ルーマニア、ドナウ川水位低下で国内唯一の原子力発電所を完全停止

(ルーマニア、日本)

ブカレスト発

2026年08月21日

ルーマニア政府は7月31日、深刻な干ばつに伴う電力需給の逼迫を受け、8月を対象とする全国的なエネルギー警戒状態を宣言した。チェルナボダ原子力発電所を運営する国営企業ヌクレアレエレクトリカは、電力供給不足への対応として、モルドバ経由でウクライナからの電力調達を開始し(「ルーマニア・インサイダー」8月3日)、さらに政府は、天然ガス火力発電所を最大限活用するとともに、エネルギー規制庁(ANRE)と送電システム事業者のトランスエレクトリカが、運転許可手続き中の太陽光・風力設備などの早期稼動に向けて準備しているとした。

主要企業や公共部門でも節電対応が広がっている。一部企業では生産ラインの停止などによって電力需要を抑制している。同国に完成車工場を持つルノー・グループ傘下の地場自動車メーカーのダチアと、米国フォードとトルコ財閥コチ・ホールディングの合弁企業のフォード・オトサンは、8月3日からの夏季保守期間中の生産を停止した。政府は、これらの生産停止は電力需要削減に寄与したとしている。また、自治体や公的機関でも照明の減灯・停止などの節電措置が進められている。

背景となっている干ばつによるドナウ川の水位低下は、7月末に過去40年間で最低水準にまで落ち込んだ。そのため水力発電能力が大幅に低下したほか、チェルナボダ原子力発電所の冷却用水確保にも支障が生じた。7月28日には1号機が停止。政府は岩盤爆破やバージ船の沈設による導水対策を実施して2号機の運転継続を図ったが、その後も水位低下は続き、8月13日には2号機も停止となり、国内唯一の原子力発電所が完全に停止した。2基の原子炉は国内電力需要の約2割を担っていた。そのため政府は、太陽光発電と風力発電、ロビナリの予備発電所の稼働、輸入電力、ハイドロエレクトリカが運営する同国内の水力発電所によって不足分を補うと8月14日の会見で発表した。また、エネルギー省のクリスティアン・ブショイ次官は8月17日、ロビナリ石炭火力発電所の4号機が稼働を開始することを明らかにした(「ディジ24」8月18日)。

ジェトロが在ルーマニア日系企業にヒアリングを行ったところ(2026年8月17日実施)、現時点で具体的な影響は確認されていない。補助金を活用して工場に導入した太陽光自家発電が電力不足への対応力向上に役立ったとの声も聞かれた。一方で、原子力発電所停止の長期化や輸入電力への依存拡大が続けば、電力価格の上昇や大口需要家を対象とした電力使用の制限措置が導入される可能性もあり、動向が注視される。

(本吉美友)

(ルーマニア、日本)

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