エブリン・ウォンさん
Voice of Senpai国という壁を壊し、スタートアップのポテンシャルと世界をつなげるグローバルな架け橋に
- 所属
- Antler株式会社
- 氏名
- フロリアン・ガイヤさん
- 出身
- ドイツ
- 業種
-
- 金融業
博士課程の大学院生として来日し、物理の研究に取り組みながらバイトやボランティアをするうちに、日本の魅力的な人々のポテンシャルが世界に伝わっていないと気付いた、というガイヤさん。日本特有の「就活」や大手企業での経験から得た気付きや、今ますます求められている外国人材のニーズ、これからの夢について語っていただきました。
自己紹介をお願いします
フロリアン・ガイヤです。フローと呼んでください。ドイツ出身で日本に13年います。
スウェーデンに1年交換留学した際、同じ寮に日本留学から戻ってきたスウェーデン人から、空手をやらないかと誘われ、空手を始めました。ドイツに戻ったあと、日本人の交換留学生と接する機会も多かったのですが、日本語で話している内容が分からないことがもったいないと感じて、勉強し始めました。副専攻で日本語を2~3年勉強した後、現場を見たいと思い、日本への留学を決意しました。
今のお仕事について教えてください
Antler株式会社という世界30都市に拠点を構えるグローバルベンチャーキャピタルで、シニア・ディレクターとして日本のスタートアップ創業者の支援に取り組んでいます。Antlerは、社会課題を解決するビジネスアイデアを持つ、創業前の起業家とこれから資金調達を目指す創業済みの起業家ならびにチームに向けて、資金提供やネットワーク構築などの支援をしている会社です。
日本に来たきっかけを教えてください
元々は2012年に博士課程の大学院生として来日しました。最初の3年半ほどは、東京大学で物理の博士課程で研究しながら、日本の文化と日本人をより深く理解するためにさまざまなボランティア活動やバイトを経験しました。その中で、日独協会という、日本とドイツを繋ぐ一般法人でも活動していて、様々なイベントの企画や司会、日本でも有名なビール祭り「オクトーバーフェスト」の司会なども務めました。そこでいろんな方と出会う中で、「日本にはすばらしいスキルやポテンシャルを持っている方がたくさんいるのに、そのすばらしさが特に海外に伝わっていない」ということに気が付いたのです。それで、日本の皆さんのスキルやポテンシャルをもっと積極的に世界に伝える架け橋になりたい、そのためには、研究ではなくて事業をする側に行こう、と考え、日本で就職活動を始めました。

