英政府、CCUSビジョン策定、2035年までに競争力ある市場創出を目指す

(英国)

ロンドン発

2023年12月21日

英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省は12月20日、英国での二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)の拡大と、競争市場の確立に向けた「CCUSビジョンPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」の策定を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

CCUSビジョンでは、英国が2035年までに、政府が支援する初期プロジェクトから競争力のある市場へと移行する方法を示す。具体的な方策は次のとおり。

  • 英国のCCUSセクターの構築を加速させるため、CCUSプロジェクトについて、早期の実現性の高いものを政府が選定する現在の形式から、競争的割り当てプロセスに2027年から移行
  • パイプラインでCO2を輸送できないプロジェクトが2025年以降、船舶、道路、鉄道など他の輸送手段を使って市場に参入できる条件を整備
  • 産業界が主導する作業部会を設置し、CO2回収コストを削減する解決策を特定・採用

英国政府は、政府による支援対象となるCCUS産業クラスターについて、第1弾として、2021年10月にイングランド北東部ティーズサイドのイースト・コースト・クラスターと、ウェールズ北部、イングランド西部のハイネットを選定(2022年11月29日付調査レポート2023年3月7日付調査レポート参照)。2023年7月には第2弾として、スコットランド北東部のエイコーン・プロジェクトと、イングランド北東部ハンバーのバイキング・プロジェクトの選定を発表している(2023年8月4日記事参照)。このうち、ハイネットに関しては同じく12月20日、同産業クラスターの拡大に向け、CCUSネットワークへの接続を希望する企業の募集プロセスが開始されたことが発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。

政府は、島国ならではの地質や技術、インフラにより、同国がCCUSに関して他国と比較して戦略的優位性を持つとしている。北海沖には最大780億トンのCO2を貯蔵するのに十分なスペースがあると分析する。

英国は2023年度予算の発表時に、CCUSの早期展開に向けて最大200億ポンド(約3兆6,200億円、1ポンド=約181円)を投じることを打ち出した(2023年3月16日記事参照)。これにより、政府は2030年までに年間2,000万~3,000万トンのCO2を貯蔵することを目指している。

また、政府は合わせて、温室効果ガス除去(Greenhouse Gas Removal: GGR)と発電目的のBECCS(バイオマス燃料の使用時に排出されたCO2を回収して地中に貯留する技術)のビジネスモデルに関する政府の最新の方針を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。GGR、発電目的BECCSともに、差額決済契約(Contracts for Difference:CfD、注)による支援を検討している。

(注)発電事業者の再生可能エネルギーへの投資リスクを減らすため、運転開始から15年間、対象となる電源の固定価格(ストライクプライス)と市場価格の間の変動する差額を政府が補填(ほてん)する制度。事業者はオークションで、技術ごとに自社の固定価格と設備容量を提示し競う(2021年5月20日付調査レポートの21ページ以降参照)。

(菅野真)

(英国)

ビジネス短信 e8bc7792185ff236