スリランカ進出日系企業の経済危機影響調査、2022年より回復の兆し

(スリランカ)

コロンボ発

2023年12月25日

ジェトロは2023年8月から9月にかけて、スリランカに拠点を構える日系企業に対し、2022年春以降のスリランカ経済危機の影響に関するアンケート調査を実施し、計32社(製造業12社、非製造業20社)から回答を得た。このスリランカの経済危機による影響に関する調査は、2022年7月にスリランカ日本商工会と共同で実施した調査(2022年8月3日記事参照)に続き、今回が2回目となる。本調査は、アジア・オセアニア地域の進出日系企業を対象とする「2023年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」と併せて実施した。

まず、経済危機による自社の操業への影響について、前年比13.3ポイント増の80.0%が「悪影響があった」、16.7ポイント減の13.3%が「影響はなかった」と回答した(添付資料図1参照)。当初の想定よりも、経済危機が現地日系企業に与える影響は深刻だったといえる。

続いて、経済危機で受けた悪影響の具体的理由(複数回答)としては、「ガソリン・燃料不足」(82.6%)「為替の下落」(60.9%)「電力不足・停電」(60.9%)「所得税などの増税」(60.9%)などがあげられた(添付資料図2参照)。

一方で、徐々に危機からの回復の兆しもみられる。経済危機で悪影響を受けた企業のうち、2022年同時期と比べて33.3%が「改善」と回答し、「横ばい」が50%、「悪化している」が16.7%だった(添付資料図3参照)。

操業状況が、経済危機から改善された具体的な要因(複数回答)では、「停電がなくなった」「ガソリン・燃料不足が確保された」(いずれも75.0%)、「物流問題が解消された」(37.5%)、「物価の上昇が落ち着いた」(37.5%)などの回答があげられた(添付資料図4参照)。

スリランカでは、電気料金が引き上げられた2023年3月以降は計画停電がなくなり(2023年3月1日記事参照)、2023年9月には給油上限に関する規制も撤廃された(2023年9月6日記事参照)。加えて、IMFによる4年間で総額約30億ドルの金融支援パッケージが承認された2023年3月以降、外貨準備高の拡大とともに物価上昇が鈍化しており、2023年第3四半期(7~9月)には経済危機以降初のプラス成長となった(2023年12月21日記事参照)。

他方、「スリランカ・ルピー為替の回復」や「金融決済」が改善されたという回答は少なく、債務再編を通じたスリランカに対する国際的信用の回復が、引き続き求められている。

(大井裕貴)

(スリランカ)

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