オーストラリア・ドイツ首脳会談、貿易、クリーンエネルギー、防衛など議論

(オーストラリア、ドイツ)

シドニー発

2023年07月25日

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は7月10日、ドイツのベルリンで同国のオラフ・ショルツ首相と会談を行った。7月11日から2日間、リトアニアで行われたNATO首脳会談にインド太平洋地域パートナー国(オーストラリア、日本、韓国、ニュージーランド)として出席するため、欧州を訪問していた。

両首脳は会談で貿易・投資や、気候変動対策・クリーンエネルギー、防衛分野について議論を行った。貿易・投資に関しては、現在交渉中のオーストラリア・EU自由貿易協定(FTA)が両国にもたらす経済成長や投資機会について議論した。共同記者会見でアルバニージー首相は、オーストラリア産農産物の新たな市場アクセスの確保がFTA交渉妥結のポイントと強調した。

クリーンエネルギーに関しては、重要鉱物や水素のサプライチェーン構築・強化に向けた2国間の取り組みについて議論が行われた。水素に関しては、既に両国間で幾つかの協力案件が進んでいる(注1)が、アルバニージー首相は会見で、オーストラリアからドイツにグリーン水素を輸出することは可能で、両国企業の取り組みも進んでいると述べた。また、重要鉱物サプライチェーンの基礎を築くために両国で協力していると述べた。実際に2023年4月に両国政府は重要鉱物の共同研究の実施を発表し、重要鉱物のクリーンエネルギー技術への活用や、抽出・精製・リサイクル技術の拡大について評価する予定としている。

また、オーストラリアはドイツが主導する「気候クラブ」(注2)のメンバーになると発表した。「オーストラリア・ファイナンシャル・レビュー」紙(電子版2023年7月11日)は参加の背景について、オーストラリア政府はメンバーの立場を生かして国益や自国の優先事項に沿ったプロジェクトや枠組みを主導していくことを目指していると報じた。

防衛関係では、ドイツ防衛機器大手ラインメタルの子会社ラインメタル・ディフェンス・オーストリア社のボクサー装輪装甲車を2025年からドイツに100台以上供給する合意書の調印に立ち会った。防衛機器分野の国内売り上げとしてはこれまでで最大規模となり、10億オーストラリア・ドル(約950億円、豪ドル、1豪ドル=約95円)を超えると発表した。

(注1)ドイツとオーストラリアは、両国間のグリーン水素サプライチェーン構築可能性について調査した「グリーン水素の供給網に関する実現可能性調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(HySupply)」(2023年1月)や、2021年6月に両国政府が署名した「ドイツ・オーストラリア水素協定」の下で実施された水素関連プロジェクト支援(HyGATE、2022年3月17日記事参照)のほか、民間レベルのプロジェクトもある。水素に関するオーストラリアの国際連携については、ジェトロの調査レポート「オーストラリアにおける水素産業と脱炭素化関連分野の動向に関する調査(2023年6月)」を参照。

(注2)2022年6月のG7サミットで議長国ドイツが提唱した国際枠組みで、パリ協定の迅速かつ効果的な実施を目的としている(2022年6月30日記事参照)。G7メンバー国のほか、現地報道によると、EU、ルクセンブルグ、オランダ、アルゼンチン、チリ、コロンビア、インドネシアが参加している。

(青島春枝)

(オーストラリア、ドイツ)

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