ジェトロ対日投資報告2023
第2章 日本の対内直接投資動向
第6節 長期的に見た対日グリーンフィールド投資プロジェクトの傾向

発表ベースでの日本へのグリーンフィールド投資の推移を長期的に見ると、近年、半導体関連のプロジェクトが全体をけん引する傾向が見られる(図表2-18)。

図表2-18 業種別(上位5業種)対日グリーンフィールド投資の推移 (3年間の投資金額の移動平均、発表ベース)
fDi-Marketsの調査では、対日グリーンフィールド投資の、上位5業種の推移を長期的に見ると、近年、半導体関連が、全体を大きくけん引している。上位5業種とは、半導体、通信、不動産、再生可能エネルギー、金融サービスである。また、3年間の投資金額の移動平均を用いて、全業種の合計額を見ると、2023年は、約150億ドルで、2005年の、約2.6倍となっている。5業種それぞれの、対日グリーンフィールド投資の推移は、次の通りである。 再生可能エネルギーでは、2012年の、約1.3億ドルから、2017年の、約32億ドルまで、順調に増加してきたが、2018年から減少し続け、2023年には、約7.7億ドルとなった。 不動産では、ピークの、2016年の、約17.6億ドルまで、上下しながら増加してきたが、その後は、上下しながらの減少となり、2021年、2022年は6億ドル台、2023年には、約8億ドルとなった。 金融サービスでは、2007年から2009年の、8億ドル台から、ゆるやかに減少し続け、2014年から2019年までが、3億ドル台、2020年から2021年までが、2億ドル台で推移し、2023年は、約3.3億ドルとなった。 通信では、2014年から2019年まで、6億ドル台から7憶ドル台で推移したが、2021年に、約11.4憶ドルと、増加し始め、2023年には最高額で、約13.6億ドルとなった。 一方、半導体においては、2006年の、約31.2億ドルから、大きく上下しながら減少し、2012年には、約8.6億ドルとなった。その後増加して、2015年に、約27億ドルまで戻ったが、再び減少し続け、2018年に、約1,900万ドルまで落ち込んだ。その後、2020年の、約8,700万ドルから、2021年には、いきなり、約50億ドルと、急激な伸びを見せ、2023年には、さらに、その2倍の約97.8億ドルにまで大きく増加した。これは、2020年の100倍以上であり、また、それまでの最高額だった、2006年の約3倍である。このように、近年、半導体関連が、対日グリーンフィールド投資全体を、大きくけん引していることがうかがえる。

〔注〕2023年は8月発表分まで。
〔出所〕 「fDi Markets」(Financial Times)より作成

2003年以降に発表された対日投資プロジェクトを規模順に見ても、上位は半導体での投資が占め、特に近年に多く集中している傾向が見られる(図表2-19)。また、半導体以外の主要詳細業種のグリーンフィールド案件の推移を見ると、ホテル業については、新型コロナウイルスの感染拡大により停滞したことがわかる。一方、データセンターなどを含むデータ処理・ホスティング関連業種については近年急成長が見られており、地政学リスク顕在化の影響があると推察できる(図表2-20)。

図表2-19 主な大型対日グリーンフィールド投資(2003年以降2023年8月までの発表案件対象、発表ベース)
詳細業種 投資企業 国・地域 発表日
半導体およびその他電子部品 台湾積体電路製造(TSMC) 台湾 2021年7月
台湾積体電路製造(TSMC) 台湾 2023年7月
マイクロン・テクノロジー 米国 2021年10月
サンディスク 米国 2013年8月
マイクロン・テクノロジー 米国 2023年5月
力晶積成電子製造(PSMC) 台湾 2023年7月
スカイワークス・ソリューションズ 米国 2015年8月
サンディスク 米国 2006年4月
サンディスク 米国 2003年12月
インテグリス 米国 2004年2月
キャボット・マイクロエレクト​​ロニクス 米国 2004年7月
日月光半導体製造(ASE) 台湾 2008年8月
インテル 米国 2010年11月
スパンション(現:インフィニオン・テクノロジーズ) 米国 2006年6月
その他石油・石炭製品 ハイドロデク・グループ 英国 2011年7月
石油精製 ペトロブラス ブラジル 2008年4月
原子力発電 オラノ (アレバ) フランス 2009年1月
建設業(産業) GLPジャパン・デベロップメント・ベンチャー シンガポール 2016年12月
医薬製剤 中外製薬(ロッシュ・グループ) スイス 2019年5月
データ処理・ホスティングおよび関連サービス プリンストン・デジタル・グループ(PDG) シンガポール 2021年6月
  1. 〔注〕

    「fDi Markets」に収録されている2003年以降の案件について、投資金額上位20案件(発表ベースあるいは報道ベース)を掲載。同一詳細業種内は投資金額(同)の大きい順に掲載している。

  2. 〔出所〕

    「fDiMarkets」(Financial Times)および各社発表より作成

図表2-20 主要詳細業種の対日グリーンフィールド投資(発表ベース)の推移(3年間の投資金額の移動平均)
fDi-Marketsの調査から、建設業、データ処理・ホスティングおよび関連サービス、太陽光発電、宿泊業の、4業種における、対日グリーンフィールド投資の推移について、2005年から2023年までを比較した。建設業では、2009年、2010年で約3.5億ドル、2011年で一旦減少し、その後2013年に、約7.1億ドル、2014年に、約13.3億ドルと大きく伸展した。2015年に再び減少するも、2016年には、約14.6億ドルまで増加した。しかし、2017年に、約8億ドルに急落、その後も減少し続け、2021年、2022年に、ほぼゼロとなった。2023年には、約3億ドルまで回復した。データ処理・ホスティングおよび関連サービスでは、2011年の約3,500万ドルから増加が続き、2015年に、約3.9億ドルとなると、以降は、ほぼ横ばいとなった。2020年の約3.2億ドルから、翌2021年には、約9.9億ドルと3倍以上に急増し、以降も増加し続け、2023年には、約13.3億ドルとなった。太陽光発電では、2012年の約1.1億ドルから、2014年の約9.8億ドル、2015年の約19.6億ドル、2017年の約29.2億ドルと、毎年すさまじい成長を遂げた。しかし、2018年からは、対照的な下降線を描き、2019年にはピーク時の半分の約15.6億ドルまで減少した。その後も減少傾向に歯止めがきかず、2022年に約9.3億ドル、2023年には約2.6億ドルとなった。宿泊業では、2005年に約3億ドルだったのが、2007年に約6千万ドルまで減少したのち、2009年、2010年と約3億ドルまで戻した。その後、再び減少し始め、2016年に、ほぼゼロとなった。しかし、2017年に約1.8億ドルと増加に転じ、2018年には約15億ドルと急伸を遂げ、2020年には、約20億ドルに至った。しかし、2021年には約6億ドルと急落し、その後も減少し続けて、2023年には再び、ほぼゼロとなった。

〔注〕 2023年は8月発表分まで。
〔出所〕 「fDi Markets」(Financial Times)より作成

2023年版目次

  1. 第1章
  2. 第2章
  3. 第3章

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