デジタルサービス提供者への障壁を新たに問題視、2021年外国貿易障壁報告書(メキシコ編)
(米国、メキシコ)
米州課
2021年04月12日
米国通商代表部(USTR)が3月31日に発表した2021年版外国貿易障壁報告書(NTE)は、メキシコに関する記述に前年より3ページ多い12ページを充てた。報告分野には、(1)貿易協定、(2)輸入政策、(3)貿易の技術的障壁(TBT)・衛生植物検疫(SPS)障壁、(4)政府調達、(5)知的財産権保護、(6)サービス障壁、(7)デジタル貿易の障壁、(8)投資障壁の8分野を挙げた。今回の報告では、前年に言及がなかったデジタル貿易の障壁が含まれた。
米国の2020年の対メキシコ財貿易赤字は前年比11.2%増の1,127億ドルだった。メキシコは米国の財の輸出先国として、カナダに次いで2番目に大きいが、2020年の対メキシコ輸出額は2,127億ドルと17.1%減少した。輸入額も3,254億ドルと9.1%減少した。
NTEは貿易協定に関して、2020年7月1日に発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、2020年7月2日記事参照)を取り上げ、同協定により米国の乳製品や家禽(かきん)類、卵製品のメキシコ市場へのアクセスが拡大すると評価した。
知的財産権保護の分野では、メキシコが著作権侵害に対する執行などUSMCAの条項を国内法に反映させるため、連邦産業財産権保護法を新たに制定したほか、連邦著作権法と連邦刑法を改定したことを挙げた(2020年7月2日記事参照)。これらがメキシコ国内の知的財産権の環境を改善すると評価した。
一方、メキシコの輸入政策における非関税障壁として、前年に続き、貿易に関する一般規則・判断基準を定める経済省令(経済省貿易細則)の別添2.4.1(通称、NOM省令)に言及した。NOM省令は2020年10月に改定され、メキシコ公式規格(NOM)の対象品目を輸入する際の商品情報表示義務の免除措置が一部廃止された(2020年10月2日記事参照)。NTEでは、この改定によって接客業や製造業向けの卸売りやバルク製品の米国からの輸出が影響を受け、通関手続きの重大な遅延を招いたと指摘した(注)。
貿易の技術的障壁(TBT)としては、情報通信技術にかかわる複数の規制を新たに挙げた。例えば、2021年2月に施行された通信・放送設備に関する新しい適合性評価手続きを通じて、企業秘密が当局へ共有されることへの懸念を示した。
デジタル貿易の障壁に関しては、メキシコ国外からデジタルサービスを提供する事業者に対する税務義務不履行の場合の規定を取り上げた。2021年度歳入法で、国外のデジタルサービス提供者が付加価値税登録などの規則に違反した場合、メキシコ政府が当該事業者のデジタルサービスに対し、国内インターネットサービスへの接続を阻止できる規定が盛り込まれたことを指摘。NTEでは、こうした過度な罰則を見直し、米国の事業者と連携して複雑な付加価値税登録要件の改革を行うようメキシコ政府に求めた。
NTEは、総論編と各国・地域編から成り、総論編は2021年4月2日記事参照。
(注)メキシコ経済省はNOM省令改定後に、情報表示義務履行手段の簡素化措置や義務対象外となる品目の判断基準などを発表している。詳細は2020年10月5日記事、10月14日記事、10月29日記事、11月10日記事、11月25日記事参照。
(甲斐野裕之)
(米国、メキシコ)
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