ドイツ暖房大手バイラント、スロバキアでヒートポンプ工場稼働へ
(ドイツ、スロバキア)
ミュンヘン発
2023年03月22日
ドイツの暖房・給湯機器大手バイラント(Vaillant)は3月10日、スロバキアに建設していたヒートポンプ大型工場が5月に稼働開始すると発表した。
工場はスロバキアの首都ブラチスラバから北に約75キロのセニツァ。建屋面積は約10万平方メートルで、年間生産能力は30万台。「ハンデルスブラット」紙(2023年3月13日)によると、フル生産を行うのは2024年からの見込み。工場には、空調システム技術者用の研修施設や、物流センターなどを併設する。なお、バイラントはスロバキアには既にボイラー生産関連の2工場を有している。
バイラントは現在、本社があるドイツのレムシャイト(デュッセルドルフから東に約30キロ)に加え、フランス、英国にヒートポンプ工場を有する。今回新設したスロバキア・セニツァ工場と合わせると、同社のヒートポンプ生産能力は年間50万台以上となる。同社は2016年からヒートポンプ向けに合計10億ユーロを投資してきた。将来的な市場動向によっては、今後数年間でさらに最大10億ユーロを投資する可能性があるとしている。同社の売上高(2021年)は33億ユーロ、従業員数(同)は約1万6,000人。
暖房機器大手フィースマン(Viessmann)も2022年7月、ポーランドのレグニツァにヒートポンプ工場を新設すると発表している。レグニツァはドイツ、チェコ国境に近い。工場の敷地は約5万平方メートルで、投資額は2億ユーロ以上。2023年中に建設完了予定で、将来的には約1,700人を雇用する見込み。フィースマンは既にレグニツァに20年前から、部品・製品工場を有している。同社の売上高(2021年)は34億ユーロで、従業員数は約1万3,000人。
欧州とドイツでのヒートポンプ販売数は急速に拡大している(2023年2月15日記事、2月21日記事参照)。欧州委員会は3月9日、EU国家補助規制を緩和する「暫定危機・移行枠組み」を採択、国家補助の提供が認められる対象にヒートポンプも含めた(2023年3月15日記事参照)。ドイツ連邦政府も「2024年以降、毎年50万台のヒートポンプ導入」の目標を掲げ、導入を支援する(2022年11月30日記事参照)。需要拡大を受けて、ダイキン工業が2022年7月、ポーランドにヒートポンプ式暖房機の新工場の設立を発表(2022年7月19日記事参照)、パナソニックが9月にチェコでのヒートポンプ式暖房機の生産拡大計画を発表(2022年12月14日付地域・分析レポート参照)するなど、日系企業の動きも進んでいる。
(高塚一)
(ドイツ、スロバキア)
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