高度外国人材の最低給与基準額を月額で約3倍に引き上げ、2027年3月から

(ロシア)

調査部欧州課

2026年08月07日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7月26日、連邦法第241-FZ号「ロシア連邦における外国人の法的地位に関する連邦法の改正について」に署名した。これにより、2027年3月から、外国人労働者のカテゴリーの1つである高度熟練専門家(High Qualified Specialist:HQS)の最低月額給与が現行の四半期当たり75万ルーブル(約143万円、1ルーブル=約1.9円)から1カ月当たり71万7,000ルーブルへ引き上げられる(添付資料表参照)。通常より低い金額が適用されてきた研究者、IT企業の一部人材、医療・教育・科学分野の従事者などについても35万8,500ルーブルに引き上げられる。また、基準額は今後、組織のほかの従業員の昇給具合などを基に毎年見直されることとされた。

HQS制度は、ロシア入国に際して査証が必要となる、日本人を含む外国人を対象としており、ロシアの通常の就労許可制度と比べて、多くの優遇措置を受けられる点が特徴だ。HQS向け就労許可の有効期間は最長3年で、個人所得税は一般的な13~22%の税率による累進課税が適用される。さらに、HQSの配偶者や子供などの家族にも居住に関する優遇措置が設けられている。新たな給与基準を満たせない外国人労働者については、HQSをやめ、一般就労許可制度に移行したり、ほかの居住ステータスを取得したりするケースが増えるとみられるが、こうした制度はHQSに比べて複雑で、手続きの完了までに時間を要する傾向がある。

政府は給与基準額を引き上げた理由として、比較的低技能の外国人労働者がHQS制度を通じて国内に流入してくることを防ぐためと説明している。ロシアの投資会社「フィナム」のヤロスラフ・カバコフ戦略担当ディレクターは、今回の措置について、「中間的な」外国人労働者の流入を抑制するとともに、HQS優遇制度の適用対象を絞り込むことで、優遇対象から外れた労働者からの税収の増加を図る狙いがあるとの見方を示している(「モスコフスキー・コムソモレツ」4月10日)。

法案が下院での第1読会を通過した後、在ロシア欧州ビジネス協会(AEB)や米国商工会議所(アムチャム)などの外国企業団体に加え、ロシア産業家企業家連盟(RSPP)、中小企業団体「オポラ・ロシア」などのロシア経済団体が中心となり、給与基準の大幅な引き上げに反対を表明していた。新たな基準を満たせない外国人材は、ロシアでの就労継続が困難になる可能性があるためだ。なお、経済団体側はかねて施行時期の延期も求めていた。結果、新基準の施行日は当初の2026年9月1日から2027年3月1日へ延期された。

ロシア内務省によると、2025年にHQS向けに発給された就労許可件数は7万5,400件に上り、2024年の5万800件から48.4%増加した。HQSの主な出身国は中国やインド、セルビア、トルコであるが、日本および西側諸国からの人材も一定数含まれている。

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