米商務省、中国の太陽光発電製品の迂回輸出認定を最終決定

(米国、中国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

調査部米州課

2023年08月24日

米国商務省は8月18日、中国系太陽光発電製品(注1)メーカー5社について、中国の太陽光発電製品に課しているアンチダンピング税(AD)および補助金相殺関税(CVD)を回避するため、東南アジア4カ国を経由して米国に迂回(うかい)輸出を行っていると最終決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

AD・CVDは貿易救済措置の一種だ。ADは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出が輸入国の国内産業に被害を与えている場合に、その価格差を相殺するために賦課できる。CVDは、政府補助金を受けて生産などがなされた貨物の輸出が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、当該補助金の効果を相殺する目的で賦課される。中国の太陽光発電製品に対しては、オバマ政権下の2012年からAD・CVDが賦課されている(注2)。

商務省は2022年4月から、中国系の太陽光発電製品メーカー8社がAD・CVDを回避するために、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムの東南アジア4カ国いずれかで軽微な加工を行った後に米国に最終製品を迂回して輸出しているとの懸念について調査していた。2022年12月には、うち4社に対して迂回認定の予備判断外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが示された。今回の最終決定では予備判断から1社増え、8社のうち5社を迂回認定した(3社に対しては、迂回輸出ではないと判断された)。また、商務省は今回調査対象となっていない企業についても迂回輸出を行っていることが判明したとしているほか、4カ国を太陽光発電製品の迂回輸出が行われている国として認定した。商務省は今回の決定について、「米国の産業、労働者、企業を弱体化させる中国の貿易歪曲(わいきょく)行為に対して責任を追及するという商務省の姿勢を強調するものだ」としている。

今回の決定を受け、4カ国からの太陽光発電製品の輸入に対しては、迂回輸出していないと判断された3社に加え、AD・CVD措置を避けていないと証明する企業によって生産されたものを除いて、AD・CVDが賦課される。一方で、ジョー・バイデン大統領は2022年6月に、太陽光発電製品の供給不足に対応するため、米国の太陽光発電製品輸入の多くを占める4カ国からの太陽光発電製品の輸入に対して2年間の関税免除措置を講じていることから(2022年6月7日記事参照)、商務省は今回最終決定後も2024年6月まではAD・CVDは賦課しないとしている。

米国太陽エネルギー産業協会(SEIA)のアビゲイル・ホッパー会長兼最高経営責任者(CEO)は同日声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、「商務省は政権のクリーンエネルギー目標と歩調を合わせておらず、この決定には根本的に同意できない」「太陽電池とモジュールの国内供給が十分でないことを考えると、商務省の決定は現在の供給不足問題を長引かせるだけだ」と述べ、関税免除措置が期限を迎えたのち米国への太陽光発電製品の供給が制限されかねないとして反発している(注3)。

米国商務省国際貿易局(ITA)は2021年9月にAD・CVDを回避する迂回輸出の防止に焦点を当てた規則の改正を行ったほか、2023年5月にAD・CVDの税額算定などに関する規則変更案を公表するなど(2023年5月16日記事参照)、近年その執行を強化している。

(注1)AD・CVD対象品目は、関税分類番号(HTSコード)で次のとおり。8501.31.80.00、8501.61.00.00、8507.20.80、8541.40.60.15、8541.40.60.20、8541.40.60.25、8541.40.60.30、8541.40.60.35、8541.40.60.45。

(注2)AD・CVDは原則5年間を上限とするが、米国では見直しを繰り返して継続する例がしばしば散見される。中国製太陽光発電製品に対する当該措置も現在も有効になっている。

(注3)米国の太陽光発電製品の供給不足と中国製品に対する輸入規制については、2023年4月3日付地域・分析レポート参照

(葛西泰介)

(米国、中国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

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