EUの2022年の新車登録台数は前年比4.6%減、直近30年で最低に

(EU)

ブリュッセル発

2023年01月24日

欧州自動車工業会(ACEA)は1月18日、EU26カ国(マルタを除く、注1)の2022年の乗用車の新規登録台数(暫定値)は前年比4.6%減の925万5,930台だったと発表した(ACEAのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、添付資料表1参照、月別の新車登録台数・増減率は添付資料図参照)。上半期の部品不足が大きく響き、通年の登録台数としては1993年以降で最も少ない記録的な低水準となった。登録台数は26カ国中17カ国で前年を下回り、ACEAが欧州4大市場とするドイツ、フランス、イタリア、スペインのうち、ドイツ以外の3カ国では前年比約5~10%程度の減となった。

主要メーカー別の市場シェア上位は2021年と同様、フォルクスワーゲン(VW)グループ(25.1%)、ステランティス(19.7%)、ルノーグループ(10.6%)、現代自動車グループ(9.2%)の順だった。これに続いたのがトヨタ自動車で、販売台数は前年比7.7%増と、主要メーカーで最大の伸びとなり、BMWに代わってEU市場シェア第5位(7.2%)となった(添付資料表2参照)。トヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME)によると、ハイブリッド車を含む電動車の販売が前年比14%増と好調で、同社の定義に基づく欧州地域(トルコやロシアなども含む)でのメーカー別販売台数では、2021年に続き第2位となった(TMEのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

2023年も新たな環境規制案やメーカーのゼロセミッション化への対応に注目

2023年の欧州自動車市場も、EUの新たな環境規制案に関する発表や審議、自動車業界のゼロエミッション車の普及加速への対応に注目すべき1年となりそうだ。EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が2022年10月に暫定合意に達し(2022年10月31日記事参照)、「2035年までの全新車のゼロエミッション化」を目指すこととなった乗用車・小型商用車(バン)に続き、2月には大型車の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する現行規則の改正案が発表される予定だ(注2)。

また、欧州委は2022年11月、次期排ガス規制案「Euro7(ユーロ7)」を発表した(2022年11月11日記事参照)。ACEAは1月13日、Euro7が施行された場合、窒素酸化物(NOx)の排出量は2030年までに乗用車で4%、バン・大型トラックで2%程度、現行規制を継続した場合と比較して、追加的に削減されるにすぎず、バスについてはほぼ変化がないという独自の推計を示し、Euro7にはNOxの排出削減効果がほとんどないと主張した(ACEAのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。さらに、EUが掲げる2050年までの気候中立達成という目標に向けて、各メーカーはゼロエミッション車に傾注すべきところ、Euro7に対応するため内燃機関搭載車に再び多大な投資をする必要が迫られる可能性があり、脱炭素への取り組みを減速させるものだと批判した。

ACEAの商用車理事会のマーティン・ルンドステッド会長〔ボルボ社長兼最高経営責任者(CEO)〕も1月19日に公開された動画で、内燃機関搭載車に再び投資するのは誤りで、欧州の産業競争力低下や雇用への影響に強い懸念を示し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、欧州が目指すべきものは「競争力強化、雇用の安定、適切な環境規制」の3つだと述べた。自動車業界の反発や懸念が高まる中、EU機関でのEuro7の審議の行方が注目される。

(注1)ACEAでは、マルタはデータ入手不可能として統計に含めていない。

(注2)調査レポート「欧州自動車市場におけるゼロエミッション化関連最新動向」(2022年12月)も参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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