米ボストンで洋上風力分野の労働力開発や生物多様性保護を議論するイベント開催
(米国)
ニューヨーク発
2023年12月07日
米国北東部のマサチューセッツ州ボストンを拠点に海洋関連技術(注1)を有するスタートアップを支援するシーアヘッド(SeaAhead)などは11月29日、同市内で洋上風力に関するイベント「イノベーション・イン・オフショア・ウィンド」を開催した。
洋上風力発電に関して、バイデン米政権は、2030年までに洋上風力発電容量を30ギガワット(GW)まで拡大する目標(2021年3月31日記事参照)と、浮体式洋上風力発電を2035年までに15GWまで拡大するとの目標(2022年9月21日記事参照)を掲げている。
今回で4回目を迎えた同イベントでは、米国で洋上風力発電を推進するための課題として、労働力開発と生物多様性保護の2つが取り上げられ、パネルディスカッションや関連スタートアップのピッチなどが行われた(注2)。労働力開発については、洋上風力発電をはじめとする海洋関連の経済圏(ブルーエコノミー)をさらに発展させるために、地域とのコミュニケーションの担い手から専門的な技術者まで多様な人材が必要となることが指摘された。同州のエネルギー分野の公的支援機関マサチューセッツ・クリーンエナジー・センター(MassCEC)は、洋上風力分野の専門訓練プログラムや州内学生の同分野への従事を推進するプログラムなどへ助成してきた事例を紹介した。また、生物多様性保護に関連するテクノロジーとしては、夜間の暗い海中でもリアルタイムでモニタリングを行い、それにプロジェクト事業者や漁業関係者、地域コミュニティー関係者が常にアクセスできる仕組みや、海底に固定される基礎や浮体構造物などに用いる新素材などに関心が高まっていることなどが紹介された。
米国の洋上風力プロジェクトについては、昨今のコスト高による影響が懸念されているが(2023年9月4日記事参照)、マサチューセッツ州は10月にロードアイランド州、コネチカット州との間で洋上風力発電の調達に関する連携を締結し、大規模なプロジェクト開発を通じたコスト削減をともに追求していくなどとしている。今回のイベントでは、マサチューセッツ州のモーラ・ヒーリー知事(民主党)の下で経済開発を担当するイボンヌ・ハオ長官とエネルギー・環境問題を担当するレベッカ・テッパー長官も登壇し、同州が洋上風力分野の発展を牽引するには産官学の州内関係者の一層の連携・団結が重要だと呼びかけた。
米国北東部では、ロードアイランド州を中心とするオーシャンテックハブが米国商務省のテックハブ構想の1つとして選定されており(2023年10月25日記事参照)、同地域での洋上風力を含む海洋関連テクノロジーに関する今後の取り組みの行方が注目される。
(注1)海中での人工知能(AI)や機械学習対応ロボット、センサー開発、海洋データの活用など、海洋に関する技術をブルーテック、オーシャンテックなどと呼ぶ。
(注2)ピッチに登壇したスタートアップは、Ambri、atdepth MRV、ECOncrete、ShipIn Systems、Tagupの5社。
(平本諒太)
(米国)
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