減少傾向の郷里送金、外貨準備高は210億ドルに
(バングラデシュ)
ダッカ発
2023年10月11日
バングラデシュ中央銀行は、9月単月の郷里送金額は前年同月比12.7%減の13億4,366万ドルと発表した(添付資料表参照)。当地では2023年7月以降、郷里送金は減少傾向にある(2023年9月11日記事参照)一方で、海外出稼ぎ労働者の派遣者数は7月、8月いずれも前月比で10%程度の増加傾向にあり、2023年の総派遣者数は8月末時点ですでに88万2,101人と、暦年で過去最大の派遣者数を記録した2022年(113万5,873人)の約8割に達している。
郷里送金減少の背景として、バングラデシュ外国為替取引業協会(Bangladesh Foreign Exchange Dealers Association:BAFEDA)および銀行業協会(Association of Bankers Bangladesh:ABBD)は2022年9月以降、国内金融市場におけるドル高を抑制するため、取引に応じた対ドル為替レートの上限として、郷里送金・銀行間取引(インターバンクレート)・輸入決済には1ドル=110.5タカ、輸出決済には109.5タカを業界の取り決めとして定めていることがある。国内の為替レートの上限規制および市中に出回るドル不足も相まり、ダッカ市内の両替所では、タカからドルに換金ができない状況が続いている。
また、かねて統計に反映されない違法な送金(注)が横行している。同取引は実勢レートに基づいており、規制された為替レートとの差が大きいため、正規ルートである銀行経由での海外送金が進まないと報じられている(「フィナンシャル・エキスプレス」紙10月1日)。地場銀行大手ユナイテッド・コマーシャル・バンク(UCB)でマネーロンダリング対策部門の責任者を務めるコンドカル・ムスタク・アーメッド氏は「違法送金を海外側で扱う業者は出稼ぎ労働者の身近におり、レートが良く手続きも容易であることなどから、資金が流れてしまうという構造的な課題がある」と分析する(10月5日)。
また、郷里送金と同様に減少傾向の外貨準備高(IMF基準のグロス値、2023年9月4日記事参照)は210億5,497万ドル(10月5日発表)で、IMF融資にひもづく同ネット値(Net International Reserves:NIR)の目標を下回る中、現地報道によると、IMFは現地に視察団を派遣し、各種目標に係る政府の取り組みなどについて、中銀関係者との議論が行われているという(「フィナンシャル・エキスプレス」紙10月5日)。
(注)「カーブ・マーケット(Kerb Market)」や「地下送金」、ベンガル語では「フンディ(Hundi)」と呼ばれる。
(山田和則)
(バングラデシュ)
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