米政府、欧州5カ国とのデジタル課税合意の延長発表
(米国、オーストリア、フランス、イタリア、スペイン、英国)
ニューヨーク発
2024年02月19日
米国通商代表部(USTR)と米国財務省は2月15日、オーストリア、フランス、イタリア、スペイン、英国とデジタル課税問題に関する合意を2024年6月30日まで延期すると発表した(USTR/財務省)。
米国はトランプ前政権下の2019年から2020年にかけて、独自にデジタル課税を導入した国・地域を対象に、米国の大手IT企業を狙い撃ちしたものとして、1974年通商法301条に基づく調査を開始していた。調査の結果、フランス、イタリア、オーストリア、スペイン、英国の欧州5カ国とインド、トルコのデジタル課税措置が不公正と判断し、対抗措置として、これらの国からの輸入の一部に最大で25%の追加関税を賦課する案を発表していた。
ただし、OECDで議論されていた「経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対するコンセンサスに基づく解決策の策定に向けた作業計画」で、市場国に対し適切に課税所得を配分するためのルールの見直し(第1の柱)が2021年10月に政治合意されたことを受け(2021年10月14日記事参照)、米国は同年、上述の欧州5カ国と、追加関税などの対抗措置を行わないことで合意した。具体的には、(1)米国は301条に基づいて検討していた追加関税措置を終了し、追加的な通商措置を「移行期間」が終わるまでは課さないこと、(2)欧州5カ国は、施行済みのデジタル課税を直ちに撤廃しない代わりに、2021年10月8日から第1の柱が施行されるまでの移行期間に発生したデジタル課税徴収額が第1の柱の施行後1年間の課税徴収額を超えた場合、その超過分が第1の柱に基づいて各国に算定・配分される法人所得税から控除されることなどが合意されている(2021年10月22日記事参照)。
この米国と欧州5カ国が定めた移行期間は当初、2022年1月1日から柱1が発効する日か2023年12月31日までのいずれか早い方とされていた。だが、OECDが2023年12月18日に、柱1のテキストを2024年3月末までに最終化し、署名式を2024年6月末までに行うと発表したことを受け、米国と欧州5カ国は移行期間を2024年6月30日まで延長することとした。
米国は、デジタル課税措置が不公正と判断したトルコ、インドとも、欧州5カ国と同様の合意を結んでいる。トルコとは2021年11月に、欧州5カ国との合意が同国にも適用されるかたちで合意しているが(2021年11月24日記事参照)、今回の延長措置もそのまま適用されるか否かについては明示されていない。一方で、インドとは、合意が適用される「一定の期間」を2024年3月末までと定めている(2021年11月25日記事参照)。
米国と欧州5カ国は今回、OECDの発表に併せて合意を延長したが、米国内で柱1に対するコンセンサスが得られるか懐疑的な見方があるほか、柱1に参加しているカナダが2024年中に独自のデジタル課税を施行する姿勢を見せているなど(通商専門誌「インサイドUSトレード」2月15日)、今回延長された期限までにOECDの議論がまとまるのか、注視する必要がありそうだ。
(赤平大寿)
(米国、オーストリア、フランス、イタリア、スペイン、英国)
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