欧州委、COP28の成果を受け、国家エネルギー・気候計画案の改善を助言

(EU、アラブ首長国連邦)

ブリュッセル発

2023年12月25日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は12月13日、アラブ首長国連邦(UAE)で同日閉幕した国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)(2023年12月14日記事参照)の成果である「UAE合意」と、COP28で初めて実施されたグローバル・ストックテイク(GST)の決定文書の採択を歓迎した。特に、2023年4月に提案した2030年までに再生可能エネルギー(再エネ)能力を3倍に拡大し、エネルギー効率を倍増させる宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますがGSTに盛り込まれたことを評価した。

欧州委は、現状ではパリ協定の目標は達成できず、各国地域、2年後のCOP30までに「国が決定する貢献(NDCs)」を科学的根拠に基づき提出する必要があるとした。また、達成のための資金支援の1つである「損失と損害」基金に関して、EUおよび加盟国の貢献は、当初の誓約の3分の2を超える4億ユーロ以上になるとした(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

また欧州委は12月18日、各加盟国が提出した国家エネルギー・気候計画(NECP、2020年10月15日記事、注)の更新案に対する評価を公表し、COP28の成果ならびにEUの2030年の温室効果ガス(GHG)排出削減目標(1990年比で少なくとも55%削減)達成に向け、加盟国に対し、取り組みを加速する必要があると述べた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

欧州委の評価によると、提出済の21加盟国のNECP更新案に基づく、主要目標の達成見込みは次のとおり。

  • 2030年までに少なくとも55%のGHG排出削減:達成見込みは51%(4ポイント不足)
  • 加盟国の排出削減の分担に関する規則(ESR)(2022年11月15日記事参照)に基づく、EU排出量取引制度(EU ETS)の適用外分野におけるGHG排出量をEU全体で2030年までに40%削減(2005年比):達成見込み33.8%(6.2ポイント不足)
  • 土地利用・土地利用変化と林業(LULUCF)規則(2022年11月15日記事参照)に基づく、2030年までに対象部門の年間GHG吸収量がEU全体で3億1,000万二酸化炭素(CO2)換算トン以上、排出量を上回ること:目標に比べ4,000万~5,000万CO2換算トン不足の見込み
  • 再エネ指令(2023年9月20日記事参照)における、2030年のエネルギーミックスに占める再エネ比率目標42.5%:達成見込み38.6~39.3%(3.2~3.9ポイント不足)
  • エネルギー効率化指令(2023年8月2日記事参照)における、2030年のEU全体の最終エネルギー消費を11.7%削減(2020時点の2030年の予測値と比較して):達成見込み5.8%(5.9ポイント不足)

欧州委は目標達成に向け、化石燃料による発電の段階的削減の重要性を指摘。また、運輸部門含め化石燃料に対する補助金は目標達成の障壁になっているとし、エネルギー貧困や再エネへの移行に資する補助金以外は、イノベーションなどに向けられるべきとした。また、エネルギー安全保障の観点からは、中長期の視点を含めたエネルギー供給の多角化を視野に必要となる民間投資、公的資金に関してもNECPの最終版では明確にすべきと勧告した。

なお、今回のCOP28は、2021年10月から2022年3月まで開催された2020年ドバイ国際博覧会の跡地で開催された(2022年9月28日付地域・分析レポート参照)。

(注)欧州気候法、Fit for 55、リパワーEU計画、復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)を反映して2024年6月30日に更新計画を提出するのに先立ち、2023年6月末までに各加盟国に対し更新案の提出を求めていた。今般の評価は、期日までに提出のあった21カ国のデータに基づく。期日後に提出のあったベルギー、アイルランド、ラトビアの評価は2024年初頭に実施される予定。現時点でオーストリア、ブルガリア、ポーランドは未提出。

(薮中愛子)

(EU、アラブ首長国連邦)

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