ウェビナー「復興に向けたウクライナのビジネス環境」をジェトロとEBRDが共催

(ウクライナ、日本)

調査部欧州課

2024年03月27日

ジェトロは3月19日、欧州復興開発銀行(EBRD)と共催でウェビナー「復興に向けたウクライナのビジネス環境」を開催した。ウクライナ経済は2023年にプラス成長に転じた。戦時下でも投資が活発だという。ウクライナ復興ビジネスのうち、日系企業はインフラ分野に関心があるが、治安面と情報不足を課題に挙げた。EBRDは支援を継続することを明らかにした。

冒頭あいさつで登壇したセルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使は、日本政府が企業関係者に渡航許可を出すことに言及し、現地に足を運ぶよう呼びかけ、日本が主導して復興に取り組むことへの期待を表明した。

ウクライナ経済省のビャチェスラフ・オベチキン投資局長は、ウクライナ経済の現状や投資先としての魅力を説明した。ウクライナ経済は2023年のGDP成長率が5.8%に回復し、2024年は5%と予測している。戦時下だが投資が盛んで、製薬のバイエル、建材のキングスパンなど43の多国籍企業が活動しているという。有望分野はエネルギー、運輸、農業、グリーンスチール(注1)、重要な原材料(注2)などだ。日本企業に対して、投資リスク軽減のため、日本貿易保険(NEXI)の2,000億円の信用枠を活用するよう呼びかけた。

デロイト・ウクライナのワシル・ドロボト税務法務部門長は、外国企業のビジネスチャンスについて語った。ウクライナには質の高い労働力、加工業の発達、EUに近い立地などの優位な条件のほかに、工業団地入居者やIT企業・ハイテク開発企業への優遇措置があり、これを進出の足掛かりにするのも有効だと指摘した。

ジェトロ・ワルシャワ事務所の柴田哲男次長は、ウクライナ復興に対する日系企業の関心や動向について述べた。ジェトロの最近の調査では、欧州進出日系企業の約半数がウクライナでの復興支援・ビジネス活動に関心があると回答した(2023年12月26日記事参照)。一番の関心分野はインフラ支援だった。課題では治安面と情報不足を挙げたところが多く、ジェトロとして、今後現地に入り、日本企業に役立つ情報を提供していくと述べた。

EBRDのマッテオ・パトローネ東欧・コーカサス担当マネージングダイレクターは、同行のウクライナ支援内容を説明した。EBRDはウクライナに、2022年2月以降の2年間で38億ドルを投資した。貿易金融、エネルギー安全保障、主要インフラ、食料安全保障、民間部門の回復力確保の5つを主要分野としており、中でもエネルギー安全保障に力を入れている。40億ユーロの増資に伴い、過去2年間と同じレベルで支援を継続する計画だと述べた。

EBRD東京事務所の大矢伸氏は、閉会のあいさつで、状況は厳しいが大きなビジネスチャンスもあり、日本企業も2月の日・ウクライナ経済復興推進会議(2024年3月1日記事参照)をきっかけに始動してほしいと締めくくった。

ジェトロとEBRDは、日・ウクライナ経済復興推進会議で協力覚書を締結した。本ウェビナーがその後初の協力事業となった。

(注1)生産時の二酸化炭素(CO2)などの排出量を削減した鉄鋼材料のこと。

(注2)資源の供給リスクが高く、供給が制限された際の経済への影響が大きい鉱物資源。英語でCritical Raw Materials という。欧州委員会は2011年から一覧表を公表し、3年ごとに改定している(2020年9月4日記事参照)。

(小林圭子)

(ウクライナ、日本)

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