日本の就職活動で大変だったことは何ですか?
ご存知の通り、日本の就職活動=「就活」というプロセスは、かなり特殊です。 私もスーツを買い、いろいろな説明会に行き、そこで自己PRをするなど、ひと通りの就活をしましたが、正直、そのプロセスをなめていたところがありました。後で同期に尋ねると、30社~50社、多い人は100社ぐらいに応募書類を送っていたそうなのですが、私が送ったのはたった5社。しかも28歳で博士課程なので「そもそも自分は新入社員扱いなのだろうか」といった疑問もありました。結果は、内定ゼロ。かなり絶望しましたね。
けれども、ここで皆さんに伝えたいのは「努力は絶対に裏切らない」ということ。
なぜなら、内定が取れず落ち込んでいたときに、ボランティア先の日独協会のみなさんから「ガイヤさん、今、就活で困っていると聞いたけど」「ガイヤさんにはもっと日本で活躍してほしい」という声をいただいたのです。そして、協会の理事の方々経由で、大手企業の面接のきっかけをいただき、無事にその企業に入社することができました。
日本の働き方はどうですか
日本では、新卒は1年に1回の採用で、4月1日に一斉に入社しますよね。私も、新入社員として4月1日に入社しました。
その企業では、まず3月31日に入社式のリハーサルがあり、数百人の同期たちと初めて会いました。そして入社式当日、式が終わった瞬間に、新入社員は全員バスで研修センターに移動し、そこから丸2カ月間、泊まり込みでの研修が始まったのです。毎朝5時半に起きて、「会社とは何か」というところからはじまり、組織構成、メールの書き方、名刺の渡し方、お辞儀の角度など、社会人の基本的なルールを全て学びました。この研修期間の後、私はイノベーション戦略企画部に配属になりました。
5年間、厳しいルールはいろいろありましたが、さまざまな国に出張し、スタートアップ企業と他の大手企業、ベンチャーキャピタルと一緒にオープンイノベーションをリードする経験ができたことは、本当に貴重であり、楽しかったです。
日本の大手企業での経験はどのように生きていますか
大手企業での5年間の勤務の後、「自分が所属する一企業と海外の企業を繋ぐよりも、もっと広く、日本と世界全体の架け橋になりたい」と考えるようになり、まず外資系のユニコーンスタートアップ企業に転職しました。その後、今のベンチャーキャピタルに転職したのですが、大手企業とスタートアップ企業、両方を経験したことが、今の仕事にとても役立っています。
例えば、スタートアップ企業は自由で良いと思う方もいらっしゃると思います。フルリモートで、オフィスがそもそも存在せず、勤務時間も自由、結果さえ出せばいい、という働き方は、自由な反面、たとえば仕事で分からないことがあったとき、そもそも社内の誰に聞けばいいか分からない、といったことも多いと思うのです。
その点、日本の大手企業は、同じタイミングで入社した「同期」という存在がいて、業務で困ったことがあったら、「とりあえずあの人に聞いて、誰かを紹介してもらおう」といった相談ができ、 社内のルート作りが非常にしやすいのです。私は大手企業にいたおかげで、今、こういった視点をうまく活用できていると思います。
日本で働く際に、事前に知っておくと良いことは?
まず、日本とドイツは「きちんとルールを守る」とか「時間を守る」といった価値観が近いので、ドイツ人にとってはかなり慣れやすいと思いますね。私自身、カルチャーショックもほぼありませんでした。日本はとても働きやすいと思いますので、おすすめです。
とはいえ、広く皆さんに覚悟をしてほしいところは、日本では、こちらから聞かないと言ってくれないことも多く、相手に対してストレートに言うことがあまりありません。
たとえば、会議の中で「この提案はちょっとダメじゃないですか」いった批判的な意見が出せないのは、日本の特徴のひとつです。そういう場合は、会議とは別に、マンツーマンで「これは本当に大丈夫なのか」と確認し、会議自体は批判ゼロの“承認会議”のかたちをとることが多々あります。そういう「建前と本音の違い」が日本にはあるということは、日本で働く前に多少知っておいた方がいいと思います。
それと、皆さんにぜひお伝えしたいのは、日本と世界をつなげる架け橋になれる人のニーズが非常に多いということ。私は日本で働いて9年目になりますが、「もっと海外の市場に入りたい」「もっと海外のスタートアップと協力したい」「でも、社内にそういう人材がいない」という声をたくさん聞きます。外国人材の皆さんは、すでにそれぞれの国の理解、それぞれのスキルを持っていらっしゃるので、そのスキルに加えて、日本の文化を受け入れる柔軟性さえあれば、大きな役割も果たせると私は確信しています。

これからの夢を教えてください
「日本と海外、そして海外と海外、さまざまな国のグローバルな架け橋になる」という夢をずっと持ち続けてきました。日本のスタートアップの起業家への支援をもっと拡大して、同じことをできるチーム、ネットワークも作り、日本と海外の壁を全部壊し、よりグローバルな国にしたいと思っています。
皆さん、日本にはすばらしいチャンスがたくさんあります。ぜひ日本で会いましょう!

Antler Residency in Japanのご紹介
全世界30都市で展開し、これまでに280,000人以上が応募、12,000人以上の起業家と1,400社以上のスタートアップを輩出し続けているAntler Residency。日本ではこれまでに4回開催しています。日本からグローバルを目指す上で、より大きな課題に挑み、より多様性に富んだスタートアップを創出している点がAntler Residencyの最大の強みです。日本から世界を目指すスタートアップにご興味のある方、ぜひチェックを。
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