初の原子力エネルギー・サミット開催、原子力活用に向けた課題も

(ベルギー、世界)

ブリュッセル発

2024年04月02日

EU理事会(閣僚理事会)の議長国ベルギーと国際原子力機関(IAEA)は3月21日、ブリュッセルで初の「原子力エネルギー・サミット」を開催した。30以上の国・地域が参加した。2023年12月の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)での、2050年までに世界の原子力発電容量を3倍に増加させる宣言(2023年12月6日記事参照)を受けて実施された。

出席した欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機などを受け、「原子力発電は、水力発電に次ぐ世界2位の低排出電力源だ」と、気候中立目標達成に向けた原子力の可能性を強調した。欧州委予測では、2050年までにEUの電力供給の柱となる再生可能エネルギー(再エネ)の安定供給を支えるのは原子力だ。フォン・デア・ライエン委員長は原子力発電の促進に向けた課題として、第1に新規投資の確保、第2に原子力発電産業側の工期と予算の厳守、第3に脱炭素熱や低排出水素など、新たに原子力が貢献できる機会を模索すること、最後に小型モジュール炉(SMR)などの原子力技術の開発を挙げた。

欧州議会が2023年9月に作成した欧州の原子力エネルギーの現状を分析したレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)などによれば、原子力での発電は加盟国の半数ほどで行われている(添付資料表参照)。このうち、ドイツは2023年4月に「脱原発」が完了した一方、フランス(2022年2月17日記事参照)などの7カ国は、新規原子炉の建設計画を進めている。現地報道によれば、ベルギーのド・クロー首相はサミットで、政府が2022年に合意した、国内で稼働中の2基の原子炉の10年間延長(2022年3月24日記事参照)について、さらに10年間延長することを支援すると言及した。

EUでは、ネットゼロ産業法案で原子力も再エネと同等の支援対象とする(2024年2月14日記事参照)などの動きがみられる。他方、現地報道によれば、欧州投資銀行(EIB)は原子力発電への投資には慎重な姿勢を維持しているという。

(大中登紀子)

(ベルギー、世界)

ビジネス短信 ea6651ca1e7227a7