宮本 結都 加藤 紗妃 榎堀 秀耶 宮本 結都 加藤 紗妃 榎堀 秀耶

CROSS TALK 若手海外実務研修

海外での1年間の貴重な経験は、
今の業務に確実に生かされている。

  • 宮本 結都

    宮本 結都

    Miyamoto Yuito

    ビエンチャン事務所実務研修
    企画部 企画課 海外地域戦略班(東南アジア担当)
    2017年入構

  • 加藤 紗妃

    加藤 紗妃

    Kato Saki

    プラハ事務所実務研修
    対日投資部 対日投資課 DX推進チーム
    2016年入構

  • 榎堀 秀耶

    榎堀 秀耶

    Enokibori Shuya

    チェンナイ分室実務研修
    デジタル貿易・新産業部 EC・流通ビジネス課
    (現・ニューデリー事務所ムンバイ分室)
    2016年入構

Q.海外実務研修はどちらに行きましたか?

宮本
ASEANのフロンティア市場であるラオスに興味があり、ビエンチャン事務所に手を挙げました。学生時代に先進ASEANであるタイで「消費者」として生活していた経験に加え、後進ASEANであるラオスの経験を付加することでASEANへ対する多角的な視野を獲得できると考えたからです。他にラオスを希望する人がいなかったため、スムーズに決まりました。
榎堀
加藤さんはプラハ事務所が研修先だったけど、確か学生の時もプラハに留学してたよね?
加藤
そうなんです。小学生の時にブラジルに3年間住んでいたのですが、もっと広い世界を見てみたいと思ってどうしてもヨーロッパに行きたくて。それと私は日本のマイノリティの教育に関する研究をしていたのですが、他の地域の実態も知る必要があると考えていて、チェコで暮らしているマイノリティの教育現場を見てみたかったというのもありました。
榎堀
私は二人のような海外経験がなく、海外で働き、生活することに対して、漠然とした憧れを持っていました。10カ国ほどあった研修先の一つにインドがあり、その著しい経済成長を目の当たりにしたい、厳しい環境に自分が耐えうるか試してみたいという怖いもの見たさがあって、インドを志願し、最終的にインドのチェンナイに派遣してもらえることになりました。
加藤
私は女性ということもあり、出産や育児などのライフイベントでどうしても仕事を第一優先できない時期が出てくる可能性もあります。それを考えると、将来の海外駐在を念頭に置いたとき、20代のうちに一度は海外事務所での仕事を経験しておく必要があると思い、手を挙げました。
宮本
私が勤務していたビエンチャンは「世界一何もない場所」と呼ばれたりしていて(笑)、エンタメ関連は物足りなさを感じたりしました。現地駐在員の皆さんはゴルフやテニスのコミュニティに参加していましたね。現地では休日に動画編集をしてYouTubeに上げるなどを趣味としていました。
榎堀
仕事以外の生活も、研修の重要な側面だよね。チェンナイでの生活は当初の想像通り、あらゆるインフラが発展途上で苦労することも沢山あったけど、日本との違いを体感できて、毎日楽しかったな。研修を経て、海外でも働ける自信がついたし、生活の苦労が多いからこそ生まれる、助け合いやコミュニティがあって、そこで得られた人脈は今も大切な財産になってるよ。
加藤
私の場合は学部時代の留学と同じプラハでの海外実務研修でしたが、留学と仕事では出会う人も日々の過ごし方も全く異なるので、新鮮なことがたくさんありました。日常生活では5年前の留学時よりレストランやショップの選択肢が増えていて、かなり暮らしやすくなっていましたね。

宮本 結都

大学時代、タイ留学を通して日本と社会的・文化的背景が360度異なる世界を経験し、多様な価値観や社会の在り方に衝撃を受けた。「同時に日本の独自性のある価値観が東南アジア諸国から高く評価されていることを日々体感した経験から、日本企業の海外展開支援を通して、日本の魅力を世界に発信する仕事に就きたいという想いが生まれ、JETROを志望しました」

現地ではどのような業務を担当しましたか?

