第3四半期GDPは前年同期比3.3%、建設業の記録的成長が牽引

(メキシコ)

メキシコ発

2023年11月27日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は11月24日、2023年第3四半期(7~9月)の産業分野別実質GDP成長率PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注1)を発表した。全体では前年同期比3.3%、季節調整済み前期比1.07%で、堅調な伸びを維持している。前年同期比成長率を産業別にみると(添付資料表1参照)、農牧林・水産業5.7%、鉱工業4.3%、サービス業2.7%と全てプラスとなった。季節調整済み前期比(添付資料表2参照)でみても、農牧林・水産業2.65%、鉱工業1.31%、サービス業0.93%と全てプラスだった。特に鉱工業とサービス業の伸び率が目立ち、GDP全体を鉱工業は1.16ポイント、サービス業は1.81ポイント押し上げた。

鉱工業では、政府が優先事業としている公共事業(注2)への投資が拡大している影響で、建設業が前年同期比24.4%増、前期比6.84%増と驚異的な数値を記録し、第3四半期のGDPを0.72ポイント押し上げた。製造業は前年同期比0.2%増、前期比0.38%増の微増で、製造業のうち輸送機器製造業は前年同期比6.8%と好調を維持しているが、第2四半期(4~6月)の同14.3%と比べて伸び率は減少している。輸送機器製造業以外の業種では前年同期比でマイナス成長の業種もあり、この要因には、いまだ1ドル17ペソ台を推移している通貨ペソ高の影響があるとみられ、輸出を行う製造業に悪影響が出ている。

サービス業の内訳をみると、卸売業が前年同期比4.6%と復調を示し、小売業も同3.0%と堅調な伸びを維持した。前期比では卸売業が3.47%増、小売業は0.74%減だった。伸び率が著しいのは通信・マスメディアで、好調だった第2四半期に続き前年同期比9.9%増だった。ホテル・レストラン業は前年同期比では3.0%、前期比でも3.61%となり、第2四半期の減少から盛り返した。労働法改正による人材派遣の原則禁止(2021年4月27日記事2021年8月2日記事参照)により、2021年第3四半期以降不振を続けているビジネス支援サービスは前年同期比3.8%減と、9四半期連続のマイナスを記録した。ただ、前期比では第2四半期以降プラスに転じており、前四半期の1.65%よりも高い3.61%で、回復の兆しが見えてきた。

中銀副総裁は、2023年のGDP成長率は3.3%以上となると予想

ジョナサン・ヒース中央銀行副総裁は自身のX(旧ツイッター)で「第4四半期(10~12月)の成長率が前期比0.0%でも、2023年のGDP成長率は3.3%になるだろう。仮に第4四半期が同0.3%しか増加しなかったとしても、2023年のGDP成長率は3.4%に達するだろう」と述べ、中銀の8月30日付の四半期レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、2023年の実質GDP成長率見通しは平均3.0%と発表したが、さらなる上方修正の可能性を示した。

(注1)INEGIは、2023年第3四半期から国民経済計算の基準年を2013年から2018年に変更したため、数値が過去にさかのぼって修正されており、第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率(2023年5月29日記事参照)の数値とは継続性がない。

(注2)アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール政権下で進められてきた4大プロジェクトのうち、マヤ観光鉄道(2020年5月25日記事参照)とテワンテペック地峡開発(2023年7月4日記事参照)への公共投資が拡大している。

(阿部眞弘)

(メキシコ)

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