長尾 祐介

PROJECT STORY 対日投資担当

JETRO初のチャレンジングな取り組み。
3Dプラットフォームで
日本の魅力を訴求する
オンラインイベントの開催。

  • 長尾 祐介

    長尾 祐介

    Nagao Yusuke

    対日投資部
    対日投資課
    プロジェクト・マネージャー(PM)
    中小企業診断士、CPA(Washington)
    2010年 入構

プロジェクトの概要

政府は2020年12月、「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を「経済と環境の好循環」に繋げるための産業政策として「グリーン成長戦略」を策定した。これは、グリーン分野において民間企業による技術開発や大規模な投資が必要となる中で、企業の取り組みを促すために国の具体的な見通しや目標を示すものとして策定された。そうした中、日本の投資環境の魅力や「2050年カーボンニュートラル」に向けた取り組みを発信することを目的に、オンラインイベント「NET ZERO Leaders Summit(Japan Business Conference 2021)」が開催され、このオンラインイベントの企画から運営の全てをJETROが担った。
「NET ZERO Leaders Summit(Japan Business Conference 2021)」: https://www.jetro.go.jp/events/jbc/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

PROJECT MISSION

このオンラインイベントは、「経済と環境の好循環」を実現するカーボンニュートラルへの挑戦に関して最新の潮流を発信する場であり、それらを通じて投資先としての日本の魅力を訴求し、最終的には対日投資を誘致することが目的である。そのために、どのような内容が適切で最も効果的なのか、最善のオンラインイベントを実施することがJETROのミッションであった。JETROのイベントはオンラインが主流となっていたが、このオンラインイベントは、3Dプラットフォームを採用するという初めてのチャレンジングな試みだった。

PROJECT TIME LINE

  • 2020.10

    2021年夏に向けた、オンラインイベントの再検討を開始

  • 2021.02

    企画・運営業務の委託先決定に伴い、プロジェクトの企画検討開始

  • 2021.05

    プラットフォーム構築委託先決定に伴い、プラットフォームの構築開始

  • 2021.07

    メインイベント(パネルディスカッション等)の収録

  • 2021.07.28
    ~09.10

    プラットフォームオープン、オンラインイベント開催

MY COMMITMENT

このプロジェクトの主担当となった長尾は企画段階から関与した。基盤となるオンラインプラットフォームの情報収集から始まり、イベントの企画・運営業務やプラットフォーム構築のための委託手続き及び委託先の管理・監督を担当。プロジェクトメンバーに割り振られた各業務を横断的に管理し、メンバーごとにパフォーマンスを最大限に引き出す役割を担った。

新型コロナで一年の開催延期、オンラインへと舵を切る

「NET ZERO Leaders Summit(Japan Business Conference 2021)」は、元々、国際社会から日本への関心が高まる東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年の夏に開催される予定だった。しかしコロナ禍により延期となったことから、イベントも再検討されることになった。ニューヨーク事務所に赴任していた長尾が帰国したのもちょうどその頃だった。帰国後にアサインされたのが対日投資部。その役割は、日本国内の拠点を開設してもらうために、ビジネスフィールドとしての日本の魅力を、イベントやウェブサイトでの情報発信を通じて外国・外資系企業にプロモーションすることだ。 今回のオンラインイベントの開催もその延長線上にあった。

「私が所属する誘致プロモーション班では、従来、日本の投資環境を海外に向けて発信するセミナーイベントを担当してきました。本来は東京オリンピック・パラリンピックに合わせてリアルでの開催を予定していた本イベントですが、新型コロナによって一年の開催延期を余儀なくされました。延期後もリアルでの開催ができない可能性が高かったことから、オンラインでの開催に舵を切りました。オンライン開催の中においても、引き続き私たちが目指したのは、参加者と出展企業同士の活発なコミュニケーションを通じて、日本の魅力を外国・外資系企業に対して効果的に発信することでした。」

ではオンラインイベントの概要を見てみる。日程は延期後の東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせた2021年7月28日から同年9月10日。内容は、「グローバルリーダーたちによるメインプログラム(世界の第一線で活躍するリーダーたちがネットゼロの潮流を語るパネルディスカッション)」、そして、「企業ブースにおける日本の魅力発信(バーチャル会場に日本の優れた技術やサービスを有する54の企業・自治体がPRブースを出展)」、さらに、「アバター等によるコミュニケーション(参加者はアバターを使用し、出展企業・自治体同士のリアルタイムコミュニケーションが可能)」。参加者は開催期間中、24時間、パネルディスカッションの視聴、出展ブースへの訪問、関連動画の閲覧などのコンテンツを体験することができる。
最終的にはこの内容で実施されたが、そこに至るまでには長尾らの多大な労力があった。

3Dプラットフォーム作成の試み。「参加者にとってベストは何か」

長尾のチームは、コロナ禍でオリンピック開催方針も不透明な中、リアルイベントに近い臨場感を参加者に感じてもらうため、ギリギリまでメインイベントの海外登壇者を日本に招待して、リアルに収録することを追求した。登壇者を入国させるための綿密な防疫対策の調整がイベント開催の一ヶ月前まで続いた。

