在欧日系企業の33.9%がCBAMに注目、ジェトロ調査

(欧州、EU)

調査部欧州課

2023年12月26日

EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM、2023年8月31日付地域・分析レポート参照)について、欧州に進出する日系企業の33.9%が注目していることが、ジェトロの調査レポート「2023年度 ​海外進出日系企業実態調査(欧州編)」(2023年12月26日記事参照)で明らかになった。

調査項目では、在欧日系企業に注目するEUの政策・規制を選択肢から選んでもらい、552社(製造業259社、非製造業293社)から回答を得た。CBAMへの回答が最も多く、産業を問わず高い関心を集めた。

回答を業種別にみると、商社(32社、同業界の57.1%)、輸送用機器部品(自動車・二輪車、23社、47.9%)、販売会社(23社、26.7%)、運輸・倉庫(14社、32.6%)、銀行(11社、68.8%)、化学品・石油製品(11社、32.4%)が社数の上位を占めた。CBAM対象製品や対象になる可能性のある製品を扱う業種の回答が多い一方、銀行業界の回答率の高さが目立った。関係者によると、銀行業界ではCBAMが与える企業動向への影響などの観点から関心があるという(12月20日ジェトロ聞き取り)。

自由記述には上記業界を中心に29社が回答した。内容を分類すると、対象製品の拡大(6社)、報告方法(5社)、EU域外からの輸入価格の上昇(4社)、サプライチェーンの変更(2社)、顧客の反応(2社)、調達先が対応できるか(2社)などが挙がった。CBAM対象製品は現時点で限定的だが、今後はEU排出量取引制度(EU ETS)の対象セクターの製品全般に段階的に拡大されることが見込まれており、企業も情報を注視しているもようだ。

自動車関連政策にも高い注目

今回の調査項目の選択肢には自動車関連政策も設けた。最も関心が高かったのは自動車CO2(二酸化炭素)排出削減目標(全業種26.8%)で、乗用車排ガス規則(Euro7)やバッテリー規則を上回った(注)。特に2035年までに全ての新車のゼロエミッション化が決定した影響が大きいとみられ、製造業に限ると、30.9%が注目した。自由記述では、対応を懸念する自動車部品業界と需要創出に期待する電気・電子機器部品の声が対照的だった。

調査では対象外となったが、2023年7月に欧州委が発表した自動車設計・廃車(End-of-Life Vehicles:ELV)管理に関する規則案(2023年7月20日記事参照)も、自動車業界で新たな懸念材料となっており、歓迎するリサイクル業界と対照的な構図がある。関係者は「欧州での自動車生産はコストが高まる一方だ」とこぼした(12月7日ジェトロ聞き取り)。

(注)自動車CO2排出削減目標については2022年10月31日記事、Euro7は2023年12月25日記事、バッテリー規則は2023年8月21日記事をそれぞれ参照。

(江里口理子)

(欧州、EU)

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