EU理事会、エネルギー安定供給に向けた時限措置の1年延長で政治合意

(EU)

ブリュッセル発

2023年12月25日

EU理事会(閣僚理事会)は12月19日、2022年のエネルギー危機において、冬季のエネルギーの安定供給を確保すべく導入した時限措置に関して、1年間延長することで政治合意したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。延長を提案した欧州委員会のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は、備蓄が義務付けられているガス(2022年7月4日記事参照)の備蓄状況は非常に高い水準に達しており、かつガス価格もロシアによるウクライナ侵攻以降で最安の水準にあることから、今冬に向けて十分な備えがあると強調。ロシア産化石燃料からの依存脱却計画「リパワーEU」(2022年9月1日付地域・分析レポート参照)も順調に進んでいると説明した。一方で、地政学リスクはいまだに数多く存在することから、時限措置を延長する必要があるとしていた。

今回延長が決定されたのは、(1)ガス共同購入に関する暫定的な仕組みやガス不足時に加盟国間でガス供給を融通する「結束メカニズム」などを規定するエネルギー緊急規則と、(2)再生可能エネルギー(再エネ)施設の迅速な整備に向けて許可手続きを暫定的に簡略化する規則(2022年11月28日記事参照)に加えて、(3)ガス上限価格を期限付きで導入する市場修正メカニズム設置規則(2022年12月21日記事参照)。

(1)は、2024年12月末まで適用される。ただし、共同購入の前段階となる需要集約への参加を義務付ける条項(2022年10月20日記事参照)は削除された。なお、EUは、ガス市場規則の改正案(2023年12月19日記事参照)において、事業者の任意参加によるガス共同購入メカニズムを恒久化させることで既に合意している。(2)は、一部の条項が2025年6月末まで適用される。再エネ施設の許可手続きの簡略化については、改正再エネ指令(2023年9月20日記事参照)において恒久的な条項として盛り込まれており、これらの条項は2025年5月までに順次適用が開始される。(3)は、2025年1月末まで適用される。

このほか、同じくエネルギー危機対策として導入されたガス需要削減規則(2022年8月9日記事参照)は2024年3月末まで既に延長されている。一方で、電力需要削減規則は延長しないことが決定している(2023年6月9日記事参照)。

(吉沼啓介)

(EU)

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