欧州委、中国での医療機器の公共調達に関する調査開始

(EU、中国)

ブリュッセル発

2024年04月30日

欧州委員会は4月24日、中国での医療機器の公共調達で、応札するEU企業に対し、中国政府が差別的な措置を実施している疑いがあるとして、調査を開始した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2022年に施行された国際調達措置(IPI)規則(2021年6月10日記事参照)に基づく初の調査となる。欧州委は、中国政府によるEU企業に対する差別的な措置が確認され、かつ中国政府が十分な解決策を示していないと結論づけた場合、EU域内での公共調達への中国企業のアクセスを制限する対抗措置を必要に応じて実施する。今後9カ月以内(遅くとも14カ月以内)に結論を出すとしている。

調査の対象となるのは、中国政府が実施していると疑われる(1)中国製医療機器を優遇する措置、(2)輸入品の調達を規制する措置、(3)営利企業が対抗できない異常な低価格での入札につながる調達条件の付加だ。欧州委は調査と並行して、調査対象の措置に関して中国政府に意見を求めるとともに、中国政府との協議を実施する。

欧州委は、EU企業に対する差別的な措置があると判断した場合、域内の公共調達での中国企業の応札に対し、スコア調節措置(総合評価落札方式では最大50%のマイナス評価を、価格のみに基づく落札方式の場合は入札額の2倍での評価を適用)を課すこと、あるいは中国企業を入札から排除することができる。

EUが中国とのデリスキング(リスク軽減)の方針を明確にして以降(2023年7月4日記事参照)、欧州委は通商防衛措置を最大限活用し、中国に対する調査を積極的に実施している。2023年10月に中国製バッテリー式自動車(BEV)に関する反補助金調査(2023年10月6日記事参照)を、2024年2月以降は中国企業による電気鉄道車両、太陽光パネル、風力タービンの域内公共調達への応札に対する外国補助金規則(2023年7月13日記事参照)に基づく調査(2024年4月15日記事参照)を実施している。現地報道によると、中国製BEVに関する調査の結論は早ければ今夏にも出されるとしており、今後の欧州委の動向が注目される。

(吉沼啓介)

(EU、中国)

ビジネス短信 ae55691135593c72