バイデン米政権、イランに対する金融制裁と輸出管理強化を発表

(米国、イラン、イスラエル、英国、ドイツ、アラブ首長国連邦、トルコ、香港)

ニューヨーク発

2024年04月19日

米国のバイデン政権は4月18日、イスラエルに対するイランのミサイル・無人航空機(UAV)攻撃(2024年4月15日記事参照)を受けて、イランに対する新たな制裁を発表した。制裁は省庁横断的に講じ、財務省は主にイランの事業体・個人を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定したほか、商務省はイラン向けの輸出管理の強化を発表した。

米国財務省外国資産管理局(OFAC)はイランなどの事業体10社と個人16人をSDNに指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。具体的には、攻撃に使用したUAVの開発に関与したとされるイラン企業やその幹部、民兵組織などの代理勢力にUAVを拡散したとされるイラン・イスラム革命防衛隊コッズ部隊(IRGC-QF)の幹部、同組織の活動を支援したとされるイラン企業の幹部などをSDNに指定した。イラン国外では、2020年にSDNに指定していたイランの大手鉄鋼メーカーのフーゼスタン・スチール(2020年1月14日記事参照)の製品購入や原材料調達などに関与したとされる英国、ドイツ、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコ、香港に所在する企業をSDNに指定した。SDNに指定された事業体・個人には、在米資産の凍結や、米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止を科す(注2)。

また、商務省産業安全保障局(BIS)はイラン向けの輸出管理規則(EAR)を強化すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。正式には4月22日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで最終規則を公示する。具体的には、技術レベルの低い品目に対しても、イランのアクセスの制限を図る。米国外で生産された製品でも、米国製の技術・ソフトウエアを用いている場合に、事前の輸出許可申請を求める外国直接製品(FDP)ルールの適用品目を拡大する。これにより、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、米国、英国、日本、EUなどが協力して作成した「共通の高度優先品目リスト」(2024年2月26日記事参照)に含まれる全ての品目がEARの746章付則7(注3)に追加される。

ジョー・バイデン米大統領は4月18日に制裁発動に関する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、「イランの攻撃を可能にする、あるいは支援する全ての者に対して、はっきりさせておこう。米国はイスラエルの安全保障にコミットしている」と述べた。さらに「財務省を含む私のチームに、イランの軍事産業をさらに弱体化させる制裁を継続するよう指示した」と述べ、さらなる制裁発動の可能性を示唆している。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDN指定を今回受けた事業体・個人の詳細はOFACのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。このほか、制裁対象の事業体・個人などについては、OFACのデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のIranを選択し、Searchをクリックすると確認可能。

(注3)EARの746章付則7には、イランやロシア・ベラルーシ向けのFDPルールの対象品目の一部がHTSコード6桁で特定されている。

(葛西泰介)

(米国、イラン、イスラエル、英国、ドイツ、アラブ首長国連邦、トルコ、香港)

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