第8次国家電力基本計画を公布、当初予定の2年遅れ

(ベトナム)

ハノイ発

2023年05月30日

ベトナム政府は5月15日、2021年~2030年の電力開発指針「第8次国家電力開発基本計画(PDP8)」を承認した。同日付の首相決定500/QD-TTgで公布、即日発効した。脱炭素化・エネルギー転換を求める国際世論の高まりと、ロシア・ウクライナ問題を発端としたエネルギー価格高騰などの影響で、計画の修正や見直しが相次いだ結果、PDP8は2年遅れでの公布となった。

PDP8では、2021年から2030年の間の実質GDP成長率を年平均7%と予測し、経済成長に必要な電力を供給できるよう、同期間の計画を設定している。その上で、2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量の実質ゼロ化に向けた長期的なビジョンも示している。同時に、PDP8の付属文書では、2030年までの大型発電所、送電網の開発予定案件なども一覧化している。

2030年の発電設備容量の目標は15万489メガワット(MW)と定めた(添付資料表参照)。2022年末時点の設備容量は8万704MWのため(2023年4月19日記事参照)、残り8年で毎年9,000MW近い設備容量の増設が求められる計算だ。特に液化天然ガス(LNG)や陸上風力発電の開発に注力し、バイオマスや廃熱利用などの技術も導入していく。また、自家消費型太陽光発電を推進し、2030年にオフィスビル、住宅の50%に屋根置き太陽光発電の導入を目指す方針も盛り込んだ。その後、2050年に向けては、洋上風力発電や蓄電池の開発、石炭火力発電のバイオマス混焼やアンモニア専焼への完全移行などを促していくという。

2030年の発電量(輸入を含む)の目標は約5,670億キロワット時(kWh)とし、このうち再生可能エネルギー(再エネ)が占める比率を30.9~39.2%にすると定めた。さらに、「公正なエネルギー移行パートナーシップ」(JETP、注)の政治宣言がパートナー国によって履行されれば、その比率は47%になるとしている。

計画実現に向けた道筋は不透明

PDP8では、2050年のビジョンとして、設備容量は49万529~57万3,129MWを目指す方針を示した。2030年の目標の3倍超となる数値で、増設分の大半を再エネで賄い、電源構成の再エネ比率を6割以上に引き上げる計画だ。総発電量は1兆2,243億~1兆3,787億kWhを想定する。

これらの電源と送電網開発に必要な投資額は、2030年までに1,347億ドル(うち送電網開発に149億ドル)、2050年までにさらに3,992億~5,231億ドル(うち送電網開発に348億~386億ドル)と試算している。

計画実現の方策として、国内外の民間投資を呼び込むための投資形態の多様化、関連政策の研究や法令整備を推進する方針などを記載しており、外国企業の一層の参画を見込むものと考えられる。しかし、その道筋は不透明で、今後の具体化に向けた議論の動向を注視する必要がある。

(注)パートナー国の化石燃料からの移行をドナー国が支援する目的で、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で立ち上げたパートナーシップ。ベトナムのJETPは2022年12月に立ち上げられた(2022年12月26日記事参照)。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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