バイデン米大統領、先端技術流出阻止に必要な措置の継続を強調、米中首脳会談で
(米国、中国、台湾)
調査部米州課
2023年11月16日
米国のジョー・バイデン大統領は11月15日、APEC会議が行われる米国サンフランシスコ近郊で、中国の習近平国家主席と首脳会談を行った。両首脳による対面会談は、およそ1年前の2022年11月(2022年11月15日記事参照)以来2回目。
米中関係は、2023年2月に中国の気球が米国領空に侵入し撃墜されたことによって一時、緊張が高まっていたが、その後のアントニー・ブリンケン国務長官、ジーナ・レモンド商務長官、ジャネット・イエレン財務長官らの訪中、王毅・共産党中央政治局委員兼外交部長(外相)の訪米など、閣僚級の会談などを通じて、緊張緩和と首脳会談の実現に向けた調整が進められてきた。
今回の首脳会談では、共同声明などは発表されていないものの、ホワイトハウスが同日公表した会談要旨によると、バイデン大統領は習国家主席に対して、米中両国は競争関係にあり、米国は今後も常に自国の利益や価値観および同盟国やパートナーのために取り組み続けるとした。同時に、両国は責任を持って競争関係を管理し、競争が対立や新冷戦に陥ることのないようにしなければならないとも強調した。
また、バイデン大統領は習国家主席に対して、インド太平洋地域における米国のコミットメントや、ウクライナおよびイスラエルに対する米国の支持を伝えたほか、新疆ウイグル自治区、チベット、香港などにおける人権問題について懸念を伝えたとしている。さらに、台湾については、米国の「一つの中国政策」に変更はないとしつつ、いずれかによる一方的な現状変更への反対を訴え、台湾海峡および周辺地域での中国の軍事活動に自制を求めた。このほか、中国の不公正な貿易慣行や非市場経済、米国企業に対する制裁措置などに懸念を示した上で、貿易・投資を過度に制限することなく米国の先端技術が流出することを防ぐため、米国は必要な措置を取り続けると強調した。なお、米国は2022年10月以降、中国向け半導体関連の輸出管理規則を厳格化しているほか(2022年10月11日記事、2023年10月18日記事参照)、2023年8月に半導体など分野で中国への対外投資を制限するプログラムを新設している(2023年8月14日記事参照)。
このほか、両首脳は、フェンタニルなど合成麻薬に対する2国間協力の再開およびワーキンググループの設立、軍事対話の再開、人工知能(AI)の安全性確保、気候変動対策への協力など、共通の各関心分野での連携を確認したとしているほか、オープンなコミュニケーションラインを維持することの重要性を確認し、ハイレベルの外交を継続することで合意したとしている。
なお、ホワイトハウスが同日公表した会談前の両首脳発言要旨によると、習国家主席はバイデン大統領に対し、新型コロナウイルスのパンデミックは収束しても、依然として世界経済の回復は鈍く、サプライチェーンは途絶のリスクにさらされているほか、保護主義が台頭しているとして、これらは重大な問題だと提起した。また、米中両国はともに発展することが可能で、互いに背を向けるという選択肢はないとしつつ、一方が他方を変えようとすることは非現実的で、対立や衝突は双方にとって耐え難い結果をもたらすだろうと述べた。
(葛西泰介)
(米国、中国、台湾)
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