ブレグジットを控えた英国企業、フィリピン小売市場への投資を検討

(フィリピン、英国)

マニラ発

2019年10月09日

在フィリピン英国商工会議所(BCCP)のクリストファー・ネルソン理事長は9月30日、10月末にも英国がEUを離脱(ブレグジット)する可能性が高まる(2019年9月30日記事参照)中、多くの英国企業がフィリピンへの投資を検討していると、フィリピンの地元メディア向けの記者会見において説明した。

BCCPのネルソン理事長は、特に小売業の外資規制を緩和する小売自由化法改正法案が可決された場合、多くの英国企業がフィリピンの小売市場に参入することになるとした上で、「フィリピンの消費市場は急速に拡大しており、多くの英国企業が参入に関心を持っている」とコメントした。また、ネルソン理事長は、2018年の国会会期でも同改正法案可決の支持をしたものの可決されなかったが、今国会では必ず通ることを願っている、と述べた。

小売自由化法の現行法は、外資系企業に対して払込資本金250万ドル以上、1店舗当たりの資本金83万ドル以上を求めているが、改正案は払込資本金を20万ドルに減額し、1店舗当たりの資本金規制を撤廃する。また現行法は、親会社の純資産を2億ドル以上、小売業で5年以上の実績を求めていたが、この規制も撤廃する。さらに、高級品やぜいたく品に特化した企業に求められていた1店舗当たり25万ドル以上の資本金規制も撤廃される(2019年9月5日記事参照)。

国連人権理事会が2019年7月、ドゥテルテ政権の違法薬物取り締まりキャンペーンにおける人権状況の調査の実施を採択したことで、採択に賛成した英国を含む複数国との融資や援助の契約を中止するようドゥテルテ大統領が命令を出したことの影響について、ネルソン理事長は「英国とフィリピンは長年、友好関係を築いており、民間ベースのビジネスへの影響はないと考える」と述べた。

ネルソン理事長はさらに、小売自由化法改正法だけではなく、2018年成立したビジネス環境改善法(2019年7月25日記事参照)や、ドゥテルテ政権が進める大規模なインフラ整備計画「ビルド、ビルド、ビルド」プログラム(2017年10月12日記事参照)などにより、フィリピンの投資環境は大幅に改善しているとした上で、「英国に帰国するたびに、ブレグジットを控えた英国企業に対してフィリピンの魅力を説明している」とした。

フィリピン統計庁(PSA)によると、2018年の英国からのフィリピンへの直接投資認可額は前年比23.5%減の38億1,100万ペソ(約80億円、1ペソ=約2.1円)となり、国籍別で9位、シェアは2.1%にとどまった(2019年3月18日記事参照)。

(坂田和仁)

(フィリピン、英国)

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