政府が米民間企業と「NantSAワクチン製造施設」設立

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2022年01月26日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は1月19日、米国を拠点とする多国籍コングロマリット企業ナントワークス LLCの創設者パトリック・スーン・シオン博士と共同で、西ケープ州のブラッケンゲートビジネスパークに「NantSAワクチン製造施設」を設立したと発表した。同大統領は開所式で「新しい組織とのパートナーシップを歓迎し、ワクチン製造の投資や技術開発、技術移転を促進していく」と述べた。南ア政府はワクチン製造のバリューチェーンを確立して、今後、アフリカ諸国のワクチン接種の格差是正を目指す。

さらに今回、大統領と同博士は「アフリカ先端医療アクセス連合(the Coalition to Accelerate Africa’s Access to Advanced Healthcare)」の立ち上げを宣言した。同連合は、産学官の連携を通じてアフリカ諸国向けの治療薬の開発を促進することを目的とし、2025年までに10億回分の新型コロナウイルスワクチン製造のほか、がんや結核、エイズウイルス(HIV)などの疾病に関する最新の治療法を開発することを目指している。

同社は2021年9月に南アでのヘルスケア分野発展に寄与するイニシアチブを発表し、科学産業研究所(CSIR)と南アフリカ医学研究会議(SAMRC)とそれぞれ連携協定を締結したほか、SAMRCやケープタウン大学、ウィットウォータースランド大学などと協力して、がんや感染症治療の研究所を設立している。

南ア政府は以前から、アフリカ諸国のワクチンアクセス格差是正に向けた取り組みを続けている。2021年6月には世界保健機関(WHO)の協力により、世界で初めて「新型コロナmRNAワクチン技術移転ハブ」を国内に設立した。このハブでは、中低所得国の民間企業がワクチン生産のノウハウを学び、製造ライセンス取得が可能で、南ア政府は5年間で約1億ユーロの投資を決定している。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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