ユーチューバー「ミスタービースト」ブランドの商標紛争が一般裁判所へ

(EU)

デュッセルドルフ発

2026年08月10日

世界でも有数のチャンネル登録者数を持つユーチューバー「ミスタービースト」の関連会社ビースト・ホールディングスが7月28日、自社ブランド「MRBEAST」のEU商標出願に対する拒絶決定を不服として、EU司法裁判所(CJEU)の一般裁判所(下級審に相当)に提訴した(事件番号T-471/26)。

問題となったのは、ビースト・ホールディングスが2023年に出願した「MRBEAST」の商標で、スナック菓子、チョコレート、シリアル、飲料などの食品分野を対象としていた。しかし、ベルギーの権利者から、先行商標「BEASTIE BURGERS」との抵触を理由に異議申し立てが行われた。

EU知的財産庁(EUIPO)は、両商標が食品関連分野において消費者に混同を生じさせるおそれがあるとして「MRBEAST」のEU商標出願を拒絶した。ビースト・ホールディングス側は、ミスタービースト氏の世界的な知名度を理由に混同は生じないと主張したが、EUIPOは、ミスタービースト氏が著名なインフルエンサーであること自体は否定しなかったものの、ベネルクス地域の一般消費者の大部分が「MRBEAST」を見て直ちに同氏を想起する程度の周知性が立証されているとは認めなかった。

ミスタービースト社は動画配信事業にとどまらず、食品、飲食、アパレル、ゲームなどさまざまな分野へブランド展開を進めている。本件は、インフルエンサーやクリエーターによるブランド事業の拡大が進む中、著名な個人名の周知性が商標の混同可能性の判断にどのような影響を与えるかという点で注目される。CJEUは過去の「MESSI」の商標が争点となったケースにおいて、サッカー選手リオネル・メッシ氏の高い知名度を踏まえ、「MESSI」を見た消費者が同氏を想起することを理由の1つとして「MASSI」という商標との混同可能性を否定し、出願を認めた。本件でも、「ミスタービースト」の知名度自体には争いがないものの、その認知がベネルクス地域の一般消費者全体にどの程度浸透していると評価されるかが、争点の1つとなりそうだ。

(吉森晃)

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