欧州委、グリーン水素の域内生産支援策「水素銀行」の第1回入札結果を発表

(EU)

ブリュッセル発

2024年05月08日

欧州委員会は4月30日、「欧州水素銀行」(2023年3月22日記事参照)の第1回競争入札(2023年11月27日記事参照)の結果を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。選定された7事業が10年間で合計158万トンのグリーン水素(2023年6月30日記事参照)の生産を計画しているのに対し、総額約7億2,000万ユーロの財政支援を実施する。

再生可能エネルギーを由来とするグリーン水素は化石燃料由来のグレー水素に比べ生産コストが割高であることから、欧州水素銀行は、欧州経済領域(EEA、注1)内でのグリーン水素の生産拡大に向けた支援策として、市場での価格差を埋めるべく補助金を出す。競争入札の結果、選定された事業は、補助金に関する合意書への署名後5年以内にグリーン水素の生産を開始することが求められ、生産するグリーン水素1キログラムごとに固定額のプレミアム(奨励金)を最長10年間にわたり得ることができる。

欧州委によると、第1回入札にはEEAに参加する17カ国に所在する132事業から入札があり、スペインの3事業、ポルトガルの2事業のほか、ノルウェーとフィンランドの各1事業の合計7事業が選定された。7事業の入札価格は、グリーン水素1キログラム当たり0.37~0.48ユーロだった。各事業に対し、10年間の生産予定量(17~511キロトン)に応じて、800万~2億4,500万ユーロのプレミアムの支払いが見込まれる。各事業の概要はプレスリリースを参照のこと。

EUでは、グリーン水素活用による産業界の脱炭素化を促進すべく、グリーン水素の域内生産の2030年目標として年間1,000万トンを掲げている(注2)。欧州委は、パイロット事業と位置付ける第1回入札状況などを踏まえた上で、第2回入札を2024年末までに実施する予定だ。

(注1)EU加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。

(注2)EUの水素政策の詳細は、2023年6月9日付地域・分析レポート「EU、グリーン水素供給と活用に野心」を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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