辻本 希世

INTERVIEW 日本を世界へ。世界を日本へ。

チリ、ブラジル、
そしてメルコスール。
いつでも南米と関わってきた。

辻本 希世

Tsujimoto Kiyo

海外調査部 米州課 中南米班
課長代理

ポルトガル語が活きたブラジル駐在

南米との関わりが私の人生の多くを占めています。幼少期にチリに住み、インターナショナルスクールで出会ったブラジル人の友人も多く、ポルトガル語学科で学ぶきっかけになりました。大学時代の留学先はポルトガルに。ユーロ通貨が導入されたばかりの頃で、国内の物価は急上昇し、経済レベルの異なる国々が、一つの政治・経済統合体を目指す難しさを感じました。「新興国と先進国が通商協定を結んだらどうなるのだろう?」と興味を持ち始めました。それがJETROへの関心がより高まったきっかけです。

入構後は本部、アジア経済研究所や地方事務所勤務を経て、フラジルのサンパウロ事務所駐在になりました。社会人になり再び南米の地を踏むことになったわけです。ブラジルならポルトガル語も活かせます。現地ではスタッフが少ないため幅広く業務を手掛けますが、メインは調査を担当しました。それまでのキャリアで「調査・分析をして発信する」という業務を経験したことがなかったので最初は戸惑いましたが、ある時「これはもう場数を踏んで自分がやるしかないのだ」と気付きました。それから、とにかくレポートを書きまくって、上司に直され、の繰り返し。私にとっては、その文章を直した一枚一枚の積み重ねが成長につながったのではと思っています。

サンパウロの市街の様子。南米で最も国際的な州と言われ、70の異なる国籍から約300万人の移民が暮らす。
また金融市場としても知られ、銀行や損保など日本の金融業も多く進出している。

有益な情報を通じ南米で頑張る企業の側面支援をしていく

調査の業務を進める中で、企業の方々から「制度がなくて困っている」「知財が脅かされている」と言った話を直接伺う場面も少なくありません。調査を端緒に企業や政府関係者をご紹介したり、ブラジルにおけるビジネス環境整備活動にも企業の方と一緒に取り組みました。私自身も業務の幅を広げていきたいという思いもあり、そうしたケースでも積極的に企業の支援をしました。

サンパウロには約5年間おりましたが、「そろそろ帰任のタイミング」と言われ2019年2月に帰任。東京本部では海外調査部で南米の5カ国(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラ)による「メルコスール」の政治経済調査を担当することになりました。やはり南米が絡んできます(笑)。現地に進出を考えている日本企業や、既に進出している企業に有用と思われる情報を調査・発信しています。特にブラジルはもともと日本との関係が強く、約 500社の日系企業が進出しています。そうした良好な関係がありながら、独自の商習慣や規制など通商関係の非関税障壁も多く、日本企業が困る事態も少なくありません。有益な情報を通じていかに企業の側面支援をしていけるかがこの仕事の醍醐味。現地の複雑な法令、ルールや、ビジネス上の障壁を分かり易く発信することを心掛けています。

2020年10月に配信されたメルコスールに関する記事は辻本が担当。FTAが発効すると、これまで以上に接近が想定されるEUとメルコスールの展開がまとめられている。「当然日本にも影響を与えるだろうと考え、テーマとして掘り下げていきました」

情報の価値はアクセス数の多い少ないではなく内容

「メルコスール」は長い歴史がありますが、日本では知る人は少ないかも知れません。しかし現地の日系企業にとってはこの共同市場こそがビジネスの場です。JETROのような公的な組織がしっかりフォローして情報を発信していくことこそ意義があると思っています。情報の価値はアクセス数の多い少ないではなく、その内容であるべき。「この情報を欲している人が必ずいるんだ」という思いを持ちながら原稿を書いています。少なくともブラジルに進出している500社にとっては非常に大切な情報であるはずで、企業の声に真摯に応えていきたいと思います。

そうして発信した情報に、機構のサイトなどで「役に立った」という評価をいただいたり、時には「レポート読みました」「参考になりました」というコメントをいただくこともあります。私の情報発信が南米で頑張る日系企業の活動に少しでもプラスになれば大変嬉しく思います。自分の中に染み込んでいるサンパウロ駐在で感じた「肌感覚」を活かしながら、今ははるか東京から南米の情報を発信しつづけ、地球の反対側で頑張る日系企業を応援しています。

MY FUTURE

最近は中南米の業務が多いですが、日本の地方都市も含めより広い世界を知り、最終的にそれを中南米に還元できれば嬉しいです。これまで北九州貿易情報センターも経験しており、そこでも地元企業や自治体の方々と協業しながら幅広く学んできました。

OFF TIME

ブラジル時代はサーフィンと乗馬を楽しんでいました。向こうではどちらも手軽なのですが、日本では少しハードルが高く少し遠ざかっていて残念。現在は、ランニングにはまっています。
サンパウロ駐在中の休暇を利用して、マンハッタンにあるニューヨーク大学大学院のサマーコースに参加。世界各国から集まる企業家やビジネスパーソンとのディスカッションがとても刺激的だった。写真は、仲良くしていた、ブラジル人の国家公務員と香港人の起業家と。今もウィーチャット等で連絡を取り合っています。

ONE DAY SCHEDULE

  • 09:20

    出社。始業は9:30から。

  • 09:30

    まずはメールチェックとその対応。
    海外から送られてくる原稿をチェック。

  • 10:00

    ブラジルの現地の新聞やレポートを閲覧。
    これで概ね午前中が終わる。

  • 12:00

    近場でランチ。

  • 13:00

    経済産業省とオンライン会議。

  • 14:30

    課内のミーティング

  • 15:00

    ようやく原稿執筆に取り掛かる。エクセルでデータを整理しながらなので時間がかかる。

  • 19:00

    退社。ブラジルとオンライン会議などがある場合は21時スタートが多いが、今日はないので早めに帰れる。