%減となった。そうした中でも、環境関連企業TSBグリーンネックス(TSB Greenex)がチャムパサック県の経済特区(SEZ)において、水素製造設備および水素焙煎コーヒー工場の建設を開始した。操業開始は2026年中を予定している。同事業では、再生可能エネルギー由来の電力を利用して製造した水素をコーヒー焙煎工程に活用する。化石燃料を使用しない脱炭素型の生産モデルとして、高付加価値コーヒー市場をターゲットとしている。今後の日ラオス経済関係のさらなる発展に向けては、投資の活性化が課題となっている。

投資環境

対外環境の変化と「自主独立経済」への模索

2025年のラオスの投資環境は、二大経済圏である中国と米国が打ち出した対照的な通商政策の影響を大きく受けた。中国は2024年12月、一部の後発開発途上国(LDC)を対象に「全品目ゼロ関税措置」を導入し、ラオス産品の対中輸出環境が大きく改善した。これにより、従来は最恵国待遇(MFN)税率で20%の関税が課されていた天然ゴムをはじめ、農産物や鉱物資源のコストが低下した。さらに2025年11月にはラオス産ドリアンの生鮮輸入が解禁され、中国向け輸出額は過去最高水準に達した。一方で、米国はドナルド・トランプ政権の下、2025年8月にラオスに対し、ASEAN域内でも高水準となる40%の相互関税を課した。この措置は、急成長していた太陽光パネル製造業を直撃し、大きな影響を与えた。

また、投資環境上の懸念材料として、2025年2月にマネーロンダリング(資金洗浄)対策やテロ資金供与を監視する国際組織の金融活動作業部会(FATF)がラオスを再び「グレーリスト(強化モニタリング対象国)」に掲載したことが挙げられる。ラオスは2017年に同リストから一度除外されたが、今回の評価では、カジノやSEZにおけるリスクベース監督の不十分さや透明性の欠如に加え、国際組織犯罪に対する法執行の脆弱性が指摘された。この再掲載は、国際金融取引コストの上昇を通じて、投資活動に一定の制約を与える可能性がある。

さらに、2026年に入り、中東情勢の緊張に伴うエネルギー価格の上昇は経済成長の下押しとインフレ圧力の高まりをもたらすリスク要因となっている。加えて、2026年11月に予定されているLDC卒業はラオスの国際的地位の向上につながる一方、特恵関税など各種優遇措置の縮小・廃止を伴う重要な転換点となる。

総じて、ラオスは豊富な再生可能エネルギーや鉱物資源を有し、高い成長潜在力を備えているものの、対外債務の負担やガバナンス上の課題を抱えており、外部ショックへの対応余地には制約がある。2026年には第10期社会経済開発5カ年計画が始動し、資源や対外債務に依存した成長モデルから脱却し、「自主独立経済」の構築を目指す方針が掲げられている。また、政府は対外債務を2030年までに対GDP比70%未満へ引き下げる目標や、行政のデジタル化を通じたガバナンス強化も計画している。これらの政策や制度改革の成否がラオス経済の持続的成長とマクロ経済の安定を実現できるかどうかを決定づける重要な鍵となる。

基礎的経済指標

〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 3.7 4.0 4.4
1人当たりGDP (米ドル) 1,977 2,055 2,288
消費者物価上昇率 (%) 31.2 23.1 7.7
失業率 (%) n.a. n.a. n.a.
貿易収支 (100万米ドル) 1,180 1,538 2,584
経常収支 (GDP比、%) 2.7 4.3 11.4
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 1,770 2,213 n.a.
公共・公的保証債務残高(グロス) (GDP比、%) 116 94 92
為替レート (1米ドルにつき、ラオス・キープ、期中平均) 17,689 20,167 n.a.

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率:ADB
1人当たりGDP、経常収支、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
消費者物価上昇率:ラオス計画投資省
失業率:ラオス労働社会福祉省
公共・公的保証債務残高:世界銀行