米識者・メディア、対ロ姿勢での不一致を指摘もクアッド首脳会合を評価

(米国、日本、オーストラリア、インド、中国、ロシア)

ニューヨーク発

2022年05月25日

米国のジョー・バイデン大統領の訪日に合わせて日本で開催された日米豪印(クアッド:QUAD)首脳会合(2022年5月25日記事参照)に関して、米国時間5月24日時点での米識者・メディアの反応を報告する。

米主要メディアはクアッド首脳会合に関して、4カ国首脳が全ての重要課題において一致した姿勢を取ることが困難なことを示したと論じている。ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版、5月24日)は「クアッドメンバーは中国を注視、ロシアに関する共同コメントはなし」と題する記事でその点を指摘。4カ国は中国の違法な漁業や海洋での軍事活動を抑止するために、インド太平洋地域における船舶の共同監視を設定することに合意したが、ウクライナ侵攻についてロシアを批判しなかったとした。インドがロシアとの関係を考慮して中立的立場を維持していることによるが、この点について同紙は、岸田首相が首脳会合後の記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「各国の歴史的な経緯や地理的状況に鑑みて、同志国の間でも立場が完全に一致しないこともある、これは当然のこと」と回答した点に言及した。一方CNBCニュース(5月24日)は、米保守系シンクタンクのハドソン研究所でインド・南アジア部長を務めるアパルナ・パンデ氏のコメントを引用しつつ、民主国家でありアジアで中国を軍事的に押し返すことのできる唯一の国であるインドの価値は、クアッドで失われていないと論じている。

戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン上級副所長は、米印関係においてロシアへの対応は今後も主要課題になると指摘。ただ「バイデン政権がインドとのトラブルを求めていないことは明らかで、こうした困難な協議は内密に行われるだろう」との見方を示した(「ワシントン・ポスト」紙電子版5月24日)。他方、ブルッキングス研究所東アジア政策研究センターのミレヤ・ソリス所長は5月24日付の論考外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、オーストラリアで総選挙が行われた直後にクアッド首脳会合が行われたことの意義を強調した(2022年5月23日記事参照)。今回の首脳会合は、クアッドの枠組みがより強固で政権交代に耐え得る能力があることを示す機会になったと評価した。また、5月12~13日に開催された米ASEAN特別サミット(2022年5月17日記事参照)からバイデン大統領の韓国・日本訪問(2022年5月24日記事2022年5月24日記事参照)、クアッド首脳会合に至る全面的な外交的関与は、米国にとってアジアの同盟国との戦略的関係を深める上で極めて重要だったと指摘した。

(磯部真一、甲斐野裕之) 

(米国、日本、オーストラリア、インド、中国、ロシア)

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