欧州産業連盟、中国との気候や標準化分野の協力強化をEUに提言

(EU、中国)

ブリュッセル発

2022年07月21日

EUと中国は719日、第9回ハイレベル経済貿易対話(HED)を開催した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。国際情勢や両者間の貿易・投資関連の課題について話し合い、金融サービス部門では成果があったものの、2021年に大筋合意した包括的投資協定(2021年1月5日記事参照)については触れられなかった。

HEDに先立ち、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は同日、EU・中国関係に関する意見書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。同連盟は2020年に発表した意見書(2020年1月17日記事参照)で是正すべきとした市場参入での相互主義原則の欠如や競争条件の不公正さは変わらず、さらに、中国の影響力の高まりや同国の新型コロナウイルス対策に起因するサプライチェーンの混乱といった新たなリスクも生じていると指摘。欧州企業にとって中国市場は今後も主要市場ではあるが、中国市場に過度に依存し、経済的なリスクを抱えることの短・長期的なリスクを徹底的に分析し、影響緩和策を講じることが重要だとした。一方で、EUは、特に多国間協議による解決策の模索が必要な分野で、中国と必要な協力関係を維持し続けなければならないとも指摘。気候政策と標準化を挙げて、中国との協力強化へ向けた提言を行った。

EUETSや標準化制度の知見を生かし、中国への支援や対話を継続すべきと提言

気候政策について、ビジネスヨーロッパは、パリ協定に基づく取り組みやWTOの気候関連イニシアチブ推進に向けて、EUが、世界最大の温室効果ガス排出国と同時に再生可能エネルギーへの世界最大の投資国である中国の参画を促す努力を続けることが重要だとした。また、中国は2021年、排出量取引制度(ETS)を開始したが、対象が限定されており、炭素価格も低く、排出上限値が明確でないことから、その効果は限定的だと指摘。そこで、EUEU ETSから得られた知見を共有しながら、中国版ETSの完全実施に向けて、同国への支援を続けるべきだとした。さらに、グリーン化関連の技術は互いの市場参入を容易にするためには互換性を持たせ、コストもできるだけ軽減する必要があり、EU・中国の国際規格策定での協力は不可欠だとした。規格策定に当たっては「グリーン」「カーボンニュートラル」といった用語についても、共通した定義が必要として、EUと中国による「コモン・グラウンド・タクソノミー」(注)に関する取り組みを歓迎するとした。

また、標準化に関連し、官民協力に基づいて国際規格との調和を優先するEUの標準化制度とは異なり、中国の制度は国家主導的で透明性に欠け、外国企業にとって参入障壁とも言え、さらには「一帯一路」構想を通じて、第三国にも中国の規格の採用を促していると指摘。特にハイテク分野で中国が国際的な標準化関連機関で存在感を高める中、EUは加盟国や同じ志向を持つ国と戦略的に協力し、「グローバル・ゲートウェイ」構想(2021年12月3日記事参照)や通商政策を通じて国際規格を普及させ、中国に対して国際規格の採用や規格策定への参画を促し続けるべきだとした。そのためには、中国との対話を継続して共通の利益を見いだし、EUが指南役となって中国の標準化制度改革を促していくことや、市場参入を妨げる製品規制についても協議を継続すべきだと提言した。

(注)ジェトロ調査レポート「EUサステナブル・ファイナンス最新動向‐タクソノミー規則を中心に‐」(20226月)の1718ページ参照。

(滝澤祥子)

(EU、中国)

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