「しかし、コロナの感染状況を踏まえて最終的に登壇者の日本への招待はなくなりました。それによって登壇者の変更や全面オンライン登壇への切り替えが必要になったことに加え、登壇者の決定が遅れたことによる広報開始の遅れが集客に影響することが予想されました。非常に厳しい局面に立たされたのです。そこで共催先の経済産業省とも密に連携を取り、既存の広報チャネルを全て洗い出し、考え得る限りの様々な広報手段を駆使した結果、短期間の広報にはなりましたが最終的には約4000人の参加者を集めることができました。」

長尾がこだわったのは「リアル感=臨場感」。だからこそ最後まで登壇者を日本に招待したかった。最終的にそれは叶わなかったが、長尾のこだわりは違う形で実現されることになった。コロナ禍におけるJETROのイベントはオンラインが主流となっていたが、長尾は2Dでの開催は没入感が乏しく、参加者が臨場感を得るには限界があると感じていた。そこで採用したのが、3Dプラットフォームである。

「参加者が3Dプラットフォーム上でアバターを操作してコミュニケーションをとるという企画を考えました。JETROには同様のイベントの知見がなく、正解が見通せない手探りの状況の中、臨場感や飽きさせない仕組み作りに苦労しました。民間イベントの成功事例を研究し、プラットフォームの制約を踏まえて、より効果が高いと見込まれる施策を取捨選択。膨大な検討事項をチーム内で徹底して話し合うことで企画の詳細を詰めていきました。」

プラットフォームに乗せる空間やアバターのデザイン、配置するオブジェクトの作成、参加者が回遊しやすい導線、チュートリアルを見せるタイミング、コミュニケーションを促す仕掛けなど。試行錯誤しつつも「参加者にとってベストは何か」という観点で議論を重ね、プラットフォームを作り込んでいった。

初の試みで見えてきた課題と収穫、既に成果が生まれ始めた期待感

長尾らプロジェクトチームの奮闘の甲斐あって、オンラインイベントは無事開催にこぎつけ、予定の日程を消化し閉幕した。大半の参加者からは、メインイベントや日本企業の出展を通じた情報発信について「満足した」という高い評価を受けた。一方で、プラットフォーム内でのコミュニケーションに関しては、活発なコミュニケーションを期待していた参加者や出展企業からの厳しいコメントも少なくなかった。そもそも長尾は、「参加者、出展企業同士の活発なコミュニケーションを通じて、日本の魅力を外国・外資系企業に対して効果的に発信する」ことを目指していた以上、それらの声には忸怩たる想いがあった。

「全世界5大陸のビジネスパーソンを顧客対象としたため、時差マネジメントという付随する課題などもあって、オンラインイベント上でのコミュニケーションの促進の難しさを痛感しました。残念ながら、当初期待したような参加者・出展企業同士の活発なコミュニケーションは見られませんでした。オンラインイベントは気軽に参加できる反面、気軽に離脱もできてしまいます。強く興味を惹くコンテンツや企画で関心を繋ぎ留めた上で、参加者同士が一体となって取り組むような参加型イベントを実施するなど、企画・運営をもう一段階工夫する必要があったと感じています。しかしながら、時間や場所の制約を受けず、参加者のデータ解析が容易にできるなど、オンラインイベントならではのメリットは存在します。次回の企画ではこの経験を活かし、ユーザー意識の変化に対応できるオンラインイベントを企画していきたいと考えています。」

今回のオンラインイベントでは既に成果も生まれている。参加者同士がメールでのやり取りを通じて、具体的な商談が進んでいるケースもある。そのため長尾は、参加者と出展企業の今後の事業拡大に貢献できるように、引き続き丁寧にフォローアップしていく考えだ。

「初めての試みだった今回は試行錯誤の連続でしたが、得たものも大きかったと感じています。それは基本的なことですが、外国・外資系企業ユーザーのニーズを的確に捉えることの重要性です。ユーザーは何を求めているか、真のニーズをとらえることで、ユーザーファーストのコンテンツ制作が可能になります。これはオンラインに限らず、様々なメディアを通じた広報イベントやプロモーション活動においても共通することであり、その継続によって外国・外資系企業ユーザーとの関係構築を積み重ねていきたいと思っています。」

MY FUTURE

対日投資誘致活動の「デジタル化」を積極的に推進していきたいと考えています。対日投資ウェブサイトを通じた情報発信で外国・外資系企業ユーザーにJETROの存在を認知してもらい、ユーザーニーズに応じたコンテンツを提供することで関心を継続し、Webを通じた問い合わせに繋げていく。誘致活動の効率化を図るため、マーケティングオートメーションツールなども積極的に取り入れて行く予定です。
対日投資ウェブサイト: https://www.jetro.go.jp/invest/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

入構理由

学生時代にアフリカのコートジボワールで紛争地域の子どもたちをサポートするボランティア活動に従事しました。元々、開発途上国を支援すること、そして困っている人を助けたいという想いがありました。それを実践する場として選んだのがJETRO。物を提供するだけの支援ではなく、仕組み作りを通じて、持続可能なビジネス機会が構築できると思い入構を決めました。