2022年のVC投資流入額、5年連続で過去最高を更新
(ルーマニア、日本)
ブカレスト発
2023年05月23日
西村康稔経済産業相は5月6日、日本の経済産業相として初めてルーマニアを訪問、同国のセバスティアン・イオアン・ブルドゥージャ研究・イノベーション・デジタル化相(2023年1月23日記事参照)との閣僚会合で共同声明を発表した。このあと開催されたビジネスラウンドテーブルには、両大臣のほか、ルーマニア側からソフトウエア・サービス産業雇用者協会(ANIS)、スタートアップ・アクセラレーターのInnovX、会計士、国内の著名ITスタートアップの代表らが出席、日本側からは電機メーカー、ベンチャーキャピタル(VC)、商社の代表らが出席した。
InnovXのチーフ・イノベーション・オフィサーのダニエル・ドゥミトゥレスク氏は、2019年の設立以来200を超えるデモデーなどのイベントを開催、150社超のスタートアップを採択し、メンタリングやVCとのマッチングを行ったと実績を紹介した。
米調査会社のピッチブックが1月18日に発表したレポート「ヨーロピアン・ベンチャー・レポート(European Venture Report)」によると、世界的な高インフレ、高金利、経済成長の減速などの影響で、欧州全体の2022年のVC投資件数は前年比5.0%減の1万2,383件、投資金額は15.9%減の916億ユーロに落ち込んだという。一方、ルーマニアのテックカンファレンス「ハウツーウェブ(How To Web)」の報告書によると、2022年のルーマニアでの投資件数は前年比4.3%増の73件、投資金額は11.3%増の1億170万ユーロと、件数・金額ともに比較可能な2017年以降で過去最高を記録した。
背景として、DLAパイパーのトドゥル・ネデレア会計士は、両国間の租税条約のメリットや、企業のIT開発による所得が対象従業員1人当たり現地通貨(レイ)で1万ユーロ相当以上なら個人所得税が免税になる優遇措置を紹介した。ANISによると、2021年に2次的業務従事者も加えた情報通信技術(ICT)専門家20万3,000人超のうち、約半数の10万4,000人がコンピュータプログラム開発者に適用される個人所得税免除の対象となった(2022年2月10日付「ナインオクロック」)。
ラウンドテーブルにはこのほか、IT開発大手のジーテック(Zitec、2021年11月16日記事参照)、大型データセンターと人工知能(AI)開発プラットフォームを提供するクラスターパワー(ClusterPower、2021年10月25日記事参照)、2021年にシリーズBラウンド(注)で5,100万ユーロを調達したフィンテックOS(FintechOS、2022年2月9日記事参照)の最高経営責任者(CEO)らが出席した。
(注)ベンチャー企業に投資する段階を示す。ベンチャー企業のステージに応じて、プレシードラウンド(アイデア段階)、シードラウンド(プロトタイプ開発段階)、シリーズA(創業期)、シリーズB(成長期)、シリーズC(成熟期)、シリーズD以降と上がっていく
(西澤成世)
(ルーマニア、日本)
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