経済繁栄のための米州パートナーシップ首脳級会合開催、金融や貿易分野で協力具体化へ

(米国、バルバドス、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、メキシコ、パナマ、ペルー、ウルグアイ)

ニューヨーク発

2023年11月09日

米国のジョー・バイデン大統領は11月3日、首都ワシントンで、経済繁栄のための米州パートナーシップ(APEP)に参加する11カ国との首脳級会合を主催した。2023年1月にAPEPが正式に発足してから首脳級会合の開催は初めて(2023年1月30日記事参照)。

APEPは、バイデン大統領が2022年6月に主催した米州首脳会議で提唱した経済協力の枠組みだ(2022年6月10日記事参照)。米国のほか、バルバドス、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、メキシコ、パナマ、ペルー、ウルグアイが参加している。

ホワイトハウスが発表した首脳級会合に関するファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、各国首脳は、包摂的な成長を促進し、重要なサプライチェーンを強靭(きょうじん)化する計画を表明した。首脳級会合後に発表した共同宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、「世界で最も競争力があり、包摂的で、持続可能かつ強靭な地域のバリューサプライチェーン」を構築すると記し、まずクリーンエネルギー、医療用品、半導体の3分野に焦点を当てると提起した。

各国首脳は関係閣僚に対し、外交、金融、貿易の3分野で具体的な取り組みを策定し、実施するよう指示した。共同宣言によると、貿易分野では、地域の持続可能な開発と強靭なサプライチェーン構築の支援や、予測可能で透明性のある規制環境の向上、経済統合に対する障壁の撤廃を目指す。各国首脳は貿易担当閣僚に対し、WTO貿易円滑化協定の実施や税関のデジタル化を迅速に推進するよう求める。外交分野では、デジタル経済での労働力開発や腐敗防止など、金融分野では、国際開発金融機関との協力による持続可能なインフラ投資などにそれぞれ取り組む。

APEP参加国はこれら3つの分野に基づいて閣僚会合を毎年実施し、首脳会合も2年に1回開催する。次回の首脳会合は2025年にコスタリカが主催する予定だ。また、参加国は米州地域の国がAPEPに新規加入するためのプロセスを策定する計画だ。

バイデン大統領はAPEPの取り組みを支えるための米国の取り組みも発表した。米国国際開発金融公社(DFC)と米州開発銀行(IDB)が共同投資プラットフォームを設立し、港湾やクリーンエネルギー網、デジタルインフラの構築を支援する。米国国際開発庁(USAID)がカナダやウルグアイと連携し、米州地域の起業家向けに複数年のアクセラレータープログラムを実施する。米国やカナダなど4カ国がIDBと協力し、難民の影響を受ける国にインフラや社会サービス提供の資金として8,900万ドルを新規に拠出する。

これらに加え、国務省が半導体産業の労働力開発の取り組みを行うほか、IDBに気候変動対策を促す金融のための新たな基金を設置する。半導体に関しては、産官学と労組の関係者を集めたシンポジウムを複数回開催し、地域の労働力開発ニーズの特定や、教育プログラムの策定を行う。初回は2024年2月にコスタリカで開催予定だ。国務省の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、シンポジウムの開催には、2022年8月に成立したCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づいて国務省に予算が手当てされた「国際技術安全保障・イノベーション(ITSI)基金」を用いる。

(甲斐野裕之)

(米国、バルバドス、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、メキシコ、パナマ、ペルー、ウルグアイ)

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