大連市、化学工業向けAIイノベーション拠点を設立
(中国)
大連発
2026年09月07日
中国・大連市で8月31日、「智能化工(スマート化学工業)イノベーションセンター」の発足式が開催された。あわせて、中国科学院大連化学物理研究所(以下、大連化物所)が主導する化学工業向け人工知能(AI)大規模モデル「智能化工大模型3.0 Pro」の発表や、大連理工大学による「智能分子工程交叉研究院(スマート分子工学学際研究院)」の設立開始式も行われた。大連市はAIと化学工業の融合を通じた産業高度化を進める。
石油化学産業は大連市の基幹産業の1つとされ、大連高新技術産業園区によると、今回設立された「智能化工イノベーションセンター」は中国初の化学工業分野に特化したAIイノベーションプラットフォームと位置付けられる。英歌石科学城(注1)を拠点に、大連化物所や大連理工大学の研究開発力に加え、大連市が整備を進めるAIコンピューティング基盤を活用し、分子設計からロボット実験、仮想パイロット試験、生産設備の最適化までをつなぎ、研究成果の産業化を目指すとした。
同日発表された「智能化工大模型3.0 Pro」(注2)は、大連化物所が科大訊飛(アイフライテック、注3)、阿里雲計算(アリババクラウドコンピューティング、注4)などと共同開発した。専門知識の理解、マルチモーダル情報認識、複雑な技術課題の推論機能を備え、従来の質問応答型AIから、計画立案や結果検証までを支援するモデルへと進化したという。同モデルは既に300社以上の化学工業企業や大学、研究機関が登録・利用しており、API(Application Programming Interface)累計利用回数は1,400万回を超えた。
さらに、大連理工大学は「AI+化学工学+材料」の融合研究を進める「智能分子工程交叉研究院」の設立を開始した。同研究院は、スマート分子材料分野の基盤技術開発に取り組み、「分子設計・合成・製造・評価」の全工程のスマート化を推進し、新技術の実用化までの期間短縮を目指す。
AIの活用は石油化学分野にも広がっている。中国石油天然気集団(CNPC)が推進する大連石化(西中島)煉化一体化プロジェクトでは、「リーディング級スマート工場」の建設を掲げ、生産管理、設備保全、エネルギー・炭素排出管理などへのAI導入を進めている。大連市は、既存の石油化学産業と研究開発基盤を生かし、エネルギー・化学分野におけるイノベーション・産業集積拠点の形成を目指すとしている。
遼寧省は2025年6月に「遼寧省AIイノベーション発展促進実施プラン」を公表し、2027年までに瀋陽市と大連市を中心としたAIイノベーション・応用における新たな拠点の形成を目指すとした。今回の智能化工イノベーションセンターの発足などは、同プランに基づく取り組みの一環とみられる。
(注1)大連英歌石科学城は、大連ハイテク産業パーク西部にあるイノベーションセンターで、2024年10月に運用を開始した。総面積は44.3平方キロメートル。25の重点研究分野に対応する398の研究ユニット(ラボ)の設置が決定している。
(注2)智能化工大模型3.0 Proは、中国科学院大連化学物理研究所が科大訊飛、阿里雲計算などと共同開発した化学工業向け大規模AIモデルで、「大規模AIモデル」「AIエージェント」「専門ツール」「応用シーン」の4層構造を採用している。1.0 Pro版は華為および大連理工大学との共同開発により2024年3月に、2.0 Pro版は科大訊飛などとの共同開発により2025年5月に、それぞれ公開された。
(注3)科大訊飛は、1999年に設立された音声認識技術およびAI技術を中核とする上場企業。
(注4)阿里雲計算は、2009年に設立されたアリババグループ傘下のクラウドコンピューティング・AIサービス企業。
(李穎)
(中国)
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