米ホワイトハウス、迂回輸出報告書を発表、AI活用の監視構想を提唱

(米国、中国、日本)

ニューヨーク発

2026年08月18日

米国のホワイトハウスは8月13日、関税回避を目的とした迂回輸出の実態を分析した報告書「The Great Transshipment Scam(大いなる積み替え詐欺)」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

本報告書は、トランプ政権が高関税を課している対象国が、関税率の低い第三国を経由して製品を米国に輸出することで、追加関税の支払いを不正に回避しているケースが存在すると指摘した。特に中国については、1974年通商法301条に基づく対中関税を発動した2018年以降、対中貿易赤字額は減少した一方、第三国を経由した中国産製品の輸入は増加したと分析した。

報告書は、中国製品の迂回輸出の構造やそれによって生じる損失を、定量的・定性的な手法で評価・推計している。例えば、中国産品の積み替えリスクがあると報告書が分析した40超の国・地域を、中国との貿易規模や経済的結び付きの強さに応じて3つのグループに分類した。具体的には、(1)中国関連製品の取扱量が膨大で多様な産業基盤を有する国・地域、(2)原材料の調達拠点や製造拠点などとして中国との深い統合がみられる国・地域、そして(3)積み替えが行われている絶対量は少ないものの、安価な労働力や米国への優遇アクセスなどを背景に、中国からの迂回輸出の拠点になり得る小規模経済国・地域である。日本は(1)のグループに分類された。

また、同報告書は迂回輸出によって生じた関税やGDP、雇用などの損失を算出するための指標として、中国に関連する違法な積み替えの年間総量の推計が必要であるとして、大統領経済諮問会議(CEA)や米国投資銀行大手のゴールドマン・サックス、人工知能(AI)サプライチェーン分析サービスを提供する米スタートアップのアルタナなどによる5つの推計を比較した(注)。

報告書では、これらの分析を踏まえた提言として、貨物や輸送経路などのデータについてAIを活用して分析し、税関・国境警備局(CBP)による監視・執行を支援する「ディテクティブ・ボーダー」の構想を提唱した。関税回避手法が高度化していると指摘した上で、CBPが正当なニアショアリングや外国投資と違法な通過貿易を区別した上で高リスクな貨物を特定し、それらの差し押さえや関税徴収、罰則、および輸入差し止め措置へと結び付けられるようなシステムの必要性を訴えた。

ドナルド・トランプ大統領の通商・製造担当上級顧問を務めるピーター・ナバロ氏は本報告書に関する電話会見の中で、中国は一例にすぎず、40超の国・地域が積み替えに関与し得ることを示すことが報告書の本質であると説明した。そして、米国が新たに高率の関税を他の国・地域に課した場合にも、同様の迂回輸出が生じる可能性があるとの見解を示した。また「ディテクティブ・ボーダー」について同氏は、ホワイトハウスがCBPと連携してプロトタイプの開発に取り組んでおり、2026年中に本格的な運用段階に達すると述べた(通商専門誌「インサイドUSトレード」8月13日)。

(注)推計値は金額ベースで400億ドル(ゴールドマン・サックス)から3,030億ドル(アルタナ)にわたる。なお報告書では、それぞれの調査が異なる分析手法やデータセットを利用していることを前置きしている。

(滝本慎一郎)

(米国、中国、日本)

ビジネス短信 3281e1b603d6621e