中国政府はIPEF閣僚会合と首脳会合について言及せず、報道では有識者が批判的

(中国、米国、日本、韓国、ASEAN、インド、ニュージーランド、オーストラリア)

北京発

2023年11月24日

インド太平洋経済枠組み(IPEF)の閣僚会合が11月13~14日(2023年11月17日記事参照)、首脳会合が16日(2023年11月21日記事参照)(いずれも現地時間)、米国サンフランシスコで開催された。

中国政府は、一貫してIPEFに対し批判的な見解を示してきたが(注)、今回の会合については、現時点(11月22日午後5時時点)で公式には言及していない。

現地報道では、有識者の批判的な声が取り上げられている。

復旦大学国際問題研究院の呉心伯院長は、APEC期間中にIPEF閣僚会合を開催したことについて触れ、APECは経済の一体化と貿易自由化を推進するものである一方、IPEFは排他的なものであるとして、「米国のアジア太平洋の経済的一体化における虚偽性を表している」と批判した(「21世紀経済報道」11月15日)。

対外経済貿易大学国際経済貿易学院の崔凡教授は、いかなる地域貿易協定も、ある対象を排除し、グループを作ろうとするものであるなら、開かれた多国間主義という精神にそぐわないと批判した(「第一財経」11月16日)。

中関村新型電池技術イノベーション連盟の于清教秘書長は、今回の会合で創設された重要鉱物対話の枠組みについて、「中国に対するものであることは言わずとも明らかだ」とした上で、「人為的に市場に干渉し、経済・貿易を政治化する行為は本当の意味で支持を得ることはできない」とし、多くの国は米国に協力すると同時に、中国との協力も継続するだろうとした(「環球時報」11月18日)。

商務部国際貿易経済合作研究院米国・大洋州研究院の周密副所長は、IPEFは(1)参加者が限られており、アジア・太平洋地域の全ての国の共通の利益を代表しているわけではない、(2)議論されているルールの中に、価値観、イデオロギー、国家安全など非伝統的な要素が加えられているという点を挙げ、「公正、合理的、透明という国際貿易ルールの体系と矛盾する」としている(「上観新聞」11月15日)。

(注)中国政府の反応は2022年5月24日記事2022年6月1日記事2023年6月5日記事参照。

(河野円洋)

(中国、米国、日本、韓国、ASEAN、インド、ニュージーランド、オーストラリア)

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