米USTR、メキシコ公式規格に絡む障壁を指摘、2020年外国貿易障壁報告書(メキシコ編)
(米国、メキシコ)
米州課
2020年04月10日
米国通商代表部(USTR)が3月31日に発表した2020年版外国貿易障壁報告書(NTE)は、メキシコに関する記述に2019年版より1ページ多い9ページを充てた。報告分野には、貿易協定、輸入政策、貿易の技術的障壁(TBT)・衛生植物検疫(SPS)障壁、政府調達、知的財産権保護、サービス障壁、投資障壁を挙げた。2019年版では言及がなかった政府調達が今回は含まれた。
米国の2019年の輸出先国として、メキシコはカナダに次いで2番目に大きかった。2019年の米国の対メキシコ財貿易赤字額は前年比26.2%増の1,018億ドルだった。対メキシコ輸出額は2,564億ドルと3.4%減少した一方、輸入額は3,581億ドルと3.5%増加し、貿易赤字は拡大した。
NTEでは、貿易協定分野の成果として、トランプ大統領が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の実施法案へ署名した(2020年1月30日記事参照)ことを挙げた。
一方、メキシコの輸入政策の新たな問題点として、貿易に関する一般規則と判断基準を定める経済省令(通称「経済省貿易細則」)の別添2.4.1(「NOM省令」)が2019年6月に改定され、一部輸入品目について、これまで免除されていたメキシコ公式規格(NOM)への適合が輸入時に義務付けられるようになった(2019年7月16日記事参照))ことを指摘した。また、メキシコの健康安全規制当局である連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)による医療機器・医薬品の承認の遅延に懸念を示し、製品承認・登録・検査要件の変更が不明確だとした。
貿易の技術的障壁(TBT)分野では、2019年10月の保健一般法の改正(2019年10月29日記事参照)を取り上げた。これは食品表示ラベル規格を改定し、食品などの包装の表面に、肥満などの原因となる栄養成分の警告表示義務を定めたもの。メキシコは米国にとって世界第2位の加工食品の輸出相手国であり、米国は規格の詳細が確定するまで、メキシコ側と懸念点について議論を続けるとしている(注)。
政府調達分野については、調達プロセスの不透明性や、企業が応札のために短い期間で準備を強いられていることを問題視した。メキシコ政府は2018年12月に、ほぼ全ての政府調達案件を大蔵公債相の管轄下に集約したが、特に政府や公共病院向けの薬剤や医療用品への入札の6割が受理されなかったり、無効となっていることに疑問を呈している。
NTEは、総論編と各国・地域編から成り、総論編は2020年4月8日記事参照。
(注)メキシコ経済省は2020年3月27日に規格の改定を官報で公示し、新たな規格は10月1日から有効となる(2020年4月2日記事参照)。
(甲斐野裕之)
(米国、メキシコ)
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