オーストラリア、AI行政の司令塔「Office of AI」を新設、AI規制の国家基準策定へ
(オーストラリア)
シドニー発
2026年07月21日
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は7月15日、ニューサウスウェールズ州のシドニー大学で演説し、人工知能(AI)技術が経済・社会に与える影響の拡大を踏まえた国家的な対応方針を示した(オーストラリア政府メディアリリース
)。
政策の柱となるのは、首相・内閣府内に新設する機関「Office of AI」で、同機関はAI行政の司令塔として関係省庁との連携を通じてAI政策を統括し、全国統一のAI規制の国家基準策定を主導する。政府は8月に開催される国家内閣会議で各州・準州からの合意を得た上で、2027年初めの法案提出を目指す。
こうした動きの背景には、オーストラリアのアーティストによる作品の著作権保護や、AIインフラ整備に伴う資源消費の拡大といった課題がある。著作権を巡っては、米国のAIスタートアップ企業であるアンソロピックが、オーストラリアでAIモデル開発やデータセンターなど関連インフラに投資する条件として、著作権に関する法的枠組みの明確化を求めている。また、音楽業界では、創作物をAIの学習に利用する際の利用許諾の義務化や適正な対価の支払いを求めるなど、著作権保護の強化を訴えている。
一方、AI向け大規模データセンターの建設計画が急増する中、電力や水の大量消費が水資源や電力供給に負担を与え、温室効果ガス削減目標の達成にも影響を及ぼすことが懸念されている。政府は2026年3月に「データセンターおよびAIインフラ開発業者に対する期待事項
」を公表し、国益の優先やクリーンエネルギー移行への貢献、水資源の効率的利用など5項目を提示した。ただし、これらは開発計画の迅速な承認に向けた指針としての位置付けにとどまり、法規制にまでは踏み込んでいない。
また、アルバニージー首相は演説で、国家安全保障とAIの関係にも言及した。AIや機械学習が防衛分野の技術革新を加速させるとの見方を示した上で、ファイブアイズ(注)のパートナー諸国と連携し、AIを利用した偽情報やプロパガンダの拡散といった国家安全保障上の課題に対応していくと述べた。
(注)加盟国間で国益を守るための機密情報を含む幅広い情報を共有するための枠組み。米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国で構成されている。
(渡部卓人)
(オーストラリア)
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