欧州委、英国との不要不急の渡航を制限する一方、交通と物流の維持を勧告

(EU)

ブリュッセル発

2020年12月23日

欧州委員会は12月22日、英国とEU加盟国間の移動に関するEU域内の協調的な対応に向けた勧告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。英国での新型コロナウイルスの変異種による急速な感染拡大を受け、同日現在でフランス(2020年12月21日記事参照)やベルギー(2020年12月23日記事参照)など多くの加盟国が英国との交通を一時的に遮断しており、今回の勧告はこうした事態を踏まえたものだ。勧告には法的拘束力はなく、今後の制限の実施や解除、その方法に関しては、各加盟国の判断に基づくことになる。

勧告では、12月31日までは英国はEU離脱後の移行期間中で、EU域内の移動の自由を含むEU法の適用が続くことから、10月13日付理事会勧告(2020年10月14日記事参照)に基づき、移動の自由は原則として認められるべきだとしつつ、新たな通知までは英国と加盟国間の不要不急の渡航は制限すべきとした。ただし、以下の渡航者は、出発72時間前のPCR検査あるいは抗原検査による陰性結果の提示と、10日間の自主隔離措置など一定の条件で、英国からEUへの渡航制限から除外されるべきとした。

  • 母国や居住国へ渡航する加盟国の国籍保持者、英国国籍保持者、加盟国の長期滞在者など域内の移動の自由の権利を有するEU域外の国籍保持者(検査や隔離が条件)
  • 医療従事者などで渡航が必要不可欠な者(検査が条件、隔離なし)
  • 交通機関の従事者(検査・隔離なし)
  • 乗り継ぎの場合(検査が条件、隔離なし)

また、必要不可欠な渡航の手段を確保するために、飛行機や鉄道の運行停止は解除すべきとした。貨物輸送に関しても、物流の維持のために入域制限を行うべきでないとした。

2021年1月以降は、英国からEUへの入域は原則認めない方針

2021年1月1日以降は、英国の移行期間終了に伴い、英国はEUとの関係でEU域外国になることから、EU域内への不要不急の旅行の一時的な制限に関する6月30日付理事会勧告(2020年7月1日記事参照)の対象となる。よって、EU理事会が英国を入域制限解除対象国リスト(最新版は2020年12月21日記事参照)に追加しない限り、必要不可欠な場合を除き、英国からのEUへの入域は原則として認めない方針だ。ただし、加盟国の国籍保持者、域内の移動の自由の権利を有するEU域外の国籍保持者(英国国籍保持者を含む)は、一定の条件下でこうした制限から除外されるべきだとした。

(吉沼啓介)

(EU)

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