トランプ米大統領、重要鉱物の輸入に対する232条調査開始を商務長官に指示

(米国、中国)

調査部米州課

2025年04月16日

米国のドナルド・トランプ大統領は4月15日、ハワード・ラトニック商務長官に対し、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づき、重要鉱物などの輸入が米国の国家安全保障に及ぼす影響を判断するための調査開始を指示する大統領令を発令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

232条は、特定製品の輸入が米国の国家安全保障に脅威を及ぼすと商務長官が判断した場合に、追加関税などの措置を発動する権限を大統領に認めている(注1)。トランプ政権は4月3日、「米国第一の通商政策」に関する報告書の要約を公開し、その中で重要鉱物などについて、232条調査の開始を検討するとしていた(2025年4月7日記事参照、注2)。

同時に発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、レアアースを含む重要鉱物は国家安全保障と経済の強靭(きょうじん)性に不可欠な一方、その供給を敵対国に依存しているとの認識を示した。中国がガリウム、ゲルマニウム、アンチモンなどの対米輸出を規制したことにも触れて(2024年12月6日記事参照)、外国の生産者が価格の操作や、過剰生産、輸出規制などのかたちでその独占力を、米国に対する地政学的また経済的なレバレッジとして利用していると懸念を表明している。調査結果を踏まえてトランプ氏が追加関税を課す場合、4月2日に発表した相互関税と置き換わるとしている。なお、調査対象とする品目は今後、商務省が特定するとみられるが、大統領令では重要鉱物などの定義を次のとおり記載している。

  • 重要鉱物:米国地質研究所(USGC)が公表する重要鉱物リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに掲載の物質とウラン。
  • レアアース:エネルギー省が2020年4月の「重要鉱物レアアースサプライチェーン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で特定した17種類。
  • 重要鉱物の加工品:鉱山から採掘された鉱石が金属、金属粉末、またはマスター合金に変換されるまでの加工を経たもの。
  • 派生品:加工された重要鉱物を原材料として含む全ての製品。半製品(半導体ウエハー、陽極、陰極など)と最終製品(永久磁石、モーター、電気自動車、電池、スマートフォン、マイクロプロセッサー、レーダーシステム、風力タービンとその部品、高度な光学機器など)も含む。

商務長官は大統領令が発表された日から270日以内に調査を完了し、米国の国家安全保障に脅威を及ぼすか否かの判断や、追加関税などの措置の提言を含めた報告書を大統領に提出する。今後は、トランプ政権発足以降に232条調査が開始されている銅、木材、半導体、医薬品と同様に、まずは商務省がパブリックコメントを募集する官報を公示するとみられる(注3)。

(注1)パブリックコメントは連邦政府ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから提出可能。案件番号は半導体がBIS-2025-0021、医薬品がBIS-2025-0022。

(注2)232条に基づく調査、報告、措置決定などの手続きの詳細は、2024年12月10日付地域・分析レポート参照

(注3)銅と木材の調査については2025年3月14日記事、半導体と医薬品の調査については2025年4月15日記事を参照。

(磯部真一)

(米国、中国)

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