米USTR、米台貿易イニシアチブの第1段階合意を発表

(米国、台湾)

米州課

2023年05月22日

米国通商代表部(USTR)は5月18日、「21世紀の貿易に関する米国・台湾イニシアチブ」の第1段階の合意を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同イニシアチブは2022年6月に立ち上げが発表されたばかりで(2022年6月2日記事参照)、部分的だが1年足らずでの合意となった(注1)。本イニシアチブは、インド太平洋経済枠組み(IPEF)と交渉項目が類似していることからも、その交渉内容が注目されていた(注2)。

今回合意が発表されたのは、税関手続きおよび貿易円滑化、良き規制慣行、サービスの国内規制、反腐敗、中小企業の5分野となる。税関手続きおよび貿易円滑化では、主に手続きのデジタル化が定められた。USTRの発表によれば、通関に関連する書類は電子的に提出できるようになり、税関は関税、税金、手数料の電子上の払いに応じられるようになる。また手続きの迅速化により、船舶やトラックの待機時間が減るため、温室効果ガス(GHG)の排出量削減に寄与するほか、生鮮品の腐敗などを減らすことができるとしている。反腐敗では、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)での腐敗防止枠組みに基づき、マネーロンダリングや内部告発者に対する保護強化などが取り上げられている。USTRは、これらの合意によって、米国企業がより多くの製品を台湾市場に提供できるようになるとともに、より透明性が高く合理的な規制手続きによって、特に中小企業による投資や経済機会が促進されるとしている。キャサリン・タイUSTR代表は「この成果は、米台経済関係の強化に向けた重要な一歩だ」と述べている。

他方、今回の合意には、交渉項目として掲げられている農業、労働者中心の貿易促進、環境と気候問題対策の支援、非市場的政策・慣行などは含まれていない。特に、労働や環境に関する項目は、バイデン政権の通商政策上の主要な交渉項目に挙げられており、これら重要課題は今後の交渉に持ち越された。

今回合意された5分野は、今後数週間のうちに、米国在台湾協会(AIT)と駐米国台北経済文化代表処(TECRO)によって署名され、その後発効する見通しだ。

IPEFの閣僚級会合を5月27日に控える中、本イニシアチブとIPEFで類似している分野の協定文に差異がみられるのかにも、今後、注目が集まる。

(注1)第1回目の協議は2022年6月27日(2022年6月28日記事参照)に、2回目は2023年1月14~17日に行われた(2023年1月18日記事参照)。

(注2)IPEFへの台湾の参加を希望する声が米国議会にあったが、中国からの反発を意識して、IPEFは台湾を含まないかたちで発足した(2022年5月24日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国、台湾)

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