国際司法裁判所、イスラエルに集団殺害防止の暫定措置を命令

(イスラエル、パレスチナ、南アフリカ共和国、オランダ)

テルアビブ発

2024年01月29日

オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は1月26日、南アフリカ共和国(南ア)が集団殺害の疑いでイスラエルをICJに提訴した件を巡り、イスラエルに対して、パレスチナ自治区ガザ地区のパレスチナ人への集団殺害を防止するための暫定的な措置を命じたPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)

南アは2023年12月29日、「ガザのパレスチナ人に関するイスラエルの行為は、ジェノサイド条約に基づく義務に違反している」と主張し、ICJに軍事作戦の即時停止などの暫定措置を求め(2024年1月12日記事参照)、イスラエルは反論していた(2024年1月15日記事参照)。

ICJは、最終決定が下されるまでの間、一定の措置を示すことが必要とし、イスラエルに対し、(1)ジェノサイド条約第2条の範囲内の全ての行為を防止するために、その権限内にあるあらゆる措置を講じること、(2)イスラエル軍が上記(1)のいかなる行為も行わないことを直ちに保証すること、(3)イスラエルは、ガザ地区のパレスチナ人へのジェノサイドを直接的かつ公然と扇動する行為を防止し、罰するために、その権限内にあるあらゆる措置を講じること、(4)ガザ地区のパレスチナ人が直面する過酷な生活状況に対処するため、緊急に必要とされる基本的サービスと人道支援の提供を可能にする即時かつ効果的な措置を講じること、(5)ガザ地区のパレスチナ人に対するジェノサイド条約第2条および第3条の範囲内の行為の申し立てに関する証拠の破壊を防止し、その保全を確保するための効果的な措置を講じること、(6)今回の命令から1カ月以内に、命令に基づき取られた全ての措置について、ICJに報告書を提出することを命じた。なお、ICJは、暫定措置は南アが要求した措置と同一である必要はないと判断し、軍事作戦の即時停止の暫定措置は命じなかった。

南ア大統領府外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、シリル・ラマポーザ大統領は「南アフリカがガザ紛争の当事者ではないにもかかわらず、裁判所(ICJ)は南アフリカがイスラエルを法廷に提訴する権利を肯定した」「ICJはイスラエルに対して、ガザにおけるさらなる集団殺害行為を防止するために、一連の暫定措置を直ちに実施すべきとの判断を下した」とICJの決定を歓迎した。

パレスチナ自治政府(PA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、リヤド・アル・マリキ外務・移民庁長官(Minister of Foreign Affairs and Expatriates of Palestine)は「われわれはイスラエルを含む全ての国に対し、裁判所(ICJ)が命じた全ての暫定措置が確実に実施されるよう求める。これは拘束力のある法的義務だ」と述べた。

イスラエル首相府外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「イスラエルに対するジェノサイドの罪は虚偽であるだけでなく言語道断であり、どこの国でも良識ある人々はそれを拒否すべきだ」と指摘しつつ、「われわれの戦闘はハマスのテロリストに対するものであり、パレスチナ市民に対するものではない」とし、「われわれは人道支援を促進し、ハマスが民間人を人間の盾として使っていても、民間人を危険から遠ざけるために最大限の努力を続ける」と述べた。

イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。

(中溝丘)

(イスラエル、パレスチナ、南アフリカ共和国、オランダ)

ビジネス短信 b49696fa2f9463bb