ジェトロ対日投資報告2023
第1章 世界の対内直接投資動向
第3節 地政学リスクを受けた世界の企業の対応

国際的な政策方針の分断が進む中(図表1-3) 、地政学リスクが上昇、企業の間でリショアリングへの関心の高まりが増加している。IMF(国際通貨基金)の調査によると、特に2019年から2020年にかけて、また、2021年から2022年にかけて特に急速な関心の増加が見られている(図表1-4)。同調査によれば、業績報告の中でリショアリングについて言及している企業とそうでない企業を比べると、収益性、無形資産の割合、売上、従業員数で統計的に有意な差が見られ、中でも収益性や従業員数での差が大きく、生産性が高い企業ほどリショアリングについての関心が高い。

図表1-3 外交政策距離インデックス
外交政策距離インデックスとは、国連総会において、外交政策に対する米国と中国の投票行動の違いを指標、すなわちインデックス化したものである。2010年から2014年、2015年から2019年、2020年から2021年と、3つの期間で比較すると、次第に数値が増加している。

〔注〕国連総会での米国と中国の投票データを基に、投票の行動の違いをインデックス化したもの。数値が大きいほど、投票行動の違いが大きい。
〔出所〕IMF Global Financial Stability Report 2023年春季、 Häge (2011)

図表1-4 リショアリング等への関心の高まりの推移
IMF、国際通貨基金は、企業の業績報告中の、「リショアリング」「フレンドショアリング」「ニアショアリング」についての言及の頻度を計測調査し、企業の、リショアリングへの関心インデックスを作成した。リショアリングへの関心インデックスは、2005年から、ほぼ横ばいに推移し、2015年、2017年に、やや増加が見られたが、2018年に、やや減少した。新型コロナの時期には、2020年の関心度は2019年の2倍以上に、急激に増加した。ロシアの、対―ウクライナ軍事行動によっても、2022年の関心度は、2019年の5倍近くまで、大幅な増加が見られた。このことから、地政学リスクが高まると、リショアリングへの関心も、高まることが示された。
  1. 〔注〕

    地政学リスクインデックスは、リショアリングへの関心を示し、企業の業績報告中の「リショアリング」
    「フレンドショアリング」「ニアショアリング」についての言及の頻度で計測。

  2. 〔出所〕

    IMF World Economic Outlook 2023年春季、Hassan他(2019)、NL Analytics

2023年版目次

  1. 第1章
  2. 第2章
  3. 第3章

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