榎堀
調査を主に担当していました。現地企業へのインタビューなどを通して、JETROが発信しているメディアに1年間で20本以上の記事を寄稿しました。インドに関する様々な記事を執筆する中で、インドの理解が深まったほか、調査手法として、一次情報に触れ、正確性を担保する姿勢や、読者目線で分かりやすい構成や表現を心がけることを学びました。
宮本
現地からのリアルな発信は貴重ですよね。それと公的機関だから情報の正確性もよりシビアに求められると思います。
榎堀
そうだね。あと、記事を発信する一方で、まだまだJETROが認知されていないことも感じました。企業の方とお話をしていても「そんなサービスもやってるんだ」「そういうデータ持ってるんだ」と驚かれることも多く、自分から積極的に関わっていかないといけない、と感じました。
加藤
私がチェコに行った時はちょうど日欧EPAが発効してすぐの頃だったので、現地日系企業を対象とした日欧EPAセミナーを開催したりしました。また、デジタルがバズワードになり始めた頃で、近隣事務所の海外実習生3人で協力して中欧3カ国のデジタル産業関連施設をまわるミッションの企画運営に取り組んだり、チェコのAI事情に関するレポートを執筆したりしました。他にもチェコ日本商工会での講演や、現地バイヤー向けの日本酒商談会の開催など幅広い経験を積む機会をもらえました。
プラハでの日本酒商談会の様子(2019年9月)。日本酒造組合中央会とチェコソムリエ協会の協力のもと開催したもので、チェコでの過去の同種イベントと比べて最大規模となった。
榎堀
日本酒商談会は羨ましい(笑)。欧州は有望な輸出先だよね。
宮本
私はラオスの経済概況ブリーフィングや貿易・投資に関するご相談への対応、農業関連プロジェクト、展示会運営などを担当しました。ラオスは、国が公表する情報が未整備な面があります。例えば、各種行政資料がラオス語のみで公開されており、英語版がなく、外国人投資家からすると不透明感があるかと思います。こうした中、JETROが公的機関として正確性のある情報を日本企業に発信する意義は大きいと思っています。

加藤 紗妃

幼少のころブラジルに住んでいた経験や学生時代のチェコ留学を経て、海外と日本を繋ぐ仕事がしたいと漠然と考えていた。「JETROは多種多様な業種の海外展開支援に携われると知り、『公的機関』で『海外と関わる仕事』という軸をもって就活していた自分にとってJETROが一番合っていると考えました」

海外で業務に携わった際の印象は?

宮本
実際に海外で働いてみると、商習慣など日本との違いを感じる場面も少なくありませんでした。違う国の人と働く経験ってあまりないじゃないですか。
榎堀
そうだね。例えば、僕がいたチェンナイでは、もちろん個人差はあるものの、納期に遅れることが普通だったり、お願いした業務に対する成果物の質が低かったりしました。納期に関しては、ある程度の遅れを見越して前倒しで設定できるけど、成果物に関しては、ある時、お客さんに提供する資料を現地の印刷会社さんに1000部ぐらい印刷してもらったら、指定した用紙と全然違ったものが届いて、愕然としました(笑)。
宮本
私も実感しました。例えば、ラオスでは行政手続きや制度面における不透明さが残っており、コンプライアンスの意識が高い日本企業にとっては懸念事項にもなり得ます。しかしラオスでもデジタル化が進んでおり、これに伴い今後データの透明性も担保されてくるかと思います。将来が楽しみな国ですね。
榎堀
なるほど。加藤さんは久しぶりのチェコはどうだった?
加藤
チェコでも日系企業はとても実直だなと思いました。チェコに進出している日系企業は製造業が多く、実習中に何度か工場を訪問させていただきましたが、工場内の環境改善だけでなく、従業員や現地自治体との関係に配慮した様々な工夫をされている企業が多かったです。ただ民主化が進んだとはいえ、ビザの取得プロセスの煩雑さに代表されるようにまだ社会主義時代の習慣がまだまだ残っているところもあり、ビジネス上課題を抱えている日系企業がいるのも事実です。そこで日系企業がチェコ政府に色々要望を出すんですね。「ここを改善してほしい」みたいな。でも簡単には動かないわけです。
宮本
どうやって解決したんですか?
加藤
歴代のプラハ事務所でもやってきていたことですが、チェコに影響力のあるドイツを巻き込もうと。チェコにはドイツの製造業も多く進出しているので、日系企業と同じような問題を抱えているケースが多かったのです。そこでドイツ商工会議所やドイツ企業と協力して、日独協同ラウンドテーブルミーティングという形でチェコの副大臣や閣僚級と意見交換を行いました。長年要望していたことが聞き入れられたケースもあり、ジェトロならではの形で日本企業に貢献できたと感じましたね。
榎堀
3地域を比較しただけでも、これだけ商習慣が異なるんだね。海外に限った話ではないけど、大切なのは、自らの考え方に拘泥せずに、相手と対話して、背景を理解しようと努めて、上手く協業していく姿勢なのかもね。

榎堀 秀耶

「日本の経済を強くする」というJETROのミッションに強く惹かれ、就職先として意識。「学生時代から『海外への橋渡しを担い、日本企業の可能性を最大化するような仕事がしたい』と考えていたので、説明会に参加して『ここだ!』と思いました。入構後も、その判断に間違いがなかったと実感しています」

1年間で何を学び、どう業務に活かされていますか?

加藤
みんなそれぞれの地域で1年間の研修を終えたわけだけど、どんなことが今の業務に生かされている?
榎堀
実習を通して、どの企業にも与せず、中立であるJETROだからこそできる仕事や期待されている役割があるな、と気付きました。それは企業同士の橋渡しや、情報ハブとしての情報収集と提供です。その学びにもとづき、実際に企業同士を繋げる事業を組成して実施したり、担当する分野の情報収集を日頃から心掛けたりしています。
宮本
大事ですよね。
加藤
私も榎堀くんと似ていて、情報収集と情報提供の大切さを実感しました。今はDX推進チームでデジタル・トランスフォーメーションを軸に日本企業とASEAN・インド・イスラエル企業の連携協業を進めているのですが、今現地で何が求められているか、何に困っているか等をきちんとヒアリングしていこうというスタンスで取り組んでいます。また研修の時期はヨーロッパで「デジタル」がブームになっていた頃でもあったので、DX推進チームの立ち上げの時にヨーロッパで学んだことが役立ちました。
榎堀
収集も発信も大事だし、またその伝え方も大事だよね。
加藤
それと現地で貿易投資相談に対応した経験も役立っています。現地で実際にビジネスを行う日本企業がどんなことに困るのかが見えるようになったので、今DX推進チームで個別の企業の支援をする際に活きています。
宮本
私は「知恵の大切さ」を学びました。ファクトを発信することも重要ですが、「ファクトをどのように解釈するか」も同様に重要だと感じています。JETROとして付加価値のある情報提供をしていくことを日々の業務で心掛けています。
加藤
具体的には?
宮本
現在、東南アジア地域の経営戦略を担当する部署で、経営幹部が国際会議等でスピーチする際の原稿作成を担当しています。スピーチでは、ファクトだけではなく、そのファクトが持つ意味をしっかり汲み上げて示唆のあるメッセージを伝えるということが欠かせません。付加価値を付けた情報発信は、日本企業の主戦場のひとつである東南アジア地域においてJETROの存在感を発揮していく上で重要な視点であることを学びました。
加藤
なるほど。皆それぞれの場所で貴重な1年を過ごしてきたわけね。しかもしっかりと今の業務に生かされていることがわかりました。
榎堀
私はもうすぐインドに駐在する予定なので、研修で得た経験や学びを存分に活かしてこようと思います!