米商務省、ボンバルディア製旅客機に292％の制裁関税を最終決定－カナダ政府はボーイングからの戦闘機購入を取りやめ－

米ITCは2018年2月までに米国内産業への被害を最終決定

米商務省は12月20日、ボンバルディアの旅客機Cシリーズの米国の輸入に212.39％の相殺関税（CVD）と79.82％のアンチダンピング（AD）関税を課税する最終決定を行った。両関税を合わせると関税率は292.21％に達する。これらの措置は、ボンバルディアが米デルタ航空から受注したCシリーズ75機の販売が、公的機関からの補助を受けて行われた不当廉売に当たるとして、ボーイングが米商務省にCVD、AD関税をそれぞれ79.41％課すように求め、米商務省は9月26日と10月13日に、CVDとAD関税を合わせて299.5％の関税適用の仮決定を行っていた（2017年10月13日記事参照）。米商務省は税関国境警備局（CBP）に対し預託金の徴収を指示する。今回の商務省の決定に先立ち、米国際貿易委員会（ITC）は12月18日にボンバルディア製旅客機の輸入による米国内産業への被害に関する公聴会を行ったが、今回の米商務省の最終決定を受けて、ITCは2018年2月1日ごろまでに、米国内産業への被害についての最終決定を行い、被害が認定されれば関税の賦課が正式に開始される。

ウィルバー・ロス米商務長官は声明で、「今回の決定は、オープンかつ透明なプロセスにおいて事実に関する完全で公平な審査に基づいている」ことを強調するとともに、「米国は自由で公正な相互主義的な貿易を約束しており、不公正な輸入によって傷ついている米国の労働者や企業のために常に立ち向かう」と述べた。トランプ政権は、米国の通商法の厳格な執行を優先課題の1つとして挙げている。政権が発足した2017年1月20日から12月18日まで、商務省は79件のAD関税とCVD調査を開始しており、2016年（52件）に比べ52.0％増加した。

ボーイングは12月18日のITCの公聴会後に発表した声明で、「ボンバルディアの旅客機Cシリーズは、カナダ政府の補助金がなければ今日存在しなかった」と主張。同社は商務省の最終決定を受けて、「今日の決定は、ボンバルディアの米国における価格設定や当社の労働者や米国産業に損害を与えているとする当社の訴えを正当化するものだ」と歓迎の意を表明した（ロイター12月21日）。

カナダはボーイング製に代えてオーストラリアから戦闘機を購入へ

ボンバルディアのコミュニケーション・広報担当副社長のマイク・ナドルスキー氏は12月20日、「商務省の決定は現実離れしている。（新機体）発表時の価格や数十億ドルの航空機プログラムの資金調達など、航空宇宙産業の長年にわたるビジネス慣行を無視しており、失望した」との声明を発表した。また同社は、ボーイングが717型機と737－600型機の生産を停止して以降、デルタ航空のニーズに合った機体を製造しておらず、ボンバルディアのCシリーズはボーイングに脅威を与えていないと主張している。また、ボンバルディアとエアバスは2017年10月17日、ボンバルディアとカナダ・ケベック州政府が保有するCシリーズ・エアクラフト・リミテッド・パートナーシップの株式50.01％をエアバスに譲渡するとともに、米国の顧客向けにCシリーズの最終組み立てをアラバマ州モバイル工場で行うことを発表。モバイル工場で400～500人を直接雇用し、約3億ドルの新規直接投資が行われるとしている。

カナダのクリスティア・フリーランド外相は12月20日の声明で、今回、米商務省が発表したCVDとAD税率は、「航空宇宙産業に従事する両国の労働者にとって極めて懲罰的だ」と批判するとともに、「カナダ政府は、カナダ企業や労働者を保護主義から守る確固たる決意を固めており、本日の最終決定を精査し、次の措置や不服申し立ての選択肢を検討している」と述べた。

また、カナダのトルドー政権は、ボンバルディアに関税を課す決定が行われた場合には、ボーイング製の戦闘機F／A－18スーパーホーネットを18機購入する計画の見直しを示唆していたが、ハルジット・シン・サージャン国防相は12月12日、ボーイングからの購入を取りやめて、代わりにオーストラリアから中古のF／A－18sを同数購入することを明らかにした。

（中溝丘）