資金洗浄防止に向けた細則を改正、2026年11月から段階的に施行
(メキシコ)
調査部米州課
2026年08月13日
メキシコ大蔵公債省(SHCP)は8月7日、連邦違法資金利用防止特定法(LFPIORPI)に関する細則を改正する省令を官報で公布した。今回の改正は、2025年7月のLFPIORPI改正、2026年3月の同法施行規則改正を受け、資金洗浄とテロ資金供与の観点で脆弱(ぜいじゃく)な活動を行う事業者に対する実務上の義務を具体化するもの。2013年の細則制定後、全面的な見直しとしては、2014年と2020年の改正を経て、今回が最も大規模なものとなる。
主な改正点は、対象事業者に対し、従来の顧客確認や報告義務に加え、リスクに応じた包括的な資金洗浄対策・管理体制の構築を求めた点にある。具体的には、リスク評価手法の導入、顧客ごとのリスク分類と取引プロファイル管理、実質的支配者(UBO、注1)および政治的に重要な公的地位を有する者(PEP、注2)の確認強化、内部方針マニュアルの整備、年次研修実施、適切な担当人員の採用プロセス、自動化メカニズム(注3)や監査体制(注4)の整備などが柱となる。対象事業者は、自社の取引、顧客類型、地域、取引チャンネルなどを踏まえたリスク評価手法を整備し、顧客を少なくとも低・中・高リスクに分類する必要がある。顧客の取引プロファイルを設定し、金額、頻度、資金の出所・使途などに照らして通常と異なる取引を検知する体制も求められる。
UBOについては、(1)25%以上の持ち分・議決権を有する自然人、(2)その他の方法で実質的に法人などを支配する者、(3)特定できない場合の最高位管理者、という順序で確認する枠組みが示された。PEPについても、本人に加え一定範囲の親族や関係者が対象とされ、高リスク顧客には追加確認や上位者承認が求められる。内部方針マニュアルには、顧客確認、リスク分類、PEP対応、UBO確認、報告、記録保存、研修、監査などを盛り込む必要がある。
施行は段階的に行い、2026年11月30日に原則施行されるものの、リスク評価、内部方針マニュアル整備、顧客リスク分類、顧客管理、UBO確認などは2027年3月1日が実質的な期限となる。自動化メカニズムの導入期限は2027年6月1日、研修の義務化は2027年以降、監査の義務化は2028年以降(翌年3月末までに報告書提出)とされている。
迅速な事業遂行のため、代表者やUBOなどの資料をあらかじめ整備
進出日系企業、特に自動車産業を中心とする製造業は、LFPIORPIの直接の対象事業者には該当しない場合が多い。しかし、不動産売買・賃貸、通関、法務・会計、公証、リース、車両売買、警備・有価物輸送など、対象事業者のサービス利用者となる場面は多い。今後は、これらの取引先から、法人情報、株主・親会社情報、UBO、資金源、取引目的などの確認を求められる可能性が高まる。日系企業は、メキシコ現地法人の基本資料、代表者権限、資本関係図、UBOに関する説明資料をあらかじめ整備し、契約・通関・不動産案件の遅延を防ぐ対応(注5)が望まれる。
(注1)英語のUBO(Ultimate Beneficial Owner)、LFPIORPIではBeneficiario Controladorと呼び、法人などを最終的に所有・支配する自然人を指す。
(注2)PEP(Politically Exposed Person)は、現在または過去に国内外で重要な公的地位にあった者を指す。
(注3)自動化メカニズムとは、顧客情報や取引情報を継続的に管理し、取引プロファイルからの逸脱、リスク分類、PEP・高リスク顧客、現金・貴金属使用などを監視する仕組みを指す。専用システムに限らず、事業規模・リスクに応じて検証可能な表計算ソフトやデータベースも含まれ得る。
(注4)監査体制とは、対象事業者の資金洗浄対策義務の履行状況や内部管理体制の有効性を毎年検証する仕組みを指す。低・中リスクの場合は内部監査も可能だが、高リスクの場合は独立外部監査人による監査が必要。
(注5)LFPIORPI第21条は、顧客が必要情報・書類の提供を拒否した場合、対象事業者は取引を実行してはならないと定める。このため、取引遅延を避けるには、代表者権限、株主・親会社情報、UBOに関する説明資料などの事前整備が重要となる。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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