米商務省、標準化機関での輸出管理対象技術・ソフトウエア開示要件を明確化
(米国、中国)
ニューヨーク発
2022年09月16日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月9日、輸出管理規則(EAR)を改定し、標準化機関におけるEAR対象品目の開示要件を明確化する暫定最終規則を官報で公示した。規則は即日有効となったが、BISは規則の内容について11月8日までパブリックコメントを受け付ける(注1)。
今回のEAR改定は、BISが2020年6月に発表した改定に続くものとなる。BISは前回の改定で、中国の華為技術(ファーウェイ)が参加する標準化機関で特定のEAR対象技術をBISの許可なくファーウェイや関連企業に開示できるよう規則を緩和した(2020年6月22日記事参照)。ファーウェイや関連企業は2019年以降、EAR上のエンティティー・リスト(EL)に掲載され、それら企業へのEAR対象品目の輸出・再輸出・国内移転(みなし輸出・再輸出を含む)は原則として不許可となっている。そのため、米国企業はEAR違反を恐れて、ファーウェイが既に参画している標準化機関への積極的な関与を控えていた。こうした状況に対し、規則緩和により米国企業の参画を後押しする目的があった。
一方、BISの官報によると、前回のEAR改定に対して、産業界などからは標準化機関への参画に関する不確実性が完全には払拭されていないとのコメントが寄せられた。その中には、規則緩和の対象をファーウェイや関連企業に限定していることなどに関するコメントがあった。
こうした懸念を受け、BISは今回、次の4点についてEARの改定を行った。
(1)規則緩和の対象となる標準策定活動の範囲を明確化し、「標準に関連する活動(standards-related activity)」と定義。具体的には、最終的に公開する意図を持って標準を策定、採用または適用する活動を指す。
(2)規則緩和の対象品目に、EAR99に該当する、またはEARの規制品目リスト(CCL)で管理理由が反テロリズム(AT)規制のみの技術またはソフトウエアを指定(前回の改定では技術のみが対象となっていた)。
(3)規則緩和の対象品目に、暗号機能の開発や生産、使用を目的とした技術またはソフトウエアを指定。
(4)規則緩和をELに掲載されている全ての事業体に適用。
BISは官報で、標準の策定と普及における米国の参加とリーダーシップを譲り渡すことによって生じる国家安全保障上の脅威は「標準に関連する活動」で特定の低水準の技術とソフトウエアをEL掲載事業体に限定的に開示することに関わるリスクを上回ると説明した。輸出管理を担当するアラン・エステべス商務次官もプレスリリースで、「米国の利害関係者は国際標準化機関に全面的に関与する必要があり、重要だが時に目に見えない標準が商業的な意味合いだけでなく、国家安全保障にとって重大な影響を持つ場合にはなおさらだ」と指摘した。
なお、今回のEAの改定は、そのほかのエンドユース・エンドユーザー規制には影響を与えず、それらに基づく許可要件は引き続き適用される(注2)。
(注1)連邦政府ポータルサイト(ドケット番号BIS-2020-0017またはRIN 0694-AI06)へのオンライン提出が可能。
(注2)米国の輸出管理規則については、ジェトロの調査レポート「厳格化する米国の輸出管理法令(2019年9月)」「続・厳格化する米国の輸出管理法令 留意点と対策(2021年8月)」を参照。
(甲斐野裕之)
(米国、中国